サラリーマンでも確定申告をしたほうが得になる場合があります。年末調整をうけて、かつ確定申告をするということで、還付される金額がでてきたり、給与所得を減らす要素がでてきたりするからです。どんな時に確定申告をしたほうが得するのかということをみていきましょう。

1.確定申告をしてメリットとなる場合

確定申告をしてメリットとなる場合は、課税標準から控除する要素が出てくる場合と損失を翌年度も繰り越して所得から控除できるという2つがあります。

1-1.給与所得から控除できる要素がある場合

医療費が発生している場合は、医療費控除の適用を受けた方が還付金がある場合があります。年間の医療費の一定額を超える部分については、200万円まで医療費控除の適用がうけられます。一定額については、10万円と課税標準の5%のいづれか少ない金額となります。

1-2.居住用住宅を譲渡し、譲渡損が出た場合

居住用住宅を譲渡し、譲渡損が出た場合確定申告をしないと譲渡損部分が給与所得から控除されません。土地や建物にかかわる譲渡損は本来は給与所得からは控除されないのですが、建物の中でも居住用住宅という建物や土地についてだけは、給与所得からも控除つまり、損益通算ができることになります。いくつか条件があるのでみていきましょう。

1-2-1.居住用財産を譲渡し、買換資産を購入し居住した場合

譲渡資産について、期間の条件があります。譲渡した年1月1日において、5年を超えて所有をしていないといけません。住宅借入金はあってもなくてもどちらでもいいことになります。また、買換資産である居住用住宅にも条件があります。①50m2以上でないといけない。②譲渡年度の前年1月1日から翌年12月31日までに買換えないといけません。③買換え年度の12月31日において買換資産にかかわる償還期間が10年以上の住宅借入金がないといけません。

1-2-2.買替資産を購入せずに、譲渡だけをし、譲渡損失が出た場合

譲渡資産についての条件があります。①譲渡した年1月1日において、5年を超えて所有をしていないといけません。②譲渡日の前日において、譲渡資産に係る償還期間が10年以上の住宅借入金がないといけません。さらに譲渡損失の額についての条件もあります。居住用家屋も含むその年に譲渡した土地建物等の資産の譲渡所得の内部通算の後の譲渡損失の額と、譲渡資産の住宅借入金等の金額の合計額から譲渡資産の譲渡対価の額を控除した残額とのいづれか少ない方の額を譲渡損失とすることになります。

1-2-3.譲渡損失として給与所得から控除できない場合

適用されないケースがあります。それは居住用資産を、配偶者または直系血族や同一生計親族などに譲渡した場合は、譲渡対価を受け取っていない可能性もあったりすることがあるので、給与所得からは控除できません。

2.譲渡損失が給与所得などから控除しきれない場合は3年間の繰越控除がある

譲渡損失が給与所得等の所得から控除しきれない場合は、翌年以降3年間は各年度の給与所得から譲渡損失が0円になるまで控除できます。

3.上場株式を譲渡したとき譲渡損失が生じた場合

上場株式を購入し、譲渡したものの譲渡損失が発生したとします。このとき上場株式に係る配当所得が発生していた場合は、上場株式に係る配当所得の金額から、上場株式の譲渡損失の額を控除することができます。ただそのときの配当所得は申告分離課税を選択したものに限ります。申告不要を選択した上場株式にかかわる配当所得の金額では、譲渡損失を控除することはできません。

4.上場株式等に係る配当所得の金額から控除してもなお残る譲渡損失がある場合

配当所得の金額から控除した年度の翌年以後3年間は譲渡損失は株式等に係る譲渡所得(上場分も含む)、上場株式に係る配当所得から控除できます。繰越控除の場合、控除できる所得と順番は、上場株式以外の株式にかかわる譲渡所得→上場株式に係る譲渡所得→上場株式に係る配当所得の金額の順番になります。

5.「退職所得の受給に関する申告書」の提出をしていない場合

この場合は、退職金の支給額に20.42%の税率を乗じて計算した所得税及び復興特別所得税の額が源泉徴収されてしまいます。退職金の支給額が800万円の場合をみてみましょう。

800万円×20.42%=1,633,600円

これはとても大きな額です。確定申告をすると、退職所得の受給に関する申告書の提出をしたのと同じ計算がなされるので、多額が還付されます。勤続年数が10年2か月だとします。勤続年数は1年未満は切り上げなので11年になります。今年度の所得が退職所得だけだった場合に退職所得の受給に関する申告書を提出していない場合の還付額をみてみましょう。本来の退職所得の計算(退職所得の受給に関する申告書を提出している場合)

①退職所得控除額 40万円×勤続年数11年=40万円×11年=440万円
②課税退職所得金額 (退職金の支給額-①)×1/2
=(800万円-440万円)×1/2=180万円
③税額(ハ×税率-控除額)×1.021=180万円×5%×1.021=91,890円
*税率は所得税の速算表を参考にします。

退職所得の受給に関する申告書を提出していないだけで1,633,600 減算 91,890 =1,541,710円の差額があります。確定申告をするとこの額が還付されることになります。

まとめ

サラリーマンで上場株式を譲渡した場合、居住用住宅を譲渡した場合において譲渡損失が出た場合は、給与所得等の所得から控除でき、税金を少なくすることができるので、是非確定申告をすることをおすすめします。医療費が出た場合もそうです。そして住宅借入金を借り入れた初年度は年末調整では税額控除ができないので、その場合も確定申告をすることをおすすめします。

http://www.nta.go.jp/taxanswer/joto/3302.htm
http://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinsei/annai/gensen/annai/1648_37.htm