変動所得の金額での損失、被災事業用資産での損失、その他の損失が生じた年度はその他の損失の額から順番に損益通算が行われます。これには理由があります。変動所得、被災事業用資産がどんなものなのかということと一緒にみていきましょう。

1.被災事業用資産とは

事業を営む個人事業主が使用する棚卸資産、固定資産です。ここでのポイントは繰延資産も山林も被災事業用資産に入るということです。山林所得は取得の日以後5年以内に伐採し、譲渡した場合のみです。取得後5年以上経過してから譲渡した場合は、事業所得でなく山林所得になります。山林所得は事業所得とは課税方法が異なり、山林所得を5分の1にし、そこへ超過累進税率をかけて税額を計算します。

そして最後に5倍したものが納付税額となります。ですから損益通算ができる被災事業用資産についての山林というのは、保有期間5年未満の伐採された山林ということになります。このとき、棚卸資産→事業所得、固定資産→事業所得、不動産所得、山林所得→事業所得となります。

2.変動所得とは

メーカーなら商品の値段の変動はあまりありません。ですが変動所得は年度ごとに変化することになります。著作権の使用料や原稿や作曲の報酬、魚の養殖などの所得は変動所得と呼ばれています。変動所得は事業所得または雑所得になります。

3.損益通算の順番

損益通算の順番は、その他の所得→被災事業用資産の損失の金額→変動所得の順番になります。

4.損益通算と純損失の繰越控除とのちがい

損益通算はその年度の損失を他の所得(プラスの所得)と通算することです。純損失の繰越控除の純損失というのは、損益通算をしたけれどそれでもまだ残る損失のことです。残った損失は翌年以後3年間繰越控除が出来るというシステムです。そして損益通算も繰越控除もどちらも大事なのは、損失で減らせる所得がどれかということです。損益通算の場合は、不動産所得、事業所得、山林所得(保有期間5年以上)、譲渡所得です。

そしてその年度にこれらの金額から控除しきれない損失は、翌年以後3年間は損益通算という名前から、純損失の繰越控除として名前が変化し、それぞれの年度の所得を減らす役割をしていきます。ここで損益通算も純損失の繰越控除もどちらも損失によって減らされることが出来る所得というのは、事業所得、不動産所得、山林所得、譲渡所得、退職所得でした。このうち、一旦ひとつに合算される総所得になる所得と成らない所得に分けます。

事業所得、不動産所得、譲渡所得は総所得金額というまとまった課税標準になります。この総所得金額が、純損失の繰越控除で最初に控除されるプラスの所得になります。ただし、損益通算で残った損失部分の発生所得も総所得金額を構成する10種類のうちのいくつかの所得であることが必要になります。総所得金額を構成する金額は利子、配当、不動産、給与、雑、事業、譲渡、一時所得です。純損失の繰越控除が残っている年度に、これらの所得があれば、総所得金額にまとまっていますので、総所得金額から純損失の繰越控除額が控除できることになります。

5.山林所得から生じた損失の額だけは総所得金額から最初に控除できない

山林所得と退職所得は総所得金額ではありません。ですから、山林所得から生じた純損失の繰越控除をする場合は、まず山林所得から控除しないといけません。それからまだ残る損失があれば総所得金額から控除することになります。退職所得がもしあれば退職所得も純損失によって控除してもらうことは出来ますが、最後になります。

6.青色申告と白色申告によって純損失の繰越控除額が変化する

所得税では青色申告をする人に優遇措置がたくさんあります。純損失の繰越控除もその一つです。青色申告をしている人は純損失の繰越控除が全額受けれます。純損失の内訳はこのようになっています。

①変動所得②被災事業用資産③その他の純損失

白色申告の人はここで優遇を受けれないことが出てきます。白色申告の場合は、たとえ純損失の繰越控除額があったとしても、その損失の中で、変動所得から生じた損失額と被災事業用資産の損失額の合計額しか、純損失の繰越控除として所得を控除できる損失にはならないのです。その他の純損失の金額はたとえ損益通算の後残っていても、その損失はなかったこととなり、所得を減らす要素にはならないのです。

いかがでしょうか?損益通算でなぜ先に純損失が変動所得や被災事業用資産よりも先に控除されるのかという理由は、白色申告をする人にとって、翌年度以後もできるだけ変動所得と被災事業用資産とが控除できるようにするためだったのです。

http://shotokuzei.k-solution.info/2007/07/post_52.html