歯科クリニックで受けることのできるオフィスホワイトニングやホームホワイトニングはもちろん、自宅で専用グッズを使ったホワイトニングでも必要な準備があります。それは、できる限り歯を健康な状態にしておくこと。

実際、クリニックでのホワイトニングを受ける条件や、自宅用ホワイトニングアイテムの注意事項には、『虫歯ではないこと』や『重度の歯周病がないこと』が提示されています。

今回は、歯を健康にするために必要なことの一つ、歯の再石灰化に必要な成分についてご紹介します。市販の歯磨き粉を使っている方にもおすすめのお手入れがありますので、ぜひ参考にしてみてください。

ホワイトニングに歯の再石灰化が必要な理由

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歯を化学反応で白くするホワイトニング剤は、使用濃度や歯の状態によっては知覚過敏などの後遺症を残してしまうことがあります。そのリスクを少しでも軽減するため、歯科クリニックではホワイトニングできる人の条件に虫歯や歯周病など歯と歯茎に異常がないことをあげています。

海外で市販されているホワイトニング剤でも、使用してはならない人の例として、虫歯など口内のトラブルをあげています。仮に守らず虫歯の人などがホワイトニング剤を塗った場合、知覚過敏や味覚障害など思わぬ事故につながりかねません。

そのため、歯科クリニックで行う場合も、自宅で行う場合も、ホワイトニングの前には歯科検診で口内の健康状態をチェックする必要があります。虫歯や歯周病、初期カリエスなど、歯や歯茎の一部が溶けたり欠けたりしている場合、まずはその部分を治療しましょう。

最近のホワイトニングはずいぶん安くなったから、と安心している人もいますが、虫歯があった場合はその治療費も加算して費用を見積もらなくてはなりません。もし歯の状態に無頓着なままでいたのなら、場合によっては虫歯の治療費で多額のお金がかかったり、治療だけで何日もかけることになります。

とくに結婚式など特定の日に合わせてホワイトニングを進めたいと思っている人は要注意。ホワイトニングの計画を立てる前に、定期的に歯科検診で口内の健康を把握、維持しておきましょう。

ホワイトニング時の後遺症、知覚過敏が起こりやすいのは虫歯や初期カリエスなど、歯の表面が酸によって溶かされたり欠けたりしている状態の人です。薬剤の使い方など場合によっては検診でひっかからない程度の小さな傷でも沁みることがあります。

少しでもリスクを減らすために、日ごろから歯の再石灰化を意識したケアを行うことをおすすめします。

歯の再石灰化は歯の溶けた部分などを修復することで、正しいケアを行えば虫歯一歩手前のう蝕(酸で溶けること)は改善することも可能です。

歯は毎日食事などで酸に晒され、溶けたり再石灰化を繰り返しています。ケアで再石灰化をさらに促進して、ホワイトニングできる状態になりましょう。

歯の再石灰化に必要な成分とは?

歯の再石灰化は、わずかながら毎日口内で起こっています。それは唾液に含まれる成分によるものです。そのため、ドライマウスなど唾液が十分に分泌されていない人の場合は、それだけで再石灰化がうまくいかず、虫歯リスクが高まっています。

唾液が十分にはたらくことのできない口内は、ドライマウス対策用の歯磨き粉を使ったり、食事ではよく噛むようにしたりと身近な生活習慣を意識すると改善できます。もちろん、分泌される唾液の質が良くなるよう、食べ物自体も栄養バランスを意識する必要があります。

歯を再石灰化させる唾液の成分は、カルシウムとリン酸です。このカルシウムとリン酸が化学反応を起こして骨や歯の主成分ハイドロキシアパタイトになります。

既に歯のう蝕が進んでいて、唾液に含まれるカルシウムやリン酸だけでは不十分だと思う人や、もっと効果的にケアをしたいという方は、オーラルケアで歯の再石灰化に必要な成分を口内に取り入れる方法もあります。

その際に必要なのは、カルシウムやリン酸と、フッ素です。オーラルケアで歯の再石灰化を促す際は、必要となる成分のカルシウムやリン酸だけではなく、フッ素を加えましょう。フッ素は、歯の再石灰化のサポートをしてくれる成分です。

フッ素が歯の再石灰化を効率よくしてくれる

虫歯予防として知られることの多いフッ素は、歯の再石灰化に必要不可欠な成分です。フッ素単独では酸で溶けてしまった歯の表面を再生できませんが、フッ素を再石灰化の成分に加えることで効率良く歯を修復できます。

歯の主成分といえば、歯磨き粉のCMでもおなじみのハイドロキシアパタイト(カルシウムとリン酸の化合物)ですが、歯を再石灰化してくれる一方で「酸に弱い」特徴を持っています。虫歯リスクを減らすには、歯の再石灰化を促すと同時に、この酸に対する対策を行わなくてはなりません。

そこで役立つのが、フッ素です。

フッ素がハイドロキシアパタイトと化学反応を起こすと、フルオロアパタイトという物質に変わります。フルオロアパタイトはハイドロキシアパタイトより酸に強いため、これによって歯の表面が再石灰化すると虫歯になりにくい歯となります。

「フッ素が虫歯予防になる」とされるのは、虫歯菌の活動を抑える力に加えて、この特徴があるためです。カルシウムとリン酸でできるハイドロキシアパタイトとフッ素が十分にあれば、ホワイトニングができる健康な歯を形成できます。

フッ素は市販の歯磨き粉にも含まれていますが、濃度が薄く、歯磨き後に口をゆすいでしまうため、それほど効果が期待できません。その事実を懸念して、歯磨き後は口をあまりゆすがない方が良いと言う歯科医もいるほどです。

