会社を立ち上げようとすると非常に多くの書類を作らなければなりません。また書類の届け出期間が決まっていますから短期間に集中的に取り組まなければなりません。会社を創ろうと思っている発起人、経営者になろうと思っている人にはかなりのエネルギーが必要です。

会社設立で最初に作る重要書類が定款です

定款とは、会社を運営するためのルールを決めた書類です。届け出は出生届のようなものです。会社の憲法とか会社の法律などと呼ばれています。会社立ち上げのためには法務局や税務署、労働基準監督署、年金事務所、都道府県市町村などへの各種手続きがあります。この時に定款が必要です。

また、会社が動き出すと、新規取引先からは定款、謄本、会社のパンフレットなどが要求されます。運転資金や設備投資資金の調達のために銀行から融資を求める場合や助成金や補助金を申請する場合も定款が必要です。あるいは国や地方自治体の許認可事業を申請する場合も必要です。

定款に記載しなければならないこと

・絶対的記載事項・・・商号(会社名)、事業目的、本店所在地、出資額、発起人の氏名、住所、発行可能株式総数など。

・相対的記載事項・・・必要があれば記載する事項、定款に記載されてはじめて効力が生じる事項で、株式譲渡制限に関する事項、取締役の任期、金銭以外の財産による出資(現物出資)に関する事項など。

・任意記載事項・・・記載は自由で、事業年度、役員報酬の決め方、役員の氏名住所、公告の方法、株式の名義変更手続、定時株主総会の時期など。

但し定款に記載した事項を変更する場合は変更手続き(変更登記)が必要です。

定款が必要な場面

定款はどんな時に必要でしょうか、会社設立時と会社が動き出した時に分けて見ていきましょう。

会社設立時

・法人設立登記・・・所轄の法務局で設立登記に必要な書類です。公証人役場で認証を受けた定款を持参します。他に出資金払込を証明する書類と登録免許税(資本金の0.7%、最低15万円)が必要です。

・税務に関する届け出・・・所轄の税務署で手続きします。法人設立届出書の添付書類として定款のコピーが必要です。その他法務局発行の登記事項証明書(履歴事項全部証明書)、株式名簿、設立趣意書、設立時貸借対照表などが必要です。また税務署では同時に給与支払いや源泉所得税などの関する届け出手続きがあります。

・地方税に関する届け出・・・都道府県市区町村の役所に届け出の添付書類として定款のコピーが必要です。届け出は法人設立届け出といい、都道府県は各都道府県事務所法人事業税課、市区町村は各法人住民税課の両方です。

・労働保険に関する届け出・・・労働基準監督署で労働保険の加入手続きをする。定款または謄本が必要。なおハローワークにも雇用保険の加入手続きが必要です。(定款は不要)

・社会保険に関する届け出・・・年金事務所にて健康保険、介護保険、厚生年金保険の加入手続きを行います。定款または謄本が必要な場合があります。

会社が動き出した時

・事業資金、設備投資資金の融資依頼・・・銀行、信用金庫などに融資を依頼する時は、事業計画書、設立時貸借対照表に加えて定款、謄本が必要です。会社のパンフレットがあればこれも添付します。

・新規取引先との契約・・・新しく仕事を受注する時に、取引先から定款、謄本、パンフレットなどを要求される時があります。主に大手企業ですが、中小企業の取引先でも要求される場合があります。

・助成金、補助金の申請・・・新規会社設立には各種の助成金、補助金の助成が行われています。予算の関係でいつでも申請受付をしているわけではありませんが、国の機関や都道府県などで助成制度がありますので注意して見ておきましょう。申請には必ず定款、謄本などが必要です。ちいさな創業未来補助金(独立行政法人中小企業基盤整備機構)、雇用調整助成金、キャリア形成促進助成金(労働基準監督署、ハローワーク)、その他都道府県により色々な名称で助成制度があります。

・許認可事業の申請・・・すべて定款、謄本が必要です。飲食店、介護福祉関連、バー、ホテル、旅館、民宿、旅行代理店、医薬品販売、中古品販売、人材派遣、クリーニング店、美容室、理容室、映画館、建設業、不動産取引、貸金業、金融商品、マージャン、パチンコ店などの開業には認可が必要です。

その他、定款は事業活動の中で色々な場面で必要ですので、常にコピーして準備しておきましょう。