会計上では使った現金支出を費用といいます。これに対して法人税上では損金といいます。会計上の収益に対しては益金といいます。損金と費用、益金と収益の関係は一体どんな関係にあるのでしょうか?それではみていきましょう。

1.会計上のもうけは税務上の儲けに修正される

会社は財務諸表を作成しますが、そのうちの損益計算書は会社の経営成績を表しています。そして利益には法人税が課税されます。ですから会社はできるだけ税金を減らすように、費用を沢山計上する傾向があります。これに対して税務上は税金を支払う必要はないので、公平性に努めます。そうすると現金支出があったとします。

会社では費用として認識し、収益を減らす要素としたのに、税務上ではその現金支出は費用としては認めないということがあります。会計上と法人税上の意見が違うのです。その場合は法人税が優先され、会計上の費用は費用として計上しないことになります。税務上はその支出は税務上の損金と認めないと言っているからです。

このことを(税務上の)損金不算入という会計用語になります。会社は税務上が損金に、この現金支出を費用としていれてくれない(損金不算入)だから、会社は費用を取り消さないといけない。ということになります。

2.損金不算入は会計上の決算が終了してから発生する

会社は税務上が損金として認められないということを決算整理が終了してから目にすることになります。ですから決算のやり直しはできないのです。ですが費用を費用として認めさせてくれない。会社は費用を打ち消す同額を設定しないといけません。どこで費用を0にするのでしょうか?

3.法人税の計算の別表4で精算される

会計上で費用として認められないということは、法人税ではその現金支出を損金として認められないという事を言っています。そのとき、会計上では(法人税上では)損金不算入(である)と認識をします。そして損金不算入額は、会計上の財務諸表の上では認識はされずに、法人税の別表4というところで認識されます。

4.別表4のしくみ

法人税上の別表4では、まず一番上の段に会計上の当期純利益が掲載されています。会計上の当期純利益からスタートします。別表4には加算欄と減算欄があります。当期純利益がある。加算欄があり、減算欄がある。加算欄というのは、当期純利益を増加させる要素をここで加えるという意味です。費用の例についてみていきましょう。会社は(法人税法上が)費用を費用として認めてくれないから、費用を0にしないといけません。

例えば「商品評価損 100円」という費用を法人税法上では費用とみとめてくれなかったとします。このとき商品評価損100円は、(税務上の)損金否認という言い方で認識されます。税務上の損金は会計上の費用でした。損金否認の100円についてみていきます。損金(会計上の費用)の100円は、もし否認でなく認められていたならば、同額の収益つまり益金(会計上の収益を税務上の益金といいます。)を減らす要素として働きました。

ですが損金として認識されないのですから、同額の益金は消滅されずに残ります。その結果、益金100円は損金100円によって消滅せずに法人税が課税されると考えます。つまり費用として認められなかった損金否認である商品評価損100円は、別表4では当期純利益を増加させる要素である加算欄に計上されるということになります。

5.法人税の課税標準

法人税の課税標準は別表4で発生します。会計上の当期純利益 加算 別表4での加算欄 減算 別表4での減産欄 →法人税法上の課税標準となります。ここへ法人税率が乗じられて法人税が決定します。

ですから、先ほどの商品評価損の100円は、当期純利益に加算され、その額が法人税の課税標準になり、法人税率が乗じられます。ですから法人税法上の法人税は、会計上の法人税よりも、商品評価損否認の100円に法人税率を乗じた金額だけ高くなるということになります。これにより法人税法上の法人税の方が、会社上の法人税よりも高いということが生じます。

6.会計上は法人税上の法人税に修正しないといけない

ここで会計上の法人税は、税務上の法人税に修正されないといけません。つまり、当期純利益の下段にある法人税等という欄の額Aに、増加した法人税額B円を加算しないといけなくなります。ここで出てくる科目が、「法人税等調整額」です。この欄に増加した法人税の額を記入します。税引き前当期純利益 減算 法人税等→当期純利益の額でした。ここへ法人税等の後へ法人税等調整額という増加をするので、結果、当期純利益はこうなります。

税引き前当期純利益 減算(会計上の法人税等 加算 別表4で増加した法人税の額B)→当期純利益 。つまり当期純利益は増加した法人税の分だけ少なくなっています。こうすることで、会計上で法人税上で認められなかった費用は、当期純利益にも、会計上の法人税にも反映できたということになります。

7.すべての費用収益は税務上の損金益金に修正される

会計上ではあらゆる取引に対して費用収益が発生する場面があります。このとき、税務上でも同じように取引は発生していると考えます。ですが、その額が会計上と税務上では違う場合があるということです。受取配当金では会計上では、現金/受取配当金 で資産と収益として認識されます。その結果、受取配当金の額は課税対象になっています。

ですが、法人税法上では受取配当金という収益は益金とは認められないのです。もし益金と認める場合は、2重課税となってしまうからです。受取配当金は利益剰余金から株主へ配当されるものです。利益剰余金になる前に一度課税されているのです。利益剰余金は一度法人税が課税されたお金なので、法人へ分配された時はその利益に対しては課税しないことになります。なので受取配当金の益金不算入ということになり、別表4では減産欄に計上されることになります。

○まとめ

会計上の費用収益は法人税上の損金益金として認められてはじめて法人税の課税対象となります。ですが法人税の損金益金は、会計上の取引がないと発生しない要素なので、まずは会計上の取引である費用収益ありきの法人税の損金益金であると言えそうです。