中小企業の経営者の多くは、毎月のように資金繰りとにらめっこしながら会社の運営を行っています。月ごとに変化していく各勘定科目を見ながら、その増減に目を光らせ、残高の資金の過不足に一喜一憂しているわけです。

会社の目的は当然ですが利益を出すことです。それも入り(売上)を多く、出(支払)を少なく、です。

そして資金繰り表の当月残高は常に黒字になっていることが理想的です。売上と支払いの実態及び残高の実態を見て、日々改善策を具体的に講じなければなりません。

試算表、月次決算書、資金繰り表は月次の必須経営資料です

試算表とは、総勘定元帳を集計した一覧表です。

残高試算表、合計試算表、合計残高試算表の3種類ありますが、一般的には残高試算表が使われています。仕入帳から総勘定元帳への転記が正確に行われているかどうかを見るための会計資料です。

表の真中に勘定科目を置き、左側に借方、右側に貸方をおきます。貸方合計額と貸方合計額が一致しなければなりません。

月次決算書とは、月末を決算期末として、1ヶ月分の決算を行った決算書です。経営計画書から導かれた目標(予測)数値が勘定科目ごとに12ヶ月分に分割され、その数値が予め記載され、当月の実績値との差を見ます。そこから各数値の達成度、危険度、注意点などを確認して、月次の経営活動に使用する資料です。

資金繰り表とは、一定期間のすべての現金収入や現金支出を合計集計して、現金や収支の動きや現金過不足の状況を把握する経営資料です。どの段階で資金が不足するか、またいつの段階で資金余裕が生まれるかを予め予測できる財務的に重要な資料です。

参考:資金繰り表の作り方、見方、注意点

業種別の管理ポイント

中小企業は基本的に営業、技術、経理です。これを経営者がしっかり理解し運営管理できなければなりません。

しかし毎月あるいは毎日、細かく分析して把握することは時間がかかり過ぎて難しいと思われます。ポイントとすべき数値を絞って管理、運営することが懸命でしょう。

例えば、飲食、小売業の場合は、どんぶり勘定になり易いです傾向にあります。利益や赤字の実態が日次、月次で分かりにくい経営実態が見受けられます。売上、支払いの請求書、領収書、経費、人件費の元データ、資料は正確に管理、集計が必要です。建設業は、一般的に受注金額が高く、また工期が長い傾向にあります。

従って、予算管理(原価管理)や進捗管理を管理ポイントとして見ていく必要があります。不動産業は、好不況に大きく影響され易い業種です。また売り上げや利益が一定の時期に偏り易い傾向にあります。当初の経営計画書により、利益の平準化を行うことや月ごとでも入金があるような業務も組み入れることが肝要です。

製造業のポイントは、原価管理と在庫管理です。原価を構成する科目が多く、各科目の変動や実態を常に把握していなければなりません。また在庫が溜って資金が回らなくなり、資金の硬直化によって資金繰りが悪化する場合があります。

経営資料作成は早ければ早いほど役に立つ

経営者は試算表により、正しく資産などの記帳が行われているかどうかチェックし、資金繰り表により、月次の資金が滞りなく回転し、残高で不足を来すことがないようにしなければなりませんし。

月次決算書で会社が実体として利益が上がっているかどうか、上がっていなければ何が問題なのかを追求して打開策を出す、そして即実行する。試算表や月次決算書が1ヶ月遅れで作成されるようではタイムリーな経営活動はできません。こうした基本資料はできるだけ早く作成されて経営者の経営判断資料とすべきです。