法人クレジットカード導入は本当に経理課が楽になるか?について書きました。

法人クレジットカード導入のメリット

法人クレジットカード導入の目的は、経費の削減、経理課業務の効率化です。

これらは、経理課が楽になるツールとして今評判になっています。

本格的なキャッシュレス時代に突入して、その一角を担う重要なお金の、また取引の決済手段として主流となすシステムです。

このキャッシュレス時代の法人クレジットカードはその舞台裏で必ず会社の経理課の存在があります。

従来は現金で物を買いサービスを受ける。これが現金ではなく、クレジットカードや電子マネーで決済を完了させるシステムですが、連日のようにキャッシレス決済関連の情報が報道され、政府の施策としてキャッシュレス促進の動きが活発です。

しかし、本当に実質的にキャッシュレス時代が来るのでしょうか、先進国では決済手段として圧倒的にキャッシュレスとなっており、我が国は大きく遅れています。

世界中で最も現金決済比率が高い国ですが、そうなってきた理由が明確にあります。

町の商店街の八百屋さんや魚屋さんがここ数年でキャッシュレスに代わることは考えられません。

競馬場で場立ちの予想屋から予想を買う。キャッシュレスで商売できますか。お金に対する信頼が世界で最も高く、現金を持ち歩いても強盗に会う危険性は世界で最も安全です。

クレジットカード導入は本当に経理課が楽になるかを考える時にこうした、カードではなくキャッシュに固執する日本の文化ともいうべき現金主義がベースグランドとしてあることを前提として理解していないといけません。

経理課の経費節減、効率化につながる?仕訳が不要になる

法人クレジットカードを小規模事業所や中小企業が導入するケースが増えています。

カードは事業主や代表者及び役員が持つ場合が多いのですが、社員が経理課から貸与されて出張などの経費をカードで決済する場合もあります。いずれにしても業務上の経費をカードで決済することになり、現金は持ち歩きしません。

社員が経理課から貸与されたクレジットカードを持って出張に出かけた場合、旅費や経費の精算は基本的に必要ありません。

社員の財布から支払うことも、立て替え払いも発生しません。社員が帰ってから精算書を作って領収書を添付して上司の決裁を経て経理課に提出する。立替金があれば、経理課から現金で戻してもらう。

この時経理課は精算書から取引の全てを仕分けして仕訳帳に記載する。

クレジットカードであればこの仕訳という仕事は基本的にありません。

営業主体の事業所で社員が多ければこの伝票処理が膨大な量となり、仕分け業務も大変です。クレジットカードを導入すれば、これが大幅に節減され事務の効率化に大きく貢献することになります。

現金取引が混在すると・・・余計にややこしく

しかし、実際にはどうでしょうか。前項で述べましたようにいまなお、現金でしか取引しないお店が結構あります。

地方を回る営業マンは田舎のタクシー、昼食で立ち寄った食堂、業務で必要となった文房具のお店、現場の差し入れ用で買ったコーヒーの自販機、などクレジットカードは使えません。

自腹で購入するか、こうしたことを予想して仮払いをもらっておくか、ということになります。これらの会計処理はどうなるでしょう。

現金決済とカード決済が混在することになり、経理業務は楽になりますか?経理課のチェック業務は減りません。

仕分け業務も大きく減少することはないでしょう。社員の方も帰社してから出張旅費精算書の提出が必要となってきますから、社員の旅費精算業務は依然として残ります。

つまり、現状の会社の出張旅費取扱いであれば何も変わらないかもしれません。経理課の仕事が楽にならないのです。

さらにどこの会社でも就業規則の中に出張旅費規程を設けています。

組織の階層によって例えば新幹線の場合は役員や部長以上はグリーン車、課長以下一般社員は普通車、宿泊は1泊2食付きで部長以上は3万円まで、一般社員は1.5万円までなどの規定があります。

これらの規定をそのままにしてクレジットカードを導入すると経理課は大変です。

会計処理が複雑となりかえって経理課の負担が増加します。1泊2食付きで規定は1.5万円ですが、実際は1.2万円で済んだら差額3千円を返却しますか。逆に1.5万円の上限がありながら2万円の部屋しかなかった。

差額5千円を本人から徴収しますか。これらはカード導入前に旅費規程を変更して、不具合が発生しないようにしておくことが必要です。基本的にキャッシュレス時代に合わせた旅費規定に変更しなければなりません。

まとめ

法人クレジットカードの導入により、振り込み手数料が不要になったり、小口現金の用意が不要になったり、クレジット発行会社のポイントを貯めることにより経費の節減ができたり、またカードに付帯する各種のサービスが受けられたり、カードを持つことによるステータスを感じたり、企業内の信頼関係がより強く感じられたり、多くの利点もある法人クレジットカードです。

法人クレジットカー導入による不具合を順に取り除く作業が必ず必要ですが、クレジットカードを拒否する商店や飲食店は現実に非常に多く存在しますから、100%カードと言うわけにはいきません。

事務の効率化を進めながら例外的な事項も勘案した整備が必要です。

ベースとして現金取引があり、簡単には変わらない以上、カードと現金は両方持ち歩く必要があります。韓国のようにキャッシュレス決済が90%近いというようなわけにはいかないのです。

従って経理課の仕事が楽になるかといえば、劇的にはならない、というのが大方の意見です。つまりは日本の伝統的な文化は踏襲しつつ、キャッシュレス化による利便性を併せ持った会計システムを構築していくことになります。