iDeCoは現行の年金制度の問題点を投影している

iDeCo(個人型確定拠出年金制度)は、厚生労働省が運営する、老後の資産形成を支援する制度です。

日本の年金制度は、急速な老齢化により、既に膨大な赤字を抱えています。このままでは、現在働いている人達が老後に生活資金を賄え切れない恐れが多分にあります。

これを少しでも回避する目的でこの制度が設けられました。特に国民年金にしか加入していない個人事業者や自営業の人達は、老後の生活資金確保のために早くから貯蓄や保険加入などの準備が必要です。

しかしこの早い段階から老後資金が準備できる人は少数と言われています。

このため早い段階から計画的に貯蓄していける方法としてiDeCoという制度が考えられました。

国民の多くが現行年金制度に大きな不安を感じています。国も又、この年金問題の解決は簡単ではないと思っています。年金問題は一方的に国に頼られても困るから、ある程度の老後資金は自分でも努力して自分で確保するようにしてください。というメッセージです。

その代わり、掛金や運用益、積立金の受取時には、税金を免除しましょう、としてかなりの優遇策を盛り込んでいます。

iDeCoはどのくらい節税できるか?

iDeCoは加入した方が絶対得です。次に挙げる節税の3つの大きな優遇策があります。

〇掛金を支払う時:掛金は全額所得控除の対象です。その年度の掛金の総額×所得税率で計算され、所得税相当額が還付金で戻ってきます。勿論年末調整又は確定申告が必要です。この還付金は掛金払込口座に振り込まれません。別の個人口座に入金となりますが、できれば、この還付金も掛金増額の手続を行い、掛金を増やしていった方が得です。

〇証券会社などで積み立てたお金の運用で得た利益には課税されない:運用益は投資である以上、約束されたものではありません。リスクがあり、赤字になる場合もあります。運用益に対しては通常は20%の課税がありますがiDeCoは課税されません。金融機関が売り出している投資信託の商品の選択は重要なポイントであり、申込者の個人の裁量となります。

素人には、このあたりの判断が難しいので、証券会社や銀行などの担当者と商品の選択に関してはよく相談しなければなりません。

又、iDeCoの申込は、証券会社や銀行で行っていますが、掛金の運用に伴い各種の手数料が発生します。初期費用や口座管理手数料、事務委託手数料、納付時にかかる手数料、還付時にかかる手数料など各種あります。それぞれは少額ですが、掛金の納付はかなり長期にわたって行われるため、長期間で見るとそこそこの金額になります。

できるだけ手数料の安い低コストの投資信託を選ぶことがコツです。

〇積み立てた掛金を受け取る時、通常は所得税が課せられますが、所得控除があります。(一括と分割がある)

どのくらい節税できるか例題で見てみましょう

〇まず掛金に対して、掛金は課税されません。

例えば、年間給与6,000,000円の人がiDeCoに掛金毎月20,000円で加入した時。申請書類は小規模企業共済等掛金控除という欄にて控除されます。

年間給与から、小規模企業共済等掛金控除(20,000×12ヶ月=240,000円)を含む各種の控除額を差し引いた課税所得が2,360,000円とした時、税率10%として控除額は97,500円、所得税は138,500円となります。

iDeCoに加入していないと、小規模共済等掛金控除がありませんから、課税所得は2,600,000円となり、所得税は162,500円となります。

162,500円―138,500円=24,000円で、24,000円の節税となります。240,000円の掛金の積み立てで24,000円の利息が得られたということです。

〇運用益ではどうでしょうか。
通常金融商品を運用して利益が出た場合、その利益に対して20.315%の税金がかかります。
iDeCoでは、全て非課税です。毎月1万円の掛金で30年間積立して、年率3%の運用益があった場合、資産合計は582万円で運用益は222万円となります。通常ですと222万円×0.20315=450,993の税金がかかりますが、非課税です。

〇受取時はどうでしょうか
受け取り方法に2種類あります。

・ 分割方式(年金として):公的年金等控除として扱われます。
受取金額は雑所得となり、他の公的年金の収入の合計額に応じて公的年金控除の対象となります。65才未満の人で公的年金の収入額合計が70万円まで、65歳以上の人で公的年金収入額合計が120万円までは税金がかかりません。

・ 一時金(一括方式:退職所得控除としての取扱です。
確定拠出年金の積立期間は、勤続年数と考えて控除額が計算されます。
積立期間20年以下の控除額は、40万円×勤続年数で計算されます。
積立期間21年以上の控除額は、800万円+70万円×(勤続年数―20年)で計算されます。

iDeCoには限度額があります拠出限度額といいます。

・ 自営業者など:月額68,000円
・ 専業主婦など:月額23,000円
・ 企業年金に加入していない人:月額23,000円
・ 企業年金に加入している人や公務員など:月額12,000円~20,000円

掛金の前払い

掛金の前払いはできません。掛金の支払いは、会社員は給与からの天引き、個人の場合は、自身の口座からの引き落とし(毎月26日)となります。26日に掛金が不足していると、その月は積み立てが出来ないことになります。複数月分を前払いしたり、不足分をまとめて支払うことはできません。

掛金を増やしたり、減らしたりすることは可能です。

まとめ

iDeCoは節税対策の有力な手段で、おすすめです。

年金制度の将来に政府は、よほど自信がないように見えます。今の若い人達が老後の生活資金として公的年金に全面的に依存されたら、今でさえ赤字なのに、とても賄え切れないとSOSを出しているわけです。

なりふり構わず、掛金は社会保険料並みに控除の対象とします。証券会社で積み立てた積立金の運用益は、非課税です。老後で積立金を受けとる時も、一定額の税金を免除します。など大判振る舞いをしています。iDeCoはそういう制度です。

今の若い人は、なるべく早く、この制度に加入すべきです。こんな恩典のある制度は滅多にありません。ただ意外とみなさん、こういう制度があること自体を知らない人もたくさんいます。

お得な制度です。なるべく多くの人に知ってもらいましょう。

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