会社の成長戦略の1つの方法としてM&Aがあります。

今や中企業、大企業を問わず、企業の継続と成長を促すために重要な戦略となっています。

一方、小規模企業では、後継者問題等、構造的な問題を抱えていながら、企業の存続に関して有効な手順を見いだせない状態が続いています。

全国に400万社の企業があり、その内小規模企業は87%も占めており、中企業を含めば99.7%になります。大企業や中企業では、経営戦略の一環としてM&Aはすでに当然のこととして定着していますが、企業数で大多数を占める小規模企業では、身近な戦略とはなっていません。馴染みがないと言えるかもしれません。

しかし、徐々に景気が上昇して、市場規模が拡大しつつある今日、小規模企業の衰退は国家的な損失です。この状態を見て、国も地方も創業支援や経営力強化のための融資や助成制度はかなりの数が設置されています。

ところが、小規模企業のM&Aに関しては、支援制度が決して十分とは言えません。

小規模企業のM&Aは、はっきり言って難しいです。企業文化の異なる会社同士が一緒になるのは、簡単ではない。このことは大企業でも同じです。

大企業にはM&Aを専門とするスペシャリストがかなり充実しています。仲介することによって十分な利益が得られるからです。

しかし、小規模企業となると、残念ながら、マッチングエージェントは極端に少なくなります。

小規模事業者が仮に会社を売ろうと思っても、その手順に関して指導できるエージェントが少ないのです。

まだまだ未成熟な分野ですが、少しずつ問題点を解明していきましょう。

一般論としてM&Aとは

M&Aとは、会社の合併(Merger)と株の買い占め(Acquisition)を組み合わせた造語です。企業買収の総称として使われていますが、買収側と譲渡側が互いに納得しながら手続きを進める友好的なM&Aと、証券市場で株式を買い占めて、対象企業の同意を得ないで行う敵対的M&Aがあります。

会社を売る、とか会社を買う、とはM&Aのことです。新聞の経済欄や株式欄で常に出てくる企業同士の経済情報です。

M&Aは、今後は中小企業や小規模企業でも徐々に進行していくと思われますが、大企業ほど話題になることはないでしょう。

しかし現象論として論ずるテーマは非常に多く内包しており、また実態も複雑です。小規模事業者のM&Aこそ、日本の経済力と伝統的な文化の再建になくてはならないとものと信じます。

小規模事業者が会社を売る理由

① 後継者が居なくて事業承継が難しくなった。
② 収益構造が弱く、経営難が続き将来が不安である。
③ 経営者が病気になった、体調不良となった。
④ 経営に苦労が多く、気力が減退した。経営に疲れた。
⑤ 中大企業による事業再編、事業の切り離し。
⑥ 事業のスクラップ&ビルト、他の事業を始めるため。
⑦ 吸収合併を受け入れる、大企業の傘下となる。
⑧ アーリーリタイヤ(早期退職して残りの人生を自由に生きること)
⑨ 経営者の環境の変化(結婚、転居、家庭内トラブル、他)

この他にも、会社を売りたい人の数だけ理由があるわけです。会社を売ると決断するまで、多くの悩みと試練があります。会社の売買の問題は、売買のノウハウだけでなく、経営者が売ると決断するまでの心の葛藤もまた、大きなテーマとなります。当然売るメリット、デメリットもあるわけです。

会社を買う理由

① 販売エリアの拡大を目論む。
② 市場の認知度を上げたい。
③ 新事業の初期投資を抑えたい。
④ 社歴が一気に手に入る(資格、許認可など)。
⑤ 事業だけの買収も可能。
⑥ 規模を拡大したい。
⑦ 自社にないノウハウ、技術を取得したい。
⑧ 機能を拡充して効率的な企業に変えたい。
⑨ 経営資源の拡大、増強を図りたい。
など、これも又様々です。

まとめ

会社を売る方法は、M&Aの手法を使うことになります。これは小規模であっても同じです。

個人の経営を引き継ぎたい場合は、MBOマネジメントバイアウト(Management By-Out)経営陣買収という方法があります。いわゆるノレン分けと言われる方法です。

従業員に速やかに経営譲渡する方法です。又EBOエンプロイバイアオウト(Employee Bui-Out)従業員による経営権の譲渡という手法もあります。

中小企業などで時々見られる方法で、会社の従業員がその会社の事業を買収したり、経営権を取得したりする方法です。

他にも、M&Aに関連して、MBI、A&D、LBOなどがあります。

一方、会社を処分したい事業主もいるでしょう。長年経営してきた会社の処分は売るか、廃業のどちらかです。この方法論はいずれも簡単ではありません。

こうした、企業の売り買い、又は廃業に関しては、ほとんどの企業の経営者はノウハウを持っていません。これらの問題は、法務、財務、税務の専門的な分野にわたり、とても素人では理解が難しいです。そのために仲介業者に依頼することになります。

現状は決して、このような仲介業者は多くありません。今後この分野の専門家集団が拡充していくことを望むものです。