相続時精算課税適用を行う目的は、日本の経済の活性化を図るためだと言われています。若い内は子供には資産がありません。それを補てんする形で親から金融資産の補助をしてもらい、マイホームを購入しやすくするための策です。

相続時精算課税制度は一生続く

相続時精算課税制度の適用を受けるには、贈与財産をもらいうけること、届出をすることが必要になりますが、一度届出を提出した場合はそれ以後、その親からの贈与は相続開始のときまでずっと相続時精算課税制度が適用されます。

贈与税の考え方は1人の贈与者ごと

相続税ではすべての相続人が被相続人からうけた財産の総額で計算します。つまり1人の被相続人に対して1人以上の相続人ということになります。ですが、贈与税の場合は一人の受贈者(財産をもらいうけた人)と贈与者(財産を与えた人)ごとに贈与税の計算をすることになります。ですから、1年間の間に複数の人から贈与をもらい受けた場合は、受贈者は贈与者ごとの贈与税の計算をし合算した額がその年の贈与税額となります。

ですから受贈者が複数の贈与者から財産をもらい受けた場合は、そのうちの1人の贈与者との関係は相続時精算課税適用者であり、他の贈与者との関係は本来の贈与税の課税適用者ということで贈与税の計算が進められます。

相続時精算課税適用者とは

贈与を受けた年において、相続時精算課税適用者としての贈与税額を支払い、その贈与者が死亡したとき、贈与財産を相続財産として贈与税率よりも低い相続税率を適用することで贈与税と相続税の差額が還付されることができるというものです。贈与税率は相続税率よりも高くなっているので、相続時精算課税適用を選択したほうが得になります。ですが、毎年支払う贈与税に関してはデメリットがあります。

相続時精算課税適用者でも毎年贈与税は支払わなければいけない

相続財産にできるからといって、その年の贈与税を支払わなくてもいいという訳ではありません。本来の贈与税とは計算方法が違うものの、贈与をうけた年度も贈与税を支払うことになります。簡単にいいますと、相続時精算課税適用による贈与税額は所得税の給与所得の源泉徴収のようなものだと考えたらいかがでしょうか。

年度は超えるものの支払った贈与税が条件を満たせば戻ってくるということになります。源泉徴収の場合は課税標準額が給与支払い時よりも、確定申告時に変更されるため還付されるということになります。相続時精算課税の場合は、高税率だった贈与税率でなく、低税率である相続税率が相続時に適用されることで、多く支払った贈与税額の一部が還付されるということになります。

相続時精算課税適用をした場合のデメリット

相続時精算課税適用者ばかりにメリットがあるとは言えません。相続時精算課税適用者にもデメリットがあります。相続時精算課税の適用をしていない人は、贈与された財産の額から必ず110万円を控除できます。ですが相続時精算課税適用者になるための届け出をして承認されてしまうと、贈与財産からは110万円が控除されないということが起きてしまいます。

○ 相続時精算課税適用者の 贈与税額

贈与された財産の額から2,500万円を控除した残額に一律20%の税率を乗じて計算するということになります。控除額の2500万円についてみてみましょう。贈与者と受贈者は相続時精算課税を適用を受贈者が行った場合は、一生のパートナーとして2人は相続時精算課税適用の関係になります。そこで贈与者が死亡するまでの期間、贈与者からうけた財産について、一生のうちトータルで最大2500万の控除が受けれるということになるということです。

ですから、1年目は200万の贈与を受けた場合は、1年目は200万が控除額。2年目の控除額は2,500万から200万を控除した残額が控除最大額ということになります。ですから贈与額が多くなるほど控除額の残額も減っていくということになります。

○相続時精算課税適用者が適用をうけない贈与者よりも損となる場合

1年目の贈与のときに2,500万の財産を譲り受け、相続時精算課税適用者となったとします。ここで2,500万は使い果たしました。ですから翌年度に幸いなことに相続時精算課税適用をした贈与者からまた300万の贈与をしてもらったとしても、本来の基礎控除額(暦年課税の基礎控除額)110万が控除できないことがデメリットというわけです。しかも、損することが分かった地点で解消をすることができないのが相続時精算課税適用の届出です。またデメリットは他にもあります。

○贈与税の時効が適用できなくなるのが相続時精算課税

相続時精算課税適用でない贈与税の税額の計算の方法を暦年課税といいます。暦年課税には財産をもらい受けた年の翌年の3月16日から贈与税が支払われていない状況が5年が経過すると贈与税は時効となり、延滞税なども課税されないという決まりがあります。贈与税の申告を忘れていた場合いつのまにか5年が経過していたという場合は、暦年課税のメリットとなります。ですがもし相続時精算課税適用者であったなら、5年が過ぎたとしても、贈与者が死亡したときに相続税の課税者としての義務が発生してしまうのです。しかも無申告加算税などの延滞税も相続税に課税されてしまうのです。

いかがでしょうか?相続時精算課税を選択し届出を提出することにはメリットもありますが、デメリットもあるのですね。