前回の「中小企業のM&Aをする方法、手順について」の記事に引き続き、M&Aについて解説していきます。
今回はM&Aのより具体的な手順についてです。
M&Aを進めていく工程の中で特に重要な項目があります。
- どんな機関に相談あるいは依頼したらいいのか
- 株式譲渡価格の評価について
- 合意書締結後にやるべきこと
- コンサルタントの選定と費用
などです。これらについて詳しく述べていきます。
M&Aはどんな機関に相談あるいは依頼したらいいのか
相談窓口は通常地区の金融機関あるいは商工会議所です。大きな都市の金融機関や商工会議所では専門のスタッフが置かれているところもありますが、専門スタッフがいないところでは、民間コンサルタント会社が紹介されます。
民間のコンサルタント会社は国内に多くありますので、信頼できる会社を選ぶ際は相談するといいでしょう。
また、M&Aについての様々な相談ができる機関がありますので、M&Aという選択が本当にいいのかどうか、などは日本事業再生相談センターで相談してみて下さい。
株式譲渡価格の評価について
M&Aの最も重要なポイントです。譲渡価格を正確に評価しなければなりません。これは信頼できる専門家にお願いすることになります。
純資産をすべて精査して時価に換算しますが、譲渡価格となると、色々な評価方法があります。
一般的には純資産法と収益還元法があり中小企業庁が作成した「事業承継ガイドライン20問20答」に詳しく掲載されていますので参照ください。
総資産法は貸借対照表の純試算額に調整を加えたうえに、1株あたりの評価額(株価)を算出する方法です。
収益還元法は税引き後営業利益を資本コストで還元し、調製を加えた上で株価を算出する方法です。資本コストとは、企業が事業のために調達した資本全体(自己資本、他人資本)にかかる調達費用(支払い利息、配当金)と資本から生み出されることが期待される利益の合計です。
但し略式ですから、正確には専門家による評価が必要となります。
通常譲渡価格の評価は譲渡側の会社と譲り受け側の会社が双方別々に行います。
当然ここには両社間で乖離があります。この両社間の調整を行うことがコンサルタント会社の主な業務となります。企業価値の評価方法は他にも市場株価方式やDCF法などがあり、コンサルタント会社では依頼企業の特性を調査した上で評価方式を決めますが、複数の方式を併用する場合もあります。
特に譲渡側の会社に知的財産(技術、特許)などがある場合は、評価が非常に難しく、又高額になる場合もあります。これは総資産法だけでは評価ができません。
合意書締結後にやるべきこと
譲渡契約書の締結が終わった後に、現金と株式の交換が行われますが、それと同時に従業員の引き渡しと取引先の紹介があります。
長年労苦を共にしてきた、あるいは生活を共にしてきた従業員を譲り受け会社に引き渡しを行いますが、譲渡の経緯、目的、譲渡後の再雇用、待遇、就業規則、譲渡後の会社の将来などを明確に説明し了解を取らなくてはなりません。
少なくとも雇用条件は変わらないことが望ましいです。雇用条件が大きく異なりますと労働争議となって合意が破たんする危険性がありますから、慎重な対応が必要です。
また、取引先については、譲渡側、譲り受け会社が共に代表者が直接訪問して、業務が移転しても何ら業務遂行に変わりがないこと、新会社の将来計画などを詳しく説明して了解を取っておきましょう。仕入れ先についても同じです。
信用保証関係に変化はないことを文書で説明すると同時にできるだけ直接訪問して理解を求めましょう。
コンサルタントの選定と費用
譲渡側、譲り受け側会社の間に立って調査、立案、契約、などを行いますが、M&Aは成立までに比較的長い期間がかかります。また契約に至るまでに、担当者以外にも会計、法律、税務などの専門家が関わります。
こうした人達がチームを組んで対応するわけです。そのため、M&Aの仲介は高額な費用が必要となってきます。コンサルタントの業務範囲をどこまで行うかによっても費用が異なりますし、たくさんあるコンサルタント会社によっても価格形態は様々です。信頼できるコンサルタント会社の選定は金融機関又は商工会議所に依頼した方が賢明です。
参考として(ほんの1例です)、中小企業で売り上げ規模年商5億円くらいの会社の場合
⇒コンサルタント会社の費用は、着手金50万円、会社評価50万円、月額コンサルタント料5万円、基本合意報酬成功報酬の10%、成功報酬契約金の5%(最低報酬500万円)。成功報酬10%だけで着手金など他の費用は一切かからない会社もあります。
コンサルタント会社への費用は譲渡会社、譲り受け会社の両方共に必要です。費用の内容はそれぞれの会社の資産規模により報酬などが異なります。