建設業会計は小売業などの一般会計や製造業会計とは売上原価の認識基準が違います。建設業会計の売上原価の認識と収益の認識についてみていきましょう。

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建設業会計ならではの勘定科目

建設業では一般会計とは仕訳の勘定科目の言い方が違います。

  • 売上高勘定→完成工事高勘定
  • 売上原価勘定→完成工事原価勘定
  • 仕掛品勘定→未成工事支出金勘定
  • 未払い金・買掛金勘定→工事未払い金勘定
  • 前受金勘定→未成工事受入金勘定
  • 売掛金勘定→完成工事未収入金勘定

参考:建設業会計の基礎知識

建設業会計は製造業会計の一部

製造業会計は、一般会計とは違い、仕掛品勘定が出てくることが特徴です。仕掛品勘定は資産勘定であり、将来の費用勘定と考えられます。一般会計ではその年度に売上げた製品についての原価を売上原価勘定として費用に計上していました。

製造業会計では、一般会計のように売り上げた製品にかかわる原価とは別に、期末において未だ未完成の製品があるので、材料費、労務費、経費は、製品が出来上がるまで費用化できないということがあります。

そのため製品が出来上がるまでの期間の材料費や労務費や経費などの現金支出は、仕掛品勘定という資産勘定で一旦保留しておき、仕掛品が製品になったときにはじめて、仕掛品勘定で保留していた現金支出が、費用化されることになります。製品が出来た地点で、仕掛品勘定は、売上原価勘定に振り替えられます。

建設業会計、製造業会計と一般会計との違い

建設業会計の費用と仕掛品についての考え方は同じです。ただ勘定科目が仕掛品勘定ではなく、未成工事支出金勘定になります。製造業会計や建設業会計と、一般会計の違いは、一般会計は商品が出来上がったものを仕入れるということです。製造業や建設業は、製品をつくることからスタートするので、製造原価が一度に確定できないことが特徴です。

そのため、現金の支出はしても、それを費用に計上することが、製品が完成するまで出来ないということになります。そのために、完成品の前の段階の仕掛品にかかった材料費や労務費や経費は、一旦資産勘定に計上しておきます。そして完成した製品が売れた地点で、資産勘定から費用勘定へと振り替えることをします。

製造業会計と建設業会計の違い

製造業会計や建設業会計では、製品が完成するまでかかったコストは費用化できませんでした。基本はそうなのですが、建設業会計では完成品原価(売上原価)を認識する方法が2つあります。

1つは製造業会計と同じように、建設工事が完成するまでは、支出した現金預金などは費用に計上しないというものです。

これを工事完成基準といいます。もう一つが製造業会計とは完成品原価の認識の仕方が違うというものです。

工事進行基準といいます。工事進行基準では、名前の通り、工事の進行過程の段階でかかった現金支出を費用化できるというものです。建設工事でも大規模工事の場合は、こちらになります。

工事進行基準での原価の費用化の認識の仕方

工事進行基準では事前に工事原価と売上高について見積金額を出しておきます。見積金額を毎年の工事の進行度合いに応じて、費用化と収益化をしていきます。ですから、決算日における工事の進捗度合いが重要です。

見積をするということは、実際の現金支出額が発生するということになります。見積工事原価の総額に占める実際に発生した工事原価の額が占める割合が進捗度という割合になります。この割合で見積(請け負った)工事高を按分することで、その年度の工事の収益を算出します。

工事進行基準では、実際に発生した売上高という額は存在せずに、最初に請け負った金額(収入)と、工事原価という実際の当期の現金支出と、見積工事原価の3要素だけで、当期の完成工事高という収益を認識するということになります。

まとめ

建設業会計では、工事進行基準と工事完成基準があり、大規模工事では工事進行基準で毎年費用と収益を認識します。小規模工事では工事完成基準で建設工事が完成するまでは費用収益を認識しません。

より詳しい情報、自社における適用については税理士に相談することがおすすめです。