所得税では所得に税率をかけて税額を算出します。このとき税額は配当控除額以下であれば、申告して税金を納付する必要はありません。配当控除とはどのような場合に発生するのかをみていきましょう。

1.配当控除額が発生する理由

株式等では企業から配当金が交付されます。配当金を受け取る者が法人の場合は、受け取った配当金に対して法人税が課税されます。法人税は企業の損金と益金の差額の課税標準に対してかかります。企業の利益→企業の利益から法人税を控除した残額→当期の企業の儲けということになります。

そして、企業は儲けが出た年に株主に配当金を儲けから払います。ここで儲けにはすでに法人税が課税されているのです。それを受け取った株主が個人だったとします。その個人株主には配当所得で所得税がかかります。法人税が課税されたお金を個人に配当金として交付し、個人にも所得税がかかるということで、2重課税になります。

法人税は所得税の前払いとされています。ですので、先に前払した法人税の額を、個人の税額から控除しようとするのが配当控除です。配当控除を受けるためには、株式等の投資をしていないといけないということになります。配当金については法人で課税しているので、個人には配当金には配当所得として総合課税または申告分離課税はするものの、法人がその金額で法人税として支払った部分については個人からは課税しませんということになります。その部分を個人の税金から控除するということになります。

2.配当控除額も超過累進税率同様に所得の多い人は控除額が少なくなる

配当控除は1000万を超える所得部分については、半額になります。所得1,000万以上の部分については申告納税をしないといけなくなる割合は増えることになります。

3.配当控除額は取引によって違う

全ての配当所得が同じ割合で配当控除額となるわけではありません。3つに分けられます。

3-1.株式投資系

・企業が出した利益を株式配当金として交付した金額を受け取ったその額。
・株式の配当金でなく投資信託であるもののその投資信託の運用資産が株式である(特定株式投資信託)投資信託の収益の分配金
→課税総所得金額等の金額から10%控除(1,000万を超える部分は5%控除)

ここで、課税総所得金額等についてみていきましょう。所得税では所得を10種類に分類しています。

①利子所得②配当所得③不動産所得④事業所得⑤給与所得⑥雑所得⑦一時所得⑧譲渡所得⑨山林所得⑩退職所得
課税総所得金額というのは、山林所得と退職所得以外の所得の課税標準(税率を適用する直前の額)を課税総所得金額と言っています。この金額が配当控除額を算出するための基礎額となります。

3-2.証券投資信託系

投資信託の収益の分配金は株式の配当金よりも配当控除額は少なくなります。株式の配当金額が優遇されていると言えます。ただし、株式投資系に分類された特定株式投資信託は投資信託ですが株式投資系になります。
→課税総所得金額等の金額から5%控除(1,000万を超える部分は2.5%控除)

3-3一般外貨建等証券投資信託系

外貨建等証券投資信託はすべてが外貨で取引されているとは限らず円も混じっている場合もあります。

・外貨の割合が50%以下→この場合は外貨が混じっていてもこの投資信託は外貨建等証券投資信託とはなりません。外貨建等証券投資信託以外の証券投資信託となります。この場合は証券投資信託系になります。なぜなら証券投資信託系は外貨建等証券投資信託は含まれないからです。ですから外貨割合が50%以下の証券投資信託となることから配当控除額算出のための割合は5%(1,000万以上は2.5%)となります。
・外貨割合が50%超75%以下→一般外貨建等証券投資信託と呼ばれます。この場合が2.5%となり1,000万以上は1.25%が配当控除額算定割合となります。
・外貨割合が75%超えの証券投資信託→特定外貨建等証券投資信託となります。この場合、国外源泉所得と考えられるため配当控除の適用はありません。

配当控除を考える場合についてのみは、外貨建の証券投資信託は外貨割合が50%超75%以下の外貨建等証券投資信託だけが一般外貨建等証券投資信託と呼ばれれ、配当控除の対象となる配当等になります。

いかがでしょうか?配当控除は所得金額が1000万少し超える場合は、できるだけ所得を1000万以下にした方が配当控除額が多くなるようです。