相続税に関する税務だけは、いつもお願いしている会社の顧問税理士に依頼しないでセカンドオピニオンたる相続税の専門の税理士に依頼すべきです。

会社の顧問税理士が相続税専門でない税理士の場合は、その顧問税理士と相談して、相続税専門の税理士を探し依頼するのが本来のセカンドオピニオンの考え方です。

いつもお願いしている税理士が正真正銘の相続税専門税理士であれば、そのまま依頼すればいいのですが、相続専門とは言っているが、年間5件ほどの実績しかなく、時々相続について相談を受ける程度の、実績のない税理士には依頼しない方がいいです。

同じ土地を税理士10人が評価すれば10通りの計算結果がでます。

相続税の中で、最も大きなウエイトを持つのが不動産です。特に土地は頼む税理士によって相続税の金額が極端に違ってきます。広大な面積の土地であれば数千万円数億円も違ってきます。

相続の対象となっている土地は、一般的に路線価や固定資産税評価価額などを使って「財産評価基本通達」という国税庁のマニュアルに従って評価します。

このマニュアルは誰が計算しても同じ評価額になるよう定められています。それが目的で作られています。しかし実際は税理士10人が評価すれば10通りの計算結果が出るのです。これが問題です。

何故かと言いますと、この評価はかなりの専門的な知識、経験を保有する税理士又は不動産鑑定士でないと正しく、漏れなく評価することがとても難しいのです。又不動産登記法や建築基準法、都市計画法などの知識も必要となってきます。

相続税の計算や税務は難しいのです。

税理士は税務の専門家ですが、不動産の専門家ではありません。このような難しいことを専門外の税理士が行うから評価が人によって異なる原因となります。

税理士によって評価が異なる理由

税理士は相続税対象物件に土地がある場合は財産評価基本通達により土地を評価しますが、この時、土地の評価方式は減点方式などが使われます。減点方式とは、評価対象にマイナスの要素があれば、それに応じて減額する、ということです。

このマイナスの要素を漏れなくピックアップすることはかなりの専門性が要求されます。(減点方式以外にも、倍率方式、小規模宅地の特例、貸宅地、賃貸用建物の敷地の評価方法などがあります)

土地は道路に面していて、何の権利もついていない、計算し易い、形のいい、丁度よい土地を基準に、形が悪く、自由に使えない権利がついていればマイナス点を付けます。

ここに税理士によって計算値に差を生まれるわけです。相続専門の税理士は減額できる要素を漏れなく、見落とさないで減額します。しかし専門ではない税理士は見落としが発生して、評価額が高くなってしまいます。

相続される土地が区画整理された分譲地のような整地された土地なら大きな問題は発生しないでしょう。しかし、不整形地(土地の形がいびつになっている土地)であったり、道路に面していなかったりしている土地は評価補正をして評価額を算定します。

この評価の基準となる路線価は整形(不整形ではない)の土地を基準としているため、路線価の価格から各種の補正や減額などをすることになっています。

補正を要するポイント

・ 奥行き価格補正(一方のみが路線に接する宅地の価額補正)
・ 間口狭小補正(路線に接するの間口が狭い宅地の価額補正)
・ 奥行き長大補正(奥行きが特別長い宅地の価額補正)
・ 側方路影響加算(正面と側方に路線がある宅地の価額加算補正)
・ 二方路線影響加算(正面と裏面に路線がある宅地の価額加算補正)
・ 不整形地補正(整形地でない宅地の価額補正)
・ ガケ地補正(宅地の側面がガケ地になっている場合の価額補正)

補正率は国税庁法令解釈通達 宅地及び宅地の上に存する権利 「路線価の付表」に記載されています。

減額できる土地の評価

上記のような補正ポイントにさらに次のような減額できるポイントがあります。

・ 路線に接していない宅地
・ 隣の家と一緒に使用している私道のある宅地
・ 500平方メートルを超える広大な宅地:広大地の条件を満たせば広大地補正率により大幅な評価減が可能です。
・ セットバックを必要とする宅地
・ 都市計画道路予定地で建築制限がかかっている宅地
・ 容積率の異なる2つの地域にあたっている宅地

以上のように相続に関して税理士が行わなければならない評価手法は多岐にわたり、簡単な仕事ではありません。従って税理士の知識、経験の度合によって評価に違いが出てきます。

これが相続の段階になったら、経験を積んだ税理士を選ばなければならない理由です。

まとめ

相続財産の価額を決める重要な指針が国税庁の財産評価基本通達ですが、これは通達であって法律ではありません。これによった評価が著しく不適当と思われる場合は国税庁の指示を受けることになりますが、最終的には裁判所の判断となります。

大変難しい相続財産の評価です。この土地以外にも、現預金、債権、株式、家屋、貴金属、ゴルフ会員権などがあります。いずれも財産評価基本通達の中で指針を示しています。

土地、建物などの評価を正しく行うためには、税理士によっては不動産鑑定士に協力を仰ぐ場合もあります。それぐらい専門性の高い分野です。税理士の持っているスキルにより評価が大きく異なる場合がありますので、評価の実態が以上のような内容を持っていることを理解した上で、相続税対策を行って欲しいと思います。

参考:相続税が高過ぎると思ったら~相続専門税理士によるセカンドオピニオン~