フッ素を効果的に使う方法で歯の再石灰化を促そう

通常の歯磨きではあまり効果を期待できないフッ素を上手に活用することさえできれば、歯の再石灰化をより効率良くできます。そのための方法としておすすめなのは、以下の方法です。

  • 歯科医で3か月ごとにフッ素を塗布してもらう
  • フッ素入り洗口剤を歯磨き後に使う
  • 自宅でフッ素ジェルを塗る
  • フッ素濃度の濃い歯磨き粉を使う

歯科医で定期的に濃度の濃いフッ素を塗布してもらえます。歯科検診も兼ねることができるので、時間に余裕のある方は専門家に任せるのが一番良いでしょう。ただし、中にはフッ素を使いたがらない歯科医もいます。事前に口コミや医院のホームページなどで治療方針を確認してください。

近くにフッ素を塗布してくれる医院がない場合や、時間がなかなかとれない方は、自宅でケアをしましょう。フッ素入り洗口剤を歯磨き後に使用する方法は口内の隅々までフッ素を行き渡らせられる方法なので、虫歯予防の観点からもおすすめです。

問題は洗口剤の入手方法が、現在では歯科医院で購入するしかないという点。フッ素使用に否定的な医院や、そもそも窓口販売に力を入れていない医院では、購入することができません。入手方法に手こずれば、継続的なケアは難しくなります。

洗口剤が使えない場合は、歯に直接塗るフッ素ジェルを使用したり、フッ素濃度の高い歯磨き粉を使う方法もあります。フッ素濃度が高い歯磨き粉は海外製のものが中心となるため、通販で購入するか、やはり歯科医院で購入することとなります。

フッ素ジェルも歯科医院での取り扱いが中心となりますが、最近は通販でも手軽に購入できるようになりました。中でも歯科医ですすめられることのあるチェックアップジェルシリーズは種類も豊富なため、自分に合ったものを選んで使えます。

歯の再石灰化に必要な成分もフッ素と一緒に補給しよう

記事の最初で、歯の再石灰化には唾液中のカルシウムとリン酸が関係していることを説明しました。唾液を作るには十分な栄養も必要なため、食事にも注意したいところです。

自分の唾液が十分に分泌されている自信がない、不安だという方は、ドライマウスの症状がないか確認しましょう。心当たりがあれば、まずはドライマウスの改善が必要です。

それでも不安だと言うのであれば、いっそのことデンタルケアアイテムで補うのはいかがでしょうか。

たとえば、amazonや歯科医院で購入できる『MIペースト』は、唾液に含まれるカルシウムの約190倍、リン酸もおよそ20倍ほどの濃度で配合されています。ペーストと商品名にありますが、歯磨き粉ではなく歯の塗り薬として使用するものです。

使い方としては、フッ素入り歯磨き粉で歯を磨いた後か、歯磨き後にフッ素入り洗口剤で口をゆすいだ後、フッ素ジェルを歯に塗った後に歯に塗布します。ドライマウスが心配な方だけではなく、通常の人でも唾液の分泌が少なくなる就寝中のケアとしておすすめです。

歯を丈夫にするにはフッ素とカルシウム、リン酸の化学反応が不可欠です。そのためMIペーストを使用する際は、必ずフッ素も併用しましょう。フッ素と歯の再石灰化に必要な成分を口内に定期的に供給できれば、単純に歯を磨くよりも虫歯予防につながります。

虫歯はホワイトニングを断念させるどころか、ホワイトニングによる知覚過敏を引き起こします。歯の再石灰化を促すことで虫歯予防だけではなく、知覚過敏のリスクを減らせます。このメリットから、ホワイトニング直後の方のケアとしても活用できる組み合わせです。

ホワイトニング直後にもおすすめの歯の再石灰化を促すケア方法まとめ

虫歯菌によるう蝕も、ホワイトニング直後の知覚過敏も、歯のエナメル質が薄くなっている状態です。(エナメル質が薄いとホワイトニング後の知覚過敏が起こりやすいです)そのため、う蝕が気になる方も、ホワイトニング直後の方も、歯の再石灰化を意識したケアが必要です。

家庭でできる方法としては、通常の歯磨き後、フッ素を塗り、MIペーストでカルシウムとリン酸を補給するのがおすすめです。歯磨き粉も、できれば研磨剤が含まれていないもの、歯が傷付きにくいものを選びましょう。

フッ素はジェルタイプの『チェックアップジェル』などが歯科医さんも患者にすすめることの多い商品です。歯周病予防にも評判の『コンクール ジェルコートF』は歯磨き粉としても使えるため、歯磨き粉と別に専用品を用意する手間がなく、場所もとりません。

MIペースト』は外国人の味覚に合わせているため、日本人には少し甘さが気になる人もいます。ストロベリーやチョコレートの他、ミントのような爽やかな味もあるので、好みのものを選びましょう。

ちなみに、期間限定で抹茶味など珍しい味も出るので、色んな味を楽しめます。色々と試してみてください。歯の再石灰化がきちんと行われれば、ホワイトニング直後の知覚過敏のリスクもぐっと減ります。

ホワイトニングは色戻り(施術後にまた歯が黄ばむこと)を避けるには、継続的に行う必要があります。普段から歯の再石灰化に気を配っておくと、次回からのホワイトニングを億劫に感じることなく、できるようになるでしょう。

歯の再石灰化の他、ホワイトニングの時間としても就寝時間は注目されています。寝ている間にできるケアの練習としても、歯の再石灰化から始めてみてはいかがでしょうか。