JETRO助成金手続きについて【海外展開のための専門家活用助成事業】

JETRO助成金制度の目的として、日本の中堅・中小企業が、東南アジアなどへの新興国へ海外進出するための取り組みに対して助成を行うことが挙げられます。

特にこの助成金制度の特徴として、海外進出事業に掛かる経費に対して直接助成が行われるのではなく、該当事業に対して精通した外部人材、専門家の雇用に掛かる経費の一部に対して助成が行われます。

ですので、単純に事業資金を賄うために助成を受けたい、と考えている企業に取っては非常に「融通の利かない」助成金制度であると言えます。

一方で、海外進出に関して、コンサルタントや専門家を雇用するつもりである企業に取っては、条件に合致した助成制度です。

JETRO助成金の対象について 海外進出に取り組んでいる中小企業

助成金対象は、上述の通り、拠点設立や輸出など、海外進出に取り組んでいる中小企業が対象になります。

ここでいう中小企業とは、中小企業基本法に規定されている企業、もしくは具体的には、直近の売上高が1000億未満、もしくは常用雇用者が1000人未満という条件を満たす中堅企業であることが挙げられます。

また、助成対象となる専門家の雇用についても細かく規定されています。

助成対象の専門家と認められるためには主として、10年以上の海外ビジネスの実務経験があること、過去5年間において応募者たる企業に直接雇用されていないこと、応募者たる企業と資本関係が無いこと、などが挙げられます。

また専門家との雇用契約に関しても、応募者たる企業と専門家本人または所属する団体が雇用契約を結ぶ必要があります。ただし、応募時点で専門家が決まっていない場合においては、JETRO側から専門家を紹介してもらうことが可能です。

ともかく、今までのJETROの多くの助成事業と異なる点として、企業と専門家が直接雇用契約を結び、JETROが契約そのものには関与しないことが挙げられます。

助成対象としては、大きく分けて3つあり、専門家の人件費、専門家の国内長距離通勤費、現地法人登記代行委託費用があります。それそれ細かく要件が定められていますが、人件費の助成限度額は1時間当たり2万円、1日当たり10万円、1月あたり40万円、支援機関中の合計で180万円、という定めがあります。

また通勤費については、乗車区間が片道100キロ以上、助成限度額が70万円以内と設定されています。さらに現地法人の登記代行については、50万円以内で、英文または和文の明細書、領収書が必要となります。

申請方法について

申請方法としては、JETRO本部のホームページから申請書および公募要項をダウンロードし、申請書および必要書類をJETRO新興国支援課「海外展開のための専門家活用助成事業」事務局に送付します。

必要書類には、直近3ヵ年の決算書類、企業概要や事業内容がわかるパンフレット等、専門家の経歴書などが必要となってきます。

JETROの助成金を実際に申請して受けた感想

実際に助成を受けた感想としては、「申請の手順が非常に煩雑で、企業側の負担が大きい」の一言に尽きると思います。

無理に自社で手続きをするのではなく、助成金申請手続きは外注することをおすすめします。

まず、毎月助成申請のための資料として、人件費報告書、専門家の業務日誌、通勤費申請書などを作成してJETRO本部に提出する必要があります。

また、専門家の業務と認められるのは、直接面会による会議等、スカイプなどの電話会議等に加え、メールでのやり取りも挙げられますが、メールでやり取りした場合には、専用の報告書ベースで15行につき30分換算としてメール内容を報告しなければなりません。

なお、その際に調べものなどで掛かった時間については業務時間としてカウントされないため、メールでのやりとりは特に効率が悪いものとなります。実際、私どもの事業でも、毎月、2回ほど直接会ってミーティングを行うことが多かったです。

月次資料の内容はJETRO本部で精査され、その内容が承認されれば、企業側に確定書類が送付されます。それを企業担当者および専門家が押印し、JETRO本部に返送すると、その月の助成が仮確定されます。

ここまでの手順が1ヶ月のサイクルとなるのですが、やり取りが非常に煩雑で、実施期間が長くなると他の月の処理も入ってくるため、どの月のものが処理できていて、どの月のものが処理できていないのか、把握するのが難しくなって混乱を生じました。

結局、私どもでは、助成制度専門の担当者を1人新たに定めて何とか乗り切りましたが、その分さらに人件費が増加してしまい、果たして助成を受けるほどの価値があったのか、甚だ疑問ではありました。

加えて上述しましたが、この助成事業では、基本的に企業と専門家との直接的な雇用契約を結ぶ必要があるため、例えば専門家との間に何らかのトラブルが発生した場合においても、JETRO側は一切関知しません。

幸いなことに、私どもでは専門家とのトラブルは一切発生することがありませんでしたが、専門家の選出には最新の注意が必要となります。

なお助成期間は2016年1月までとなっているため、既に助成制度は終了しておりますが、補正予算取得のタイミングで、新たな形で新規の助成が開始される可能性は非常に高いです。

ですので、興味がある方は、JETROから発表されるニュースには常にアンテナを張り巡らせておくとよいでしょう。