個人事業主の税務調査はいつやってくるのか?
今回はその時期と対策についてご紹介いたします。
「税務行政の現状と課題」から見る税務調査の確率
税務調査は企業にとって、百害あって一利なし、という人がいます。
企業ではこの税務調査はなるべく来ないことを願っています。
逆に税務署はなるべく多くの企業に立ち入り調査をしてしっかり追徴課税をしたいと思っています。
それぞれに真逆の思惑があるのですが、実は税務調査はいつやってくるか、の前に本当に来るのか、という話をします。来るか来ないかと言えば、答えは必ずきます。です。
国税庁が自ら毎年発表している「税務行政の現状と課題」があります。
平成27年度版に法人、個人の実調率を記載しています。
実調率とは、その年度に実際に税務調査をした企業の割合です。法人の実調率は年々低下しており平成25年で3.0%です。個人の実調率は平成25年度で1.0%です。
確定申告している個人事業主のところに税務調査が入る確率は100年に1回です。
法人企業でもわずか3%ですから、ほとんどの会社はその存在すら忘れているかもしれません。
個人事業主の場合は上記の数字ですから、これはほとんど現実味がありません。従って税務調査は実際の話、確かに行われてはいますが、本当にくるのか?ということになります。
来ない確率の方が圧倒的に高いです。
さらに個人事業主で小規模なところ、売上高が1,000万円以下のところは、よほどの違法行為がない限り、税務調査が入ることはありません。何故なら税務調査官には追徴課税の金額によるノルマが課せられています。
税金がしっかり取れるところを効率よく回らないとノルマが達成できないばかりか、昇進に影響します。小さな会社を廻っている余裕はありません。
税務調査は開業してどのくらいでくるのか?
来ない方が圧倒的に高いことが分かっていてもゼロではない以上、やはり心配です。
来るとすればどんな時に来るのか、時期的にはいつごろなのか、について述べていきます。
まず、どんな時に来るか、と言えば、開業して5年後くらいが1つあります。
税務調査は過去5期分遡って調査をする場合がありますから、5期に満たないと効率が悪いのです。
そして事業が軌道に乗って利益が出だした事業所もピックアップされ易いです。利益が出だすと、利益を隠す傾向があるようです。
確定申告したデータと税務署が持っているKSK(国税総合管理)という超優秀なコンピューターがはじき出しデータに不自然な差異がある場合も対象となります。
個人事業所であっても異常があれば、正確に明示されるのです。また、業績は伸びているのに現金預金や在庫が不自然に少なかったり、所得金額が売上高に比べて異常に少なかったりすれば、これも対象です。
このように事業所の色々な場面で税務調査が来るようです。
関連記事:税務調査に当たる会社の特徴と確率【5年に一度は当たる?】
税務調査はいつ来るのか?時期について
次に時期ですが、大体、秋に集中しているようです。
これは税務署の内部の都合によるところが大きいようです。
税務署が最も忙しいのは確定申告の時期です。毎年2月ごろから準備に入り、6月ごろまではネコの手も借りたいくらい忙しいです。とても税務調査に行っている余裕はありません。
そして一息ついて税務署の人事異動の時期を迎えます。7月が税務署の実質的な新年度です。8月ごろまで体制を整える期間があって、ようやく8月下旬ころから本格的税務調査の期間に入ります。
綿密な下調べを行ってから、実質的な税務調査に出かけて行きます。11月12月頃まで続きます。1月2月頃も税務調査に行く場合がありますが、かなり少ないです。確定申告の準備に入らなければならないからです。
こうした税務署の年間のスケジュールがありますので、税務調査は秋に集中的に行われる、ということになります。
税務調査対策について
税務調査の対策としては、もうこれは普段からしっかりと不正なく、経理処理をしておくことが第一です。
⇒税務調査とはどんなことをされるのか?種類と強制捜査について
後は、税務調査に強い税理士とのコネクションをしっかりとしておくことが大事です。
税理士と契約している場合、税務調査が入る場合はまずは税理士事務所に連絡が行きます。税務調査対応は有料にはなりますが、税理士契約の範囲内です。
税務調査対応の経験がある税理士、しっかりと税務官と戦ってくれる税理士と契約、もしくはコネクションをとっておきましょう。
税務調査に強い税理士を探す方法としては税理士ドットコムを利用するのがおすすめです。
関連記事:個人事業主に税務調査の通知が来た!今から税理士に依頼すべきか?
まとめ
国税庁が一生懸命、税の取り立てを行おうとしても現有勢力では、とても追いつきません。全国に税務職員は5万7千人ほど、これに対して確定申告をする法人、個人は合計約600万か所あります。税務職員が全部税務調査に行くわけではありません。
国税庁は巨大な組織です。多くの部署があり、実際に税務調査ができる人は限られています。毎年すべての法人、個人の調査を行うことは不可能です。
実体としては結局、実調率は上記の数字になっています。これから先、この実調率が上がる可能性は不透明です。少なくとも大きく改善されることはないでしょう。
それよりも、税は自ら申告することが大前提となっていますから、e-taxのように自主的に効率よく申告するシステム開発や啓蒙活動を促進させる方がはるかに効率はいいことになります。
税務署がいつ来るかは心配ですが、ごく普通の経理会計を行い、違法行為などは考えなければ別にいつ税務調査官がきてもどうということはありません。