突然ですが、歯肉炎と歯周病の違いは分かりますか?

簡単に言うと歯肉炎の成れの果てが歯周病とも言えます。歯肉炎を放置して慢性化させてしまうと、歯周病になってしまうのです。

今回は、歯周病予防のためにも、歯肉炎の段階で治しておくことの大切さと、実際にどういった方法で治すべきかをご紹介します。最近、血がよく出る、歯ぐきが下がってきた、食べ物が歯ぐきに挟まりやすくなった、という人は要注意です。

歯肉炎は歯周病の危険サイン

歯肉炎は簡単に言うと歯ぐきが炎症を起こした状態のことです。何故そのようなことが起こるかと言うと、次のような理由が挙げられます。

  • 外傷によるもの
  • 体内の不調によるもの
  • 細菌によるもの

まずは、外傷によるものが挙げられます。たとえば、親知らずを抜いた時の炎症や口内炎が歯ぐきにできた場合の炎症です。歯を抜くために歯ぐきを切ったり、抜いた歯のあった部分に穴が開いたりすると、炎症が起こります。

口内炎の場合は食べ物のとがった部分が歯ぐきに刺さったりしたケースなどが考えられます。抜歯にしろ口内炎にしろ、処方された薬を飲んで安静にしていると数週間前後で炎症は治まってきます。

次に挙げられるのが、体内の不調によるものです。内蔵や血液の異常は口内環境に影響を及ぼしやすいため、口内に目立った異常が見られないのに歯ぐきなどに異変が起こった場合は、全身の異常を疑ってみましょう。

この場合は一時的に炎症が起こることもあれば、原因である体内の異常が治癒するまで続くこともあります。

最後に挙げられるのが、細菌による歯ぐきの炎症です。実はこれが一番やっかいなのです。というのも、多少の炎症であれば放置されることが多いためです。

たとえば、歯磨きした際に歯ぐきから血が出ても、「これくらいなら問題ない」と放置していないでしょうか。若い頃であればある程度は自己治癒能力や唾液の自浄作用などで回復しますが、高齢化するとそうもいきません。

友人に歯科衛生士がいるのですが、彼女いわく「歯磨きやフロスを使っただけで血が出るのは歯周病の初期」であり、対処すべき歯肉炎の段階だそうです。これを放置していると、やがて歯周病に悪化する危険があるのです。

明らかな外傷や全身の体調不良に心当たりがない場合は、歯肉炎を疑うべきです。とくに歯磨きやフロスですぐに血がにじむ人は、既に歯ぐきが弱り始めている証拠。早めに対処しましょう。

若いうちはいつの間にか炎症が治まっているので甘く見てしまいがちですが、歯ぐきの炎症は歯周病の初期段階。せっかくの危険サインを見逃さないでください。

何故いま歯周病予防が大切なのか?保険治療の終了

これも歯科衛生士の友人から聞いたのですが、ここ数年の間、歯科医の間ではとあるウワサがあるそうです。それは「歯科治療に対する健康保険の除外」です。

これまで保険で治療できていた虫歯などの異常が、将来は完全に自費治療となってしまう可能性があると歯科医の間でウワサになっているとのこと。その理由は、医療費の削減のためです。

他の先進国に比べて、日本は歯科関連の病気(虫歯や歯周病など)への予防意識が低いことが問題視され続けています。保険診療による安くて確実な治療を受けられるメリットが原因のひとつと言われています。

日本国内の予防歯科への意識を高めるためには、この「虫歯になったら保険で安く治療してもらえば良い」という考えから改善しなくてはならない。という考えのもと、歯科医療に対する保険の見直しの声が上がっているのだそうです。

確かに、保険で安く上質な虫歯治療や入れ歯製作が受けられるのであれば、将来は歯がなくなっても構わない。という考えは高齢者を中心に未だ根強く残っています。

これを改善するには、「治療費が高いから虫歯にならないように気をつけなくては」と思わせる方法はかなり効果的でしょう。とはいえ、数多く存在する医療の中から歯科医療だけを除外するのは現実的ではありません。

しかし、このようなウワサが歯科医の間で出ている以上、絶対に起こらないと言い切れないのも事実です。近年は高齢者医療費の問題が多く挙げられ、負担額の改正が行われています。同じく高額となっている歯科医療もやり玉に挙げられる可能性はあるのです。

あくまでウワサなので保険治療の終了はすぐに起こるわけではありませんが、いつ起きてもおかしくないことです。確実に保険が使える今のうちに治療しておき、将来は歯の治療や維持にお金をかけずに済むように対処しておきましょう。

とくに歯肉炎は、将来的に歯を失う結果となる歯周病の初期段階です。歯周病に発展するだけでも治療費はかかりますし、進行して歯を失えば高額な部分入れ歯やインプラントしか治療方法はありません。

