平成27年の税制改正により、相続税の基礎控除の金額が下げられたため、相続税を納税しなければならない対象者が増加しました。

相続税の計算には、対象となる財産をすべて把握することが重要です。本来の相続財産ではないものの、相続税の対象となる、みなし相続財産とはどのようなものなのでしょうか。

みなし相続財産とは

みなし相続財産とは、 亡くなった日には、被相続人(亡くなった人)は財産として持っていなかったものの、被相続人が亡くなったことによって、相続人のもとに入ってきた財産をいい、相続税を計算する際の課税対象に含めます。

みなし相続財産としては、他にも具体例はありますが、よく出てくる具体例としては、①死亡保険金(生命保険金・損害保険金)、②死亡退職金・功労金・弔慰金、③生命保険契約に関する権利、④定期金に関する権利(個人年金など)、⑤遺言によって受けた利益(借金の免除など)などがあります。

みなし相続財産の代表例:死亡保険金

死亡保険金は、誰に保険を掛けて(被保険者)、誰が保険料を支払い(契約者)、誰が保険金を受け取るか(受取人)によって、相続税・贈与税・所得税などの対象となる税金の種類が異なります。

相続税の対象となるのは、被保険者と契約者がともに被相続人であり、保険金受取人が相続人またはそれ以外の他人である場合です。

相続人が受け取る死亡保険金は、残された家族の生活保障としての面もあるため、一定の非課税枠が設定されています。

非課税枠は、500万円×法定相続人の人数です。法定相続人の人数には、相続放棄した人も含み、相続人に養子がいる場合は、実子がいたら1人まで、いなかったら2人までを人数に含みます。

なお、非課税枠を使えるのは相続人のみで、それ以外の他人や相続放棄をした人は使えません。具体例を見ていきます。

父の生命保険を、母が1,500万円、長男が1,250万円、長女が1,250万円、相続放棄をした次男が500万円ずつ受け取った場合です。

まず、相続人が受け取った保険金の合計額は、1,500万円+1,250万円+1,250万円=4,000万円です。次に、非課税枠は、相続放棄をした次男も人数に含めるため、500万円×4人=2,000万円です。

そして、それぞれの相続人が受け取った保険金額の割合に応じて、非課税枠を計算し、課税対象の金額を計算します。

母の場合は、1,500万円-2,000万円×1,500万円/4,000万円=750万円が課税対象となります。長男と長女は同様に計算しますが、次男は相続放棄をしているため、非課税枠が使えず、500万円が課税対象となります。

また、民法上、死亡保険金は本来の相続財産ではなく、受取人の財産であり、遺産分割の対象とならないので、渡したい人へ渡したい金額を確実に渡すことができます。

みなし相続財産の代表例:死亡退職金・功労金・弔慰金

死亡退職金や功労金のうち、被相続人が亡くなったことにより支給されるもので、被相続人の死亡後3年以内に支給が確定したものについては、みなし相続財産として、相続税の課税対象になります。

ただし、死亡退職金等も残された家族の生活保障としての面があるため、非課税枠として、500万円×法定相続人の人数が設定されています。弔慰金については、社会通念を超える金額は、課税対象としています。

業務上の死亡の場合は、賞与以外の給与の3年分、そうでない場合は、賞与以外の給与の半年分が判断基準として使われています。

他にも様々なみなし相続財産がありますが、相続対策のためには、まず、みなし相続財産も含めた、相続税の対象となる全財産の把握が必要です。いざという時に残された家族を困らせないためにも、専門家に相談するなどして、早めに相続対策を取ることが重要です。

みなし相続財産の具体的な計算方法については「みなし相続財産」の相続税~非課税制度とその限度額及び計算方法~」のサイトが参考になります。

その他参考URL
国税庁ホームページ
・No.4105 相続税がかかる財産

・相続税法(平成28年度版)