医療機関を利用したホワイトニングには、完全に医師に施術を依頼するオフィスホワイトニングと、指導を受けながら主に自宅で自分自身の手で行うホームホワイトニングがあります。患者の希望によっては両方を併用することも少なくありません。

このようなホワイトニングは強力な薬剤を使うため、虫歯や歯周病の人などは断られることが多いです。ホワイトニング前のカウンセリングや歯の状態を確認する段階で、先に歯や歯茎の治療をすすめられます。

虫歯や歯周病といった分かりやすい症状の他にも、ホワイトニングを断られる可能性が高い状態の歯があることをご存知でしょうか。

977488d2655559452694cf5249c92560_s

今回は、医療機関でのホワイトニングを断られる人の特徴についてまとめてみました。

歯の変色や汚れを医療機関でサッと治すか、家でゆっくり安全に治すか、どちらにするか迷っている人は、こちらを参考にしてみてください。

ホワイトニングできない人の特徴~変色の原因や身体状態に注意~

医療機関でホワイトニングを断られることが多いのが、ホワイトニング効果を期待できないほど重度の変色を起こしている人や、身体的に施術の影響が心配される人です。

  • 無カタラーゼ症の疑いがある人
  • 妊婦や出産直後、授乳中の女性
  • 重度テクラサイクリンが原因の変色
  • 金属材料の影響が原因の変色

重度の定義は人によって異なる場合もあるため、ワントーンだけでも明るくしたいという人の場合は、施術を依頼できることもあります。ただし、芸能人やCMのように真っ白な歯にはなれないことを予め理解しておかなくてはなりません。

あくまである程度の改善は期待できる、というレベルの施術となります。

身体的な理由で施術を受けられない人は、受けられる状態になってから再度ホワイトニングの相談を行うしかありません。仮に無理して施術を依頼しても、何らかのトラブルが発生する可能性が高いです。

それぞれの症状や状態について、ホワイトニングを断られる理由は以下のとおりです。

無カタラーゼ症の疑いがある人

b22160ef0268c021e5f570b663635f9f_s

無カタラーゼ症とは、高原氏病とも呼ばれる先天的なケースが多い病をさします。遺伝的酵素欠損により、体内のカタラーゼが不足している状態です。

カタラーゼは過酸化水素を分解するはたらきをもっているのですが、医療機関で使用されるホワイトニング剤がこの過酸化水素。カタラーゼ不足により過酸化水素を十分に分解できない可能性があるため、ホワイトニング施術自体を行うことができません。

仮に無カタラーゼ症の人が過酸化水素によるホワイトニング施術を受けた場合、有害物質として過酸化水素が蓄積され、口腔内の壊死など取り返しのつかない結果につながります。

※無カタラーゼ症の見分け方※

どこか怪我をした際、オキシドールを傷口に塗ってみましょう。白い泡が出なかった場合は、無カタラーゼ症の可能性があります。(泡の出なかったすべての人が無カタラーゼ症というわけではありません)

妊婦や出産直後、授乳中の女性

cd2917412be793e397b85278f1c53287_s

歯科医療の現場で、はっきりと妊婦や授乳中の女性に影響があった例はありません。しかし、妊娠中から授乳期は、妊婦さんの栄養が赤ちゃんに行くようになっているため、妊婦さんの歯や歯茎が非常に脆い状態となっています。

虫歯になったり歯が溶けだしたり、歯茎から血がでたり、妊婦さんの悩みとして多く挙げられるこれらの歯科トラブルは、口内が脆い状態だからこそ起こりやすくなっています。

そのような状態でホワイトニング剤を使用すると、何が起こるか分かりません。歯科医療機関では、この「何が起こるか分からない」という点を危険視して、妊婦や出産直後の女性、授乳中の女性に対してホワイトニング施術を断ることが多いのです。

患者の観点からしても、歯が脆い状態でホワイトニング剤を使用されると、強烈な痛みと戦うことになります。ホワイトニング剤に含まれる過酸化水素は、劇薬です。何が起こるか分からないリスクと痛みに耐えるくらいなら、口腔内の状態が落ち着いてから施術を受けるほうが安心できます。

重度テクラサイクリンが原因の変色

30b945816607da126a3391329824d12d_s

テクラサイクリンとは、テトラサイクリン系抗生物質の総称のことです。風邪による発熱など誰もが経験し得るような病気の症状改善に使用されるポピュラーな薬剤ですが、歯の象牙質や骨に沈着する特徴をもっています。

