社会保険料は従業員の給与から控除されます。そして、所得税の計算では、支払った社会保険料は課税標準から控除されます。サラリーマンは給与所得という所得者です。給与所得は給与収入とは違います。給与収入から給与所得控除額という給与収入ごとに決められた額を控除した額が給与所得となります。

給与や退職手当金は何が必要経費なのかということが個々に定めにくいからです。社会保険料は給与から支払われています。所得税では社会保険料のように1年間に納税義務者が支払った現金支出のうち物的控除という決められた枠内の額が、課税標準から控除されます。社会保険料、社会保険料にかかわる仕訳とともに所得税の計算において、給与所得から控除される額についてみていきましょう。

1.社会保険料控除

サラリーマンにとって、給与から天引きされる社会保険料はかなりの負担になっています。年末調整や確定申告は支払うべき所得税の額を計算するために行われます。所得税では、支払った社会保険料は全額が課税標準から差し引かれます。その他所得税率を乗じる前に、給与から差し引かれる額と仕訳についてみていきましょう。

社会保険料は5つの保険料から成り成っています。

•健康保険料
•介護保険料
•厚生年金保険料
•雇用保険料
•労災保険料

この中で従業員が負担すべきものと会社が負担すべきものがあります。会社が負担するといっても、給与を設定するのは会社です。会社は自分が負担する保険料も込みで給与を設定しています。ですから、会社が負担する社会保険料だけ、給与が安く設定されているということが考えられます。

1-1.給与の9.97%が健康保険料で差し引かれている

健康保険料は会社と従業員が折半して払っています。給与の9.97%が設定されています。本人負担はその半分の4.985%です。残りは会社負担とされています。

1-2.厚生年金保険料はなんと給与の17.120%が設定

給与の17.12%が厚生年金保険料です。本人負担はその半分の8.56%となっています。

1-3.介護保険料が発生するのは40歳以上から

40歳になると介護保険料も支払っていくことになります。介護費用は50%が国が負担、50%が医療保険に加入している人で負担することになっています。そして医療保険に加入している人が負担すべき額を、介護保険第一号被保険者と介護保険第二号被保険者の人数で割り振り支払っていくことになります。

1-3-1.第1号被保険者が負担している額

第1号被保険者は65歳以上で医療保険に加入している人です。介護保険料額は所得に応じた保険料額になります。市町村によって変わってきます。納付の仕方は年金から天引きされています。年金が一定額に満たない人は市町村に直接納付しています。

1-3-2.40歳以上65歳未満である第2号被保険者が負担している額

国が負担すべき介護保険費用のうちの50%以外の残り50%のうち、65歳以上の介護保険第一号被保険者が支払う保険費用は29%です。国民が負担すべき介護にかかる費用のうち第2号被保険者全員で残りを負担していることになります。実際には給与総支給額を、介護保険料を計算するために変化した額である標準報酬月額、標準賞与月額のそれぞれに、介護保険料率(1000分の12)を乗じた額を算出します。この額を事業主と折半した額が介護保険第2号者一人一人が支払うべき金額となります。

1-4.雇用保険は企業負担の方が多い

雇用保険の保険料割合は給与の1.35%です。このうち従業員が負担する割合は0.5%です。

1-5.労災保険料は全額会社が負担

労働保険料は雇用保険料と労災保険料に分けられます。労災保険料は全額会社が負担しています。雇用保険と労災保険をあわせて労働保険といいます。

2.生命保険料

生命保険に加入していれば、一定の額が給与から控除され、所得税が計算されます。

3.地震保険料

地震保険に加入していれば、最大5万円が給与から控除され、所得税が計算されます。

4.配偶者控除

年間収入103万以下の配偶者がいる場合は給与から38万円が控除されます。70歳以上の配偶者がいる場合は48万円が控除されます。

5.配偶者特別控除

年間所得103万超、141万未満の配偶者がいる場合は、3万円から38万円の枠で給与から控除されます。夫婦どちらもが配偶者控除または配偶者特別控除を満たしているとしても、給与から控除できるのはどちらか1人となります。

6.扶養控除

同一生計親族で、合計所得が38万未満で、16歳以上であることが必要です。

○控除額
・16歳以上19歳未満:38万円
・19歳以上22歳未満:63万円
・23歳以上69歳未満:38万円

・70歳以上:①同一生計で同居していない→48万円 ②同一生計で同居している→58万円となっています。

7.基礎控除額

38万円

7.給与から控除されずに確定申告をしないといけないもの

年末調整で控除されないものということになります。年末調整をしていても尚確定申告をしたほうが還付金がかえってくるものがあります。

7-1.住宅借入金特別税額控除

住宅借入金をした場合の特別控除は、給与から天引きではなく、年末調整のときに、従業員の税金から直接控除される額となっています。初年度については、年末調整で税金から控除されないので、確定申告をすることが必要です。

7-2.医療費

1年間に支払った医療費は給与から控除はされます。ですが、会社では控除してくれません。会社で行う年末調整では医療費控除はしてくれないのです。医療費がある場合は確定申告をすることで、給与から控除する必要があります。

8.社会保険料の仕訳の仕方

社会保険料の記帳をするときに、設定すべき勘定科目をみていきましょう。

8-1.会社が負担している社会保険料の勘定科目

会社は毎月の社会保険料(会社負担分+従業員負担分)について、当月分は翌月末までに支払っています。ですから従業員の給与から社会保険料を徴収したときは未だ支払っていないということになります。仕訳を考えるとき、取引によって発生する現金支出については、取引と現金支出の2つを考えます。取引とは会社にとって儲けとなるかならないかで判断→費用または収益勘定で考えます。現金支出→会社が実際に支出したら現金勘定、これから支出する場合は、未払い費用や未払い金で考えます。

8-2.当月末はまだ社会保険料を支払っていない

流れ:①月中:従業員に給与を支払い、従業員負担分の社会保険料を預かったという仕訳→②月末:会社負担分の社会保険料が未払いであることの認識の仕訳→③翌月:翌月末までに社会保険料を支払ったという仕訳となります。

①従業員に期中に給与を支払った時
給与××/現金預金(手取り金額)
/預り金(源泉所得税)
/預り金(社会保険料の本人負担分)
まだ支払が住んでいない保険料は預り金という負債となり、給与という費用になったということになります。

②月末に会社負担分の社会保険料の費用計上と未払いであることの認識のための仕訳
法定福利費××/未払い費用××
→会社負担分の社会保険料は、支出する会社にとっては、法定福利費という費用と、未払い費用という負債になります。

③社会保険料を従業員負担分と会社負担分を合計した会社が支払ったとき
預り金××   /現金預金××
未払い費用××
となります。

実際に支払ったときは、すでに支払った金額については、月末に費用化されていることに注意します。

まとめ:給与から天引きされる社会保険料。社会保険料は所得税の計算において、その全額が控除されます。その他の地震保険料や生命保険料も一度従業員の手許から支出された金額なので、所得税では課税標準から控除するということになります。そして扶養親族を扶養しているという配慮から、給与から扶養控除はじめ人的控除が課税標準から控除されて、税金が計算されます。

https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1195.htm

http://keiritsushin.jp/keiri-info/socialinsurancepremium/