夫婦が離婚してから、その後、夫が亡くなりました。ところが夫が亡くなって夫に多額の遺産があることが判明した。元妻は分け前をもらうことができるのでしょうか。よくある事例です。いわゆる相続の問題として、詳しく見ていきましょう。

夫婦が離婚した時、婚姻関係は解消されます。婚姻関係がある期間は、妻は配偶者となります。配偶者は法定相続人になりますが、離婚によって婚姻期間が解消すると配偶者ではなくなります。

従って、妻は夫の財産を相続する権利はなくなります。

分け前をもらうことはできない、というのが基本的なスタンスとなっています。

離婚後2年以内ならもらえる可能性がある

夫の財産分与の問題として考えることになりますが、基本は財産分与の請求権はなくなっていますが、民法では離婚後2年以内なら、離婚時に財産分与について特段の定めがなくても、財産分与の調停又は審判(家庭裁判所)の申し立てを行うことができます。(民法768条2項)

財産分与を亡くなった夫の相続人が応じてくれれば、話し合いによって遺産の1部を取得することができますが、応じてくれない場合は家庭裁判所に財産分与の調停又は審判の申立てを行う必要があります。

2年以内に申立てをしなければなりませんので注意が必要です。

つまり、家庭裁判所に財産分与の申立てを行うことは財産分与請求権の行使です。離婚する際に財産分与請求権あったにもかかわらず、それを行わない内に請求する相手が離婚後死亡してしまった。こうした時に離婚から2年以内なら財産分与請求権は消滅していないので、死亡した元夫の相続人に対して財産分与の請求することができます。

財産分与請求権とは、離婚した者の一方は相手方に対して財産の分与を請求することができる。(民法768条1項)というものです。

但し、離婚前に死亡してしまうと、死亡で婚姻が解消することになっても財産分与請求権はなくなります。

財産分与の請求権は離婚が成立することにより生じるからです。離婚してから2年以内の財産分与請求権が消滅していない限り、死亡した元配偶者の相続人に対して財産分与を家庭裁判所に調停または審判の申立てができます。必ず家庭裁判所に申し立てをしなければなりません。

一般的には相続を専門とする弁護士に依頼して対応してもらうことになります。

財産分与とは

財産分与とは、公平の観点から結婚している間に夫婦が協力して築いた財産を離婚した時に分け合うことです。ここでいう財産とは、土地、建物、定期預金、乗用車などで名義が夫婦の一方のみとなっていても分与の対象となります。

但し、自分が親から相続した財産など夫婦が協力して築いた財産にあたらないものは財産分与の対象となりません。分与の方法は基本的には夫婦間の話し合いで決めるのですが、まとまらない場合は家庭裁判所に調停または審判を依頼することになります。

こうした時には弁護士に最終決着までの手続を依頼します。

夫婦の間に子供がいる場合

これまでは夫婦の間に子供いない場合に限定して話を進めてきましたが、夫婦の間に子供いる場合は離婚しても子供は財産の相続ができます。正しくは相続財産を取得する権利が出てくるわけです。

元配偶者は婚姻の解消により他人に戻りますが、相続の権利はありません。しかし、元の夫妻の間に出生した子は父の子であり、母の子でもあります。夫婦としての関係は解消しても離婚によって親子の関係が解消されることはありません。従って元の夫婦の間に生まれた子は父母どちらの相続においても第一順位の相続人というわけです。

まとめ

財産分与請求権は2年が除斥期間、離婚してから2年経過した時の相続人に対して財産分与の請求することはできません。離婚時に財産分与の取り決めがされておれば、離婚時に夫の財産の1部を取得することが可能となります。

しかし裁判所への申し立ては専門的な知識が必要となりその手続きは個人では難しいため弁護士に依頼することになります。亡くなった夫の相続人に対して請求を行うことは可能ですし、これで話が決着するなら、もっとも良い方法ですが、ほとんど相続が終わってからの申し立てのため相続人と元妻の間でもめる場合がほとんどのようです。

結局、裁判所による審判を仰ぐことになり、それでないと終わらないようです。