経営者がとるべき施策と従業員がとるべき施策があります。ここでは経営者(社長、代表者)が取るべき施策を述べます。

会社が倒産しかかっている、という状況のステージによって選択する方法が異なります。大きく分けて、再建するか廃業、倒産のどの道を選ぶかです。

現在おかれている会社の状況を冷静に判断しなければなりません。債務超過がここ数年解消されず、連続赤字決算となっていて、この先改善される見通しがたたないため倒産の危険性にさらされているが、まだ半年ぐらいはもちそうだ。

こんな時、経営者がとるべき施策は、とにかく再建策です。赤字体質に陥っている原因は既にわかっているでしょうし、対策が講じられているでしょう。それでも行っている再建策が有効に働いていなくて一向に改善されていない状況にあると思われます。

赤字体質脱却を目指す再建計画が長期にわたり、いつまでたっても改善の兆候が見えてこないと、役員も従業員も疲弊し、モチベーションが下がり、計画自体がとん挫の可能性があります。

こんな時、経営者がとるべき方法はM&Aか廃業(任意整理)又は民事再生か破産です。

M&Aは企業の合併、買収のことです。M&Aには様々な形態がありますが、中小企業のM&Aはほとんどが株式譲渡による買収です。会社が所有するあらゆる資産、商圏やノウハウ、許認可、資格、技術、特許などを時価で評価します。

倒産しかかっている状況なら当然負債が過大になっています。こうした有形無形の会社の資産+負債総額の合計額が買収価格となります。

この会社の買収価格を含めた価値を買い手が見て、買収を決定すればハピーエンドです。特殊な技術、ノウハウ、商圏、商品などがあれば可能性があります。成功すれば従業員も取引先もそのままです。あと半年あればぎりぎり間に合うかもしれません。挑戦する価値はあると思われます。地元の商工会議所又は民間のM&Aコンサルタント会社に相談してみましょう。

任意整理は再建を目指す再建型任意整理と会社の清算を目的にした清算型任意整理があります。いずれも弁護士を代理人にたてて行います。

再建型任意整理は、債務の1部免除や返済期間の延長をしてもらい、再建計画、返済計画を立てて、その計画に沿って事業を継続しながら債務の返済を行っていこうとするものです。債権者の同意が得られることが条件です。得られなければ清算型任意整理に移行する可能性があります。

清算型任意整理は、会社の財産をすべて換金して債務を返済し、会社自体は消滅することをいいます。債務をゼロにすることが条件です。代理人が債権者と交渉する内容は債務の圧縮と財産の換金です。内容的には破産手続きと同じですが、破産は法的な手続きのため裁判所が行います。

あと半年どころかあと1ヶ月ももたないかもしれない、倒産しかかっているとき

こんなステージになってきた場合は、それでも会社の再建を目指す民事再生、会社更生という方法があります。そして最終的には破産または特別清算を選択することになります。

民事再生は、手形の不渡りや支払い不能などの破産原因がなくても、その見通しがあれば足ります。民事再生は再建型の倒産制度です。経営が苦境に陥った中小企業のよりスムーズな再建を図る目的でできた制度です。

再建が手遅れになる前に申し立てることが可能です。すべて裁判所の監督下で行われ、任意整理が債権者全員の同意が得られないと成立しないのに対して、民事再生は債権者の多数決で成立します。

会社更生も再建型の手続きです。裁判所が選任した管財人により実施されます。会社更生法による再建は利害関係者の数が多く、調整が難しい場合や、経営陣の総退陣させる場合に使用されます。中小企業では極めて事例が少ないです。

破産は破産法に基づいて裁判所が行う法的な整理手続きです。破産手続きは債務者の全財産を換金した上で債権の種類により優先順位や債権額に応じて公平に配当し、手続きを終了します。

裁判所の選任する破産管財人が全て行います。

個人の破産で資産が全くなく、破産手続き費用さえない場合があります。この場合、破産管財人は選任されず、破産手続き開始と同時に手続きが終了します。(同時廃止)この場合債権者への配当はありません。

特別清算は中小企業ではほとんど事例がありません。親会社が債務超過に陥った子会社の解散を行う時に使用されることがあります。

このように切羽詰まった会社の状況下でも選択すべき色々な方法があります。再建型で行くか、清算型で会社を消滅させる方法を選ぶか。経営者は極めて苦渋の選択を迫られているわけです。これらの施策のメリット、デメリットをよく研究して、経営者自身にとって、従業員にとって最もよい方法を選ばなければなりません。