常連さんが、いつも行っている贔屓の居酒屋で、その飲み食いの代金を1ヶ月ごとにまとめて払う、要するにツケで払うことに決めているところは結構あります。掛け売りはしません、と断り書きしている飲食店ももちろんあります。

ツケ払いのお客さんには毎月決まった日に請求書を送付しなくてはなりません。この請求書の発行を忘れてしまう場合がままあります。通常は居酒屋からの請求書が届かなければお客の方から催促の連絡をするのでしょうが、お客も忘れていると、時効という厄介な問題が発生します。

民法174条では短期消滅時効が定めてあり、飲食店などの債権は1年間放置しておくと時効が成立して、債権そのものが消滅します。1年経ってから居酒屋の大将が気づいて、慌てて請求書を発行しても、お客の方が、そんな請求は知らない、とか忘れた、と言って拒否されたら、打つ手はありません。

時効が1年と決められている債権は飲食店以外にはホテル、旅館代、芸人の債権、レンタカー代金などがあります。

因みに、民法173条では、商品の売掛金、給料債権、運送費、理容師などの債権の時効を2年と定めてあり。医師、工事業者、手形債権、土木、建築の請負代金などは3年と定めてあります。

請求書を出さないで放置しておくと、このように時効という規定があって代金の回収ができる権利が消滅しますよ、というわけです。

そこで債権(飲み代、商品の売買代金など)が消滅しないように時効を中断させる方法が必要となります(民法147条)。それが請求書の発行です。

時効の中断とは、お客に対して、このような債権がありますよ、ということを伝え、債権を請求書という形で明確にして、送付すれば時効が中断します。つまり速やかに債権の支払いを促し、取引を完遂させる役目があるということです。

この請求という行為は法律上では催告(民法153条)にあたり、これだけでは厳密には債権は明確になっても消滅時効の進行は止められません。最終的な手段として、催告の規定により、請求書を送付してから6ヶ月以内に裁判所に申し立てることが必要です。

請求書とは法的にはこのような意味合いがあるところを先ず抑えておかねばなりません。

請求書の作り方 記載事項やフォーマットに法律的な規定はない

実は民法も商法も、又税法も請求書の書き方、絶対記載事項あるいはフォーマットについて何も規定しておりません。商法や税法を正しく運用するために必要な書類として請求書があり、債権として必要な項目が記載されておればそれでいい、という結構あいまいなものです。

従って請求書は特に税法上、どうしても記載していないと、税金の徴収ができないため、特に消費税の計算項目は必ず必要となってきます。必然的に誰が誰に何をどのくらいいくらで何時売ったのかが分からないといけなくなります。

従って請求書の記載項目はこれに従ったものとなり、債権としての体裁が整うわけです。

具体的には、請求書発行日、債権者名、債務者名、品名またはサービス名、明細、個数、単価、金額、支払い時期、消費税額、などが請求書を構成する記載項目となります。

これが基本的な請求書の作り方です。

請求書発行についての注意事項

請求書の発行は事前に得意先との取り決めをしなければならない事が色々あります。

請求書用紙:会社によっては請求書の用紙そのものを指定用紙(無料又は有料)にしているところがあります。客先の請求書提出ルールに従った方法で提出しましょう。

請求書発行日の取り決め:請求書が債権として成立させる重要な日付です。通常は得意先の締切日を発行日とすることが多いです。

得意先の締切日、支払日を事前に取り決めておきましょう。消費税の計算方法を決めておきましょう。税込みか税別かを明らかにしておきましょう。

請求金額の端数処理:小数点以下切り捨て、四捨五入、切り上げとあります。事前に取り決めが必要です。

振込料:請求する方が払うのか、得意先が払うのか、取り決め必要。

支払い金種:現金、振り込み、手形、小切手などの種類があります。最近では振り込みが多いですが、現金振り込み50%、手形50%というような会社もあります。事前の取り決めが重要です。

請求書発行時には、注文書、納品書、請求書の内容に一貫性がなければいけません。注文書の記載事項と異なっていれば、受取拒否や、支払いが翌月に廻されるなどのトラブルになる可能性がありますから、チェックが必要です。

まとめ

社会人なら常識的に知っておかなければならない請求書の作り方、出し方ですが、業界によって、あるいは得意先によって、ルールが様々です。しかし、最低限必要な記載項目は何かを抑えておけば迷うことはないでしょう。

仕事は営業して仕事を受注し、約束事に合わせて生産またはサービスを行い、完了したら納品し、請求書を発行、そして入金があって、仕事が完了します。

しかし手形入金があると、手形の約束期日まで、仕事が完了しません。お金をいただいて初めて仕事が完了するわけですから、一貫した管理が非常に大切です。請求書の発行部署は経理課が多いと思われますが、営業から生産現場、管理、経理の相互の連携が重要であることは言うまでもないことでしょう。