簿記の勉強をはじめると、必ず費用収益という言葉がでてきます。費用収益はどんな風に捉えられますか?会社が使ったお金が費用、儲けたお金が収益というのが多いかと思われます。

では、社長が会社のためにポケットマネーを使った場合、これは費用になるのでしょうか?

個人事業主であっても会社のお金と個人のお金はわける

法人ではない個人事業主は給与というものがないので、社長のポケットマネーから費用を立て替えることをしたりします。ですがこれは会社の費用にはなりません。費用というものは、収入を得るために使ったお金です。

そして使えるお金というのは、最初に会社を設立したときに出資というものをします。

最初はこの出資金額以外のお金は使わないということになります。事業を続けていくうちに利益が生まれそれが現金となればそれを次の収益のための手段としての現金支出として使うことができます。この場合はその現金支出は費用と認識されます。

ですが、事業主が事業の儲けからでもなく、元入金からでもなくポケットマネーで会社の事業にかかわる支払をした場合は、その現金支出は費用となりません。ですが、実際に会社はそのお金によって、将来の収益のための現金支出はしているのです。ですから、社長が支払ったポケットマネーは費用にはならないということで損益計算書には反映されないものの、貸借対照表には負債に備忘記録として記帳しておくということになります。

そのときの勘定科目が「事業主借」となります。事業主借は事業主貸(資産)と期末に相殺されて、元入金に反映されることになります。法人における資本金にあたる部分です。事業主貸、事業主借、元入金は個人事業主特有の科目です。元入金の増減は法人とちがい、認められています。

なぜ事業主がポケットマネーを支払ったのに事業主貸なのか

勘定科目には借入金と貸付金というものがあります。社長がポケットマネーを支払ったのになぜ、事業主貸になるかということです。それは視点が会社だからです。会社が社長からお金を借りた。そういう風に考えればいいのではないでしょうか?だから、会社にとっては借入金なわけで、それが事業主借勘定という負債勘定となります。

逆に、社長が会社のお金を勝手に使ったという場合は、事業主貸という勘定科目になります。会社は社長にお金を貸したということですね。その場合は、会社にとっては貸付金を社長にしたのですから、資産勘定に計上するということになります。その結果、会社が社長に支払った現金支出(事業主貸)、会社が社長からもらった現金収入(事業主借)は費用収益勘定には計上されないことになります。その結果、現金収支があったにもかかわらず、損益には全く反映されないということが出来ました。このように、会社が支払った現金収入、支出のすべてが費用収益と認識されるとは限らないということがわかります。

現金支出を費用と認識するための考え方

現金支出のすべてが費用となっているわけではないということでした。費用と認識するためには、現金で考えるのではなく取引で考えるという考えがあります。これは発生主義といわれます。(取引が)発生したのなら、その時支出した現金支出、支出せずに債務とした場合の将来の現金支出を費用と認識するという考えです。収益の場合はどうでしょうか?

収益は費用と同じように(取引の)発生主義というものがあります。ですがこれに加える形で実現主義というものがあります。割賦販売に見られる方法です。取引があってもそのときに収益とせずに、実際に現金が入金されることが実現したときに収益と会社は認識するというものです。売上を計上したとしても、そのとき、同時に売掛金を計上していたなら、売上は収益として認識されないというものです。

また、収益が実現主義、費用が発生主義としたのなら、費用の認識年度と、収益の認識年度がずれてしまうということが起こります。これですと企業の財務諸表に正確性がなくなります。そこで費用収益対応ということが生まれてきました。営業にかかわる費用収益についてのみは、収益が認識されたのなら、同時に費用も認識するという考え方です。

いかがでしょうか?社長が支払った現金は費用収益とはならないということ、費用収益の認識は金額の種類のみならず、発生時期も大事な要素になっているということがうかがえます。