行政、政府外郭団体、特定団体からの補助金および助成金を取得するためには、おおよそ一連のサイクルがあります。

基本的には、

補助金の申請所作成と提出>審査>補助金の承認>事業実施と報告書の作成>事業終了と報告書の作成>補助金の入金

という流れになります。

各プロセスを見て言えることは、「補助金、助成金の取得はかなり大変である」ということです。

それでは、各プロセスで私が問題点になったことや、ポイントとなった点について述べてゆきたいと思います。

どのような補助金・助成金制度が存在するか

まず、補助金や助成金を受けるためには、どのような補助金・助成金制度が存在するか、チェックする必要があります。最近では、インターネットで検索すれば大抵の助成金制度を見つけることができますが、やはり官報や業界専門誌などをくまなく探すことで、より効率的に見つけ出すことが可能です。

時期的には、補助金制度は新年度から実施されることが多いので、1月前後発表されることが多いです。ただ、補正予算などが組まれることがあると、時季外れの10月頃にも募集があることがあります。

ですので、担当となった方は、補助金、助成金に関する情報は、常にアンテナを張っておく必要があると言えます。

自身が実施しようとする事業内容と合致する補助金・助成金が見つかったら、その制度に対して申請を行うのですが、ここで注意したい事として、助成を受けようとする事業内容と、補助金を得る助成内容が一致することが大前提となります。

当たり前のように思われるかもしれませんが、これが意外とできていない方が多く見受けられます。ここが一致していないと、どんなに素晴らしい事業内容を提案したとしても、確実に落選しますので、特に気を付けてください。

補助金・助成金は事業終了後に評価される

また、これも基本中の基本ではあるのですが、補助金・助成金の類は、あくまでも「事業終了後に評価され、最後に補助金、助成金支払われる」ということです。

補助金、助成金の対象額として多いのが、該当事業に掛かる費用の1/2または1/3、上限○○○万円まで、というものですが、これはどういうことかと言うと、「事業に掛かる費用は、先ず全額自らが支払う必要がある」という事なのです。

おそらくは、先に助成金を支払ってくれるという太っ腹な団体は先ずありませんので、事業終了までは自費で建て替える形になるのです。それを知らずに、助成金を当てにして事業を開始してしまうと、途中で資金不足に陥って事業が破たんしてしまう可能性も生じます。

ですので、事業に掛かる予算に関しては、慎重に検討する必要があります。

事業内容と合致すれば申請を行う

助成内容を吟味し、事業内容と合致することが確認されたら、助成申請を行います。

助成金制度によって提出物は様々ですが、基本的に、企業であれば企業の事業内容を証明する会社概要やパンフレット、会社登記の謄本、過去3年程度の決算報告などが要求されます。

これらは助成元が助成先の素性を知るための基本的な情報となりますので、あらかじめ準備されておくとスムーズに申請を行うことが可能となります。また、助成対象となる事業提案書は必ず提出を求められるはずです。

ここでポイントとなる事として、「できないことは大風呂敷を広げない」ということが挙げられます。

もちろんあまりにも平凡な提案では、取り上げてもらえる可能性が低くなってしまうのですが、逆にあまりにも自身の身の丈に合っていない提案をしてしまうと、後の評価に大きく響いてしまいます。先ほども述べましたが、助成金は事業終了時にその内容を評価され、最終的な助成金額が決まることが多いです。

当初の提案が達成されていなければ、減額ということもあり得ますので、着実に実施可能な提案をすることが何よりも大事なことであるといえます。

助成対象となるか審査を受ける

必要書類を全て提出すると、助成対象になるかどうか、審査が行われます。

これも団体によって差異はありますが、概ね2週間から1か月の間で結果が出ると思います。めでたく助成申請が承認されると、該当事業が助成対象事業となります。が、先ほども言いました通り、事業終了時における結果が全てあり、必ずしも満額支払いとなるわけではありませんので、決して安心することはできません。

特に行政相手の補助金、助成金制度は、ここからが大変となります。

行政機関では、事業の進捗状況を報告書という形で要求してくることが多いです。大体は月次報告書の提出が要求されるのですが、これが実は非常に負担となります。

ただでさえ、該当の事業が忙しいことに加えて、必ず文書の形で報告書を作成する必要があるのですから、結構な労力を強いられます。

中には、この作業が苦痛であるために、助成金制度を受けない企業も多く見受けられます。

ちなみにこれは私の経験なのですが、助成金制度を活用する場合には、専任で助成金に関わる書類を作成する担当者を決めておく方が、効率的に事業を推進することができます。

もしその様な担当者を置くことができない場合には、業務週報を常に作成し、それを以って月次報告書とすることを検討した方が良いと思います。

なお、月次報告書を要求されない助成金制度であっても、月次報告書を作成して、行政担当課の担当者に毎月持参することをお勧めします。こうすることによって、その事業に対する担当者の心証が良くなりますし、行政に関わる様々な情報を得ることもできますので、この作業は面倒くさがらず、必ず行ってください。

年次報告書の提出義務

助成期間が複数年にわたる場合には、年次報告書の提出が義務付けられます。年次報告書では、月次報告で記載した内容に加え、自らの事業を様々な角度から俯瞰し、客観的に報告することが要求されます。

自らが提案書に記載した提案内容について、どの程度まで達成されているのか、その進捗状況は当初目論見通りなのか、もし目論見通りではない場合、どのような要件によって遅延が発生しているのか、などなど、微に入り、細に入り、分析する力が要求されます。これはかなり時間が掛かることですので、2,3か月前から準備に掛かることを強くお勧めします。

年次報告書では、数字を使ってより具体的に分析することで、より良い評価を得ることができます。行政では具体的な数字で「これだけの結果を上げることができました」と報告することがかなり重要です。

事業結果をどのようにすれば数字で表現できるか、ぜひ検討してみてください。ただし、その数字に間違いがあると、どんなに些細な間違いであっても、かなりしつこく追及される結果となりますので、数字間違いには十分に注意してください。

また、行政に対しては「アンケート結果」がかなり説得力や効果があります。というのも、行政は「市民サービス」がその主たる業務であり、市民からの声に対して常に敏感であるからです。ですので、アンケートを取る余裕があるのであれば、必ず事業内容に対するアンケートを行い、その集計結果を行政に提出し、事業報告の裏付けを高めると良いと思います。

事業終了、最終報告書の提出を行い助成金の請求書を提出

順調に事業が推進され、当初目的が達成される、もしくは助成期間が終了すると、その時点で事業終了となります。終了時には、最終報告書の提出を行い、助成金の請求書を提出します。その後、該当事業の評価が行われ、最終的な助成額が決定されます。

当たり前のことですが、提出書類の確認を必ず行い、提出書類の提出期限は絶対に守ってください。これが守られないと、今まで苦労して行ってきた助成事業が台無しになってしまいます。

以上、駆け足となりましたが、補助金、助成金のサイクルを、私自身の経験と意見を含めて述べさせていただきました。行政の補助金、助成金は、そもそも国民の税金で賄われることが多いため、民間事業に比べて特に厳格に処理が行われるケースが多いです。まずはこの点を理解して補助金、助成金申請を検討してください。

JETRO助成金手続きについて【海外展開のための専門家活用助成事業】