遺書と遺言書は一緒ではありません。遺書は、自分が亡くなった後、大事な人に自分の想いを伝えたり、お願いする手紙のことです。法的な制約は一切ないことが特徴です。

自由に、何を書いても問題ありません。配偶者や子供、お世話になった人達への手紙です。

多いのは、葬儀の方法とか、お墓のこと、生前の家族や、親しい人へのお礼、妻の介護のお願いなどです。

但し、法律上の要件を満たしておれば、法的な遺言書となります。厳格な法律上の文書となります。

遺言書とは、万が一自分が亡くなった時、自分の持つ財産を誰に、どれだけ、どのようにして渡すかを決める意思表示の文書を遺言と言い、これを民法の規定に従って書いて残した文書を遺言書と言います。

民法の規定に従っていない遺言書は無効です。

遺言書の種類と書き方

〇自筆証書遺言:自筆で全て書く遺言書のことです。自分の財産を誰に、どれだけ、どのようにして渡すかを自筆で明確に書かなければなりません。民法で定められた通りの作成をしないと無効になります。

偽造を防ぐために全文全て自筆で、1部でも代筆やパソコン入力の文字があれば無効です。

遺言書が無効か有効かの裁判所の判断は、まず自筆かどうかが決め手となります。(筆跡鑑定の場合もある)
日付は正確に書き入れ、○〇月吉日は無効です。

遺言書は、封筒に入れて封をし、押印に用いた実印で封印します。遺族は勝手に開封できません。開封は家庭裁判所が行い、これを検認と言います。遺言書の相続人が勝手に開けて改ざんすると、相続人の資格が無くなります。

〇公正証書遺言:公証役場で公証人に作成してもらう遺言のことを言います。もっとも確実な遺言方法です。遺言者が遺言の内容を口頭で述べて、それを公証人が聞き取り、文書として記述します。遺言者にとって最善の書き方などを公証人が指導してくれます。

公正証書遺言には2人以上の証人の立会が必要です。公証人が筆記したものを、遺言者と証人に読み上げ、閲覧させ、確認した後、遺言者、証人、が署名、押印し、最後に公証人が署名、押印して作成完了です。原本と正本の2部作り、原本は公証役場で保管し、正本は遺言者が保管します(再発行可能)。手数料が必要です。相続財産の額によって異なり、例えば、遺産総額1億円で相続人が3人の場合は約10万です。

〇秘密証書遺言:遺言の内容を秘密にしたまま、遺言書の存在だけを証明してもらう遺言のことです。(手数料1律11,000円)遺言者が遺言書を作って、その内容を秘密にしたまま、公証人のところに持って行き、公証役場は、遺言書の存在だけを証明します。

遺言が本物であることを証明できます。遺言の内容が人に知られることはありません。秘密を守るため、遺言書を封筒に入れ、遺言書で押印した同じ印鑑で封印しなければなりません。

2人以上の証人が必要です。証人立会の下で、封書の上に署名、押印します。遺言書の保管は遺言者自身が行います。
遺言者が亡くなった時、すぐに家庭裁判所に持参し、裁判所で検認を行います。

検認とは

検認とは,相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせるとともに,遺言書の形状,加除訂正の状態,日付,署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして遺言書の偽造・変造を防止するための手続です。遺言の有効・無効を判断する手続ではありません。(裁判所の案内より抜粋)

封印のある遺言書は、家庭裁判所で相続人の立会の上で開封しなければならないことになっています。遺言の執行を行うためには、遺言書に検認済証明書が付いていることが必要です。

特に注意が必要な遺留分

遺言書の作成には非常に多くの注意点がありますが、特に注意しなければならない点は遺留分に対する対応です。

相続人に対する配慮を法的に権利として定めたものが遺留分です。

相続で争いになり易い事柄です。遺産分割協議書より遺言書が優先します。遺言書より遺留分の方が優先します。(民法902条1項)

相続では、遺言書によって自分の財産を誰にいくら、どのようにしてあげるか、自由に決める事ができます。

しかし遺留分という制度があり、遺言書より強い強制力の侵すことのできない部分があります。

相続人の生活保障という側面を認めたもので、民法により遺留分制度を定め、被相続人の財産処分の自由と、相続人の保護を目的としています。

もしも、相続人の遺留分が考えられていない遺言書の場合は、遺留分減殺請求権を行使して、遺留分を取得することができます。

遺留分率は民法1028条で決められています。

例えば、配偶者と子2人で、遺産総額3,000万円の場合

配偶者の遺留分=遺産総額×遺留分率1/2×法定相続割合1/2=3,000万円×1/2×1/2=750万円

子の遺留分=遺産総額×遺留分率1/2×法定相続割合1/4=3,000万円×1/2×1/4=375万円(1人あたり)

遺言書は基本的に自由に書けますが、遺留分という強い強制力を持つ法律が存在していることを知らなくてはなりません。当然こうしたことを考慮した遺言書であるべきです。

まとめ

遺産分割協議書や遺言書、そして遺留分制度など、民法でその運用が厳しく定められています。自筆証書遺言者や秘密証書遺言書などは家庭裁判所の検認が必要です。自由に書ける遺言書ですが、その要件は法律に従ったものでなければ有効とならないわけです。

自由に書ける遺言書ですが、法的な効力を正確に発揮させるためには、必要な項目がきちんとルールに従った書き方、内容でなくてはなりません。

できれば、遺言書の作成に関しては司法書士や弁護士の指導を仰いだ方が間違いないものができます。また、遺言書の検認手続きや遺留分減殺請求の手続きも弁護士に依頼することになります。