歯の形成期とされる0歳~12歳の間にテクラサイクリン系の抗生物質(ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン、クロールテトラサイクリンなど)を服用すると着色しやすいため、注意が必要です。抗生物質の処方を受ける際は、歯の着色の心配はないか医師に相談してみるのも良いでしょう。

以前は風邪薬に含まれることも多かったのですが、歯の着色リスクが発見されて以来、使用は控えられています。ただし、現在でも呼吸器や、皮膚の病気などにテトラサイクリン系の抗生物質が使用されるケースも少なからずあります。

このテトラサイクリンによる着色汚れの特徴は、前歯に現れやすく、重度になると歯に縞模様ができてしまう点です。歯の内部からくる着色であるため、色の濃い縞模様はホワイトニング効果が出にくい部分です。

ホワイトニングで効果を得るには、長期治療を受ける必要があり、経済的な懸念も出てきます。また、どれだけ治療を繰り返しても、色の濃い縞模様部分を完全に消すことは難しいです。

金属材料の影響が原因の変色

6da77c19cc72ece451fb2f1ca29cfa72_s

金属の詰め物や補強材に原因がある場合の歯の変色です。保険適用内でできる治療に使われている銀歯も、この金属材料に含まれます。歯や歯茎に埋めた金属は、長い年月をかけて腐食する危険をもっています。

仮に腐敗しなくても、金属の詰め物は唾液に反応してイオン化することも多く、口腔内に溶けしてしまいます。(口内の詰め物で金属アレルギーが発生するのはこのためです)

金属が溶けだしたり腐敗することで、歯と詰め物の間に隙間ができ、やがて虫歯や歯周病を引き起こすことも。溶けだした金属によっては、歯茎や歯に沈着して変色させてしまいます。

放置しすぎたり進行しすぎると、歯を失うこともあるのですが、ホワイトニングの観点からしてみると、沈着した金属の色素を完全に取り除くことができません。

金属の詰め物自体が白くなることはもちろん、金属によってできた色素沈着が白くなることはないのです。変色が金属の腐敗などにある場合は、過酸化水素の影響で症状が悪化したり激痛を感じる可能性も高いです。

金属材料による変色は、ホワイトニングをする前に原因究明と適切な治療を受けることをおすすめします。

ホワイトニングできない人の特徴まとめ~自宅ケアで安全な美白を目指そう~

医療機関で受けられるホワイトニングは効果が高い反面、使用する薬剤の影響などから禁忌症も多いです。(禁忌症とは、明確な効果が得られないものや、健康被害の可能性があるものに対する制約のことをさす専門用語です)

今回紹介した

  • 無カタラーゼ症の疑いがある人
  • 妊婦や出産直後、授乳中の女性
  • 重度テクラサイクリンが原因の変色
  • 金属材料の影響が原因の変色

この状態に当てはまる人や、これらを理由に施術を断られた人は、まず現状を改善することから始めましょう。無カタラーゼのように施術自体が危険な人は、家でできる簡単な美白方法をおすすめします。

家でできる美白方法は医療機関での施術のように歯の内側にまで作用するものではありません。しかし、歯の表面を整えることでワントーン明るくしたり、着色汚れをある程度落とすことが可能です。

不自然すぎる白い歯より、すこし乳白色の自然な歯を手に入れたいと思っている人には、自宅でできる美白方法がぴったりです。何より、医療機関で施術を受けるより安くすむことが多いのです。

無カタラーゼ症の人や妊婦さんでも行えるのは、やはり正しい歯磨きです。歯の表面をツルツルにして、着色汚れのつきにくい状態にしましょう。ツルツルの歯は、歯の表面に当たる照明や太陽光の光が綺麗に反射するので、実際よりも白く見えるようになります。

最近では研磨剤を含まない商品や、美白効果を期待できる成分入りの歯磨き粉がたくさん販売されています。自分に合ったアイテムで毎日きちんと正しい歯磨きを行って、健康な方法で白い歯を目指してはいかがでしょうか。

ちなみに、ホワイトニングを行っている医師によると、医療機関で施術を受ける際も、傷だらけの歯よりもツルツルの歯の方が施術しやすいそうです。

もちろん、虫歯や歯周病、金属による変色などのように歯や食生活とは別のところに原因がある人は、ホワイトニングの前に患部の治療を行いましょう。治療を受けながらホワイトニングの相談をし、施術可能であれば受けるか否を考えてみてください。