自治体の返礼合戦が加熱しています。

自治体が寄附を集めるためにふるさと納税の制度を使っていますが、その返礼品合戦が加熱しています。

2015年度の税制改正関連法が3月31日に成立したことを受けて、高額な特産品、換金性の高いプリペードカード、お礼品に価格を表示するなどの行為は自粛するよう通達が出ています。

そもそもふるさと納税の主旨は、高額な寄附であっても対価を求めないことです。主旨に反するような返礼品の送付は自粛してください。ということです。

また、返礼品の1年の合計額が50万円を超えた場合、又は他の一時所得の金額との合計額が50万円を超えた場合は、返礼品は一時所得として課税されますから注意が必要です。

控除額が2倍に

ふるさと納税の3大特典の1つ、寄附金の税額控除ですが、2015年度から控除額の上限が2倍となります。居住地で納める住民税と所得税が一定の上限まで控除される制度で、この改正された制度によりさらに一段と制度を使用する自治体が増えるでしょうし、返礼品もさらに充実した品揃えとなっていくことが予想されます。

また、本来確定申告を必要としないサラリーマンなどは、今まではふるさと納税に限っては確定申告が必要でしたが、このたび改正により(ワンストップ特例)、必要でなくなりました。全国の自治体が寄附を受けた人の居住地の自治体に連絡することになりました。

因みに、現在全国には1,788の自治体があり、その中の1,062の自治体が返礼品を送付しています。

控除額が2倍、を例で見てみましょう。

例えば、夫+専業主婦+16~18才の子供1人の場合

夫の年収が700万円の場合は、住民税は約38万円です。

従来は控除の上限は38,000円となります。仮に40,000円をふるさと納税で寄附をすると手数料2,000円を引いて38,000円が住民税と所得税から控除されます。

控除額が2倍になるわけですから、控除の上限が76,000円となります。

78,000円を寄付すれば、限度枠一杯の76,000円が控除されることになるわけです。

実質2,000円で78,000円の30%から70%の割合の価値のある特産品が手に入り、その寄附した78,000円の内76,000円が税額控除されるという、誠においしい話です。

ふるさと納税の問題点

税制改正により、一段とふるさと納税制度を使用する人が増加すると思えますが、一方問題もいくつか指摘されています。これらは十分心得ておかなければならないことです。

ふるさと納税の目的は、地方の税収格差を是正するため、税収の少ない地方の救済をすること、都会で働きながら地方に恩返しをしたい人のために納税の機会を設けること。です。

1、 税収格差の是正という本来の問題を根本的に解決していないこと。
2、 寄付者の居住する自治体は納税額が減少し、控除業務が増加する。
3、 応援したい地域を支援するという本来の意義が、お礼と節税を目的にした納税者が増加する。
4、 もともと税収が少ない地域の住人が、お礼と節税を目的で、他地域にふるさと納税する人がいて、逆に格差を広げてしまう。税収の少ない地域には地方交付金が支給されているから、人口当たりの税収は他地域と大差ない。とも言われている。

ふるさと納税おすすめのところ5選

以上のような現実と論点を踏まえたとしても1,000を超える自治体の中からおすすめの自治体を選ぶのは容易ではありませんが、ふるさと納税全国サミットなどに積極的に参加し、先進的な取り組みをしている自治体はおすすめの自治体ではないでしょうか。

しかし、そうしたふるさと納税の制度を積極的に使用する、寄附金の使い方を研究する、返礼品の意義を追求するなどの先進的な活動をすることによって、地方創生の起爆剤としている自治体も非常に多いのです。

あえておすすめの自治体を紹介すると、年間の寄付金額の多いところも1つの選択肢です。

平成26年度寄付金額

1位 長崎県平戸市

2位 佐賀県玄海町

3位 北海道上土幌町

4位 宮崎県綾町

5位 岩手県久慈市(震災復興が目的)

平成27年度寄付金額1位 天童市

以上5自治体を上げてみました。

他にも北上市、岩手県西和賀町、福島県大玉村などが積極的に活用しています。

1.長崎県平戸市

長崎県平戸市は、2014年度の寄附金総額14億6千万円を集めて全国1位になりました。2013年度の市税(市民税、固定資産税など)は約27億円でしたから、それを上回る寄附を集めたことになります。平戸市は周辺の多数の島々で構成された町です。何故このような多額な寄附を集めることができたのでしょうか。いくつかの要因が重なっています。

  • 2013年から若手の担当者中心で、地元の事業者と共同で返礼品のカタログ発行や、ポイント制、クレジットカード決済などの導入を計った。
  • ふるさと納税のカタログのリリース、民間のポータルサイトふるさとチョイスに掲載スタート。申込急増した。
  • 水産加工の協同組合平戸瀬戸市場、市商工課、農業組合法人ひらと新鮮市場、観光協会、などと連携して、取扱い物産の種類を増やした。
  • 地元北松農業高校の生徒が学校農産物のネーミング、パッケージデザイン、写真撮影などをプロから学び、産官学連携による5品をふるさと納税返礼品を完成させた。
    • 平戸のポインセチア~赤いメリークリスマス バイオ技術で
    • 北農シクラメン
    • ほくタマ(鶏卵)
    • 鶏味噌セット トマト果汁入り
    • 北農元気米 平戸米
      などがおすすめです。

2.佐賀県玄海町

2014年度の寄付総額は10億6千6百万円で件数が49,778件です。堂々の第2位です。人工僅か6,134人の町です。特徴は寄附金の使い道をしっかり選べるようにしたことです。

玄海町の町づくりのために、人材育成事業、医療福祉事業、自然及び環境の保全に関する事業、玄海町応援事業などがあります。返礼品は極めて多彩です。

  • 仮屋湾の真牡蠣
  • 玄海町産佐賀牛
  • 連子鯛の干物
  • 玄海町産サザエ
  • 蒸し寿司セット

3.北海道上土幌町

北海道十勝地方の北部、大雪山国立公園東麓に位置しています。畑作、酪農、林業が中心で、小さな町ですが、北海道でトップの寄附金を集めています。2014年度は9億6千万円の寄附金を集めています。

理由は草の根運動が功を奏したことです。IT情報担当部署を創設して、SNSを充実させ、ふるさと納税ポータルサイトふるさとチョイスに掲載。特産品開発のための生産者補助金を創設、街の通販サイトも立ち上げた。

寄附金は子供と少子化対策に使用、教育関連事業に特化しました。

返礼品の種類も豊富です。

  • 十勝ハーブ牛
  • 上士幌産黒毛和牛
  • 上士幌産ジャガイモ(インカのめざめ)
  • 十勝しんたら牧場の放牧豚ハンバーグ
  • 十勝もーもースイーツのアイスクリーム

など

4.宮崎県綾町

宮崎の南部に位置した歴史と伝統の町、人口7,686人の小さな町です。2014年寄付金総額9億4千万円余り、2015年には13億8千万円を集めました。寄附金の使い道は綾町独特の事業が多く、堅実に運営されています。

綾町の青少年育成事業、高齢者福祉事業、照葉樹林とユネスコエコパークの推進事業、自然生態系農業に関する事業、産業観光とスポーツなど合宿振興事業などが寄附金の使い道です。

返礼品の種類も豊富です。

  • 綾ぶどう豚
  • 完熟マンゴー
  • 日向夏
  • こだわり農家の野菜及び加工品
  • 焼酎雲海セット

など

5.山形県天童市

第2のふるさと天童市が合言葉になっています。納税を通じて絆を形成し、春夏秋冬のイベントに参加を促しています。クラウドファンディング、将棋フェスティバル、全日本アマチュア将棋名人戦全国大会の開催、全国中学生選抜将棋選手権大会、などの将棋に関連した事業を始め、来館者数30万人を突破した屋内型遊戯施設げんキッズは全額ふるさと納税の寄附金で建てられました。外にも多くの事業が設定されています。

2014年の寄付金総額は7億8千万円、2015年度は32億2千8百万円にもなります。

  • 季節のフルーツ詰め合わせ
  • 天童のお米
  • さくらんぼ佐藤錦
  • ラ・フランス&サンふじ
  • 天童牛

まとめ

おすすめの5自治体は年間の寄付金額の総計でランク付けされていますが、これらの自治体は制度の有効活用により地域の活性化と地方創生に成功を収めた自治体です。努力の成果は自治体の年度の事業予算を大きく押し上げ、今までできなかった数々の事業に予算を付けることが可能となりました。

ふるさと納税の制度の持つ問題点もありますが、有効活用すれば地方創生の起爆剤となることは間違いありません。問題点の修正を行いながら、長く続けていける制度に育て上げて欲しいものです。

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