しかも、人によっては歯周病で顎の骨まで溶け、それらの治療すら受けられなくなるリスクもあります。そうならないよう、初期段階で治しておくべきなのが歯肉炎です。

歯肉炎を治す方法で歯周病予防

歯肉炎は進行すれば歯周病になります。歯周病になれば口臭が出たり、歯が抜けたり、ひどい場合は顎の骨まで溶けてしまいます。

歯肉炎を予防することは、将来の歯を守ること、歯周病を予防することにつながります。歯周病にまで発展すると完全な治療も難しくなる(常に進行を抑える治療となる)ので、歯肉炎のうちに治しておきましょう。

歯肉炎の治し方は、主に次の方法が挙げられます。

  • 歯科医院での治療
  • 歯磨きの見直し
  • 歯ぐきの血行改善

お金や時間に余裕があるのなら、歯科医院で治療してもらいましょう。軽度であれば、歯の専門的なクリーニング(スケーリングなど)で終了します。

自分の症状に合った歯磨き方法なども教えてもらえるので、今後の予防のためにも、一度は治療に行くことをおすすめします。

自宅でできる治療法も、基本は歯のクリーニングです。普段行っている歯磨きの見直しをしてみましょう。単純に歯ブラシを左右に動かしているだけの人は要注意。一番大切な場所が磨けていない可能性があります。

歯磨きでもっともよく磨くべきは、歯と歯の間、そして歯と歯ぐきの間(境目)です。汚れが溜まりやすく、細菌も繁殖しやすい場所です。

正しい歯磨き方法は、歯ブラシを垂直に歯に当てるのではなく、斜めに当てます。歯と歯ぐきの間に歯ブラシの先端を差し込むつもりで磨きます。炎症がひどい人は歯ぐきにダメージを与えてしまうため、やわらかい歯ブラシを使いましょう。

歯磨きに加えてデンタルフロスや歯間ブラシの使用も大事です。毎日1回はフロスで歯と歯の間の汚れもかき出すようにします。

また、歯磨き粉も歯周病予防の成分が配合されているものに変えます。歯周病と虫歯の原因となる細菌は別の種類であるため、虫歯予防のための歯磨き粉では効果がありません。歯周病予防に特化したものを選んでください。

たとえば、天然成分のなたまめ成分が配合されたものや、プロポリスが配合されたものです。これらは歯周病や細菌による炎症を抑える効果があると昔から重宝されてきました。こういった昔ながらの有効成分も取り入れてみてください。

他にも、歯ぐきの血行改善もおすすめです。歯ぐきをマッサージしたり、食事の際によく噛んで食べるなどで、血行を良くします。血行が良くなると栄養も多く運ばれるため、炎症によるダメージの回復も早くなります。

歯ぐきマッサージは歯ブラシで歯と歯ぐきの間を磨くだけでも十分です。やりすぎて逆に歯ぐきを傷つけないように注意してください。さらに水分をこまめにとったり軽い運動をするだけでも血行改善に役立ちます。

ちなみに私が以前使ったことのあるコロコロ歯ブラシは、毛が極細毛だったので歯と歯ぐきの間の掃除にぴったりでした。軽い歯ぐきマッサージにもなるので、血行改善にも役立ちます。

歯磨き方法にイマイチ自信がないという時は、いっそこのような歯ブラシに頼ってみるのもひとつの手です。(コロコロ歯ブラシの歯ぐきマッサージの効果についてはレビュー記事をご覧ください→『ころころ歯ブラシを実際に購入・使ってみた感想』へ)

フロスを使うと血が出る場合の対処法

デンタルフロスを使っていると、血がにじむことがあります。この場合は「やり過ぎた!」と慌ててその場所を避けてしまいますが、実はこれは逆効果です。

デンタルフロスをした程度で血がにじむのは、歯ぐきが弱っている証拠です。汚れや細菌によって軽い炎症が起こっていることも考えられます。そのような場所を避けて掃除してしまうと、さらに状態は悪化していきます。

血がにじんでも、毎日必ず掃除しましょう。歯ブラシもやわらかいタイプを選び、歯ぐきをマッサージするつもりで歯と歯ぐきの間を意識して歯磨きします。

最初のうちは血がにじんだり炎症を起こしたりで心配になりますが、掃除を毎日繰り返し、無理をしなければ、次第によくなってきます。

大切なのは、血がにじんだからといってフロスや歯間ブラシを止めないこと。毎日必ず行ってください。歯間ブラシは太めなので、歯と歯の間に入らない場合は無理せずフロスのみを使うようにしましょう。

歯周病予防に液体歯磨きを使う時の注意点

液体歯磨きの中には、歯周病予防をうたうものも多いです。しかし、ここで注意したいのが液体歯磨きの使いすぎによる悪影響です。

液体歯磨きの中にはアルコールが含まれているため、口内への刺激が強いです。口に含むとピリピリするのであれば、口内の粘膜がダメージを受けています。

我慢して使い続けると口内ダメージにより、ドライマウスが引き起こされます。ドライマウスになると唾液による細菌や食べかすの洗い流しが期待できないため、歯周病の原因菌は増えやすくなります。

液体歯磨きの成分でしっかり殺菌されるから大丈夫、と思いがちですが。現実はそうはいきません。歯周病の原因菌は嫌気性の細菌であり、空気を避ける習性があります。そのため、歯と歯ぐきの間の奥深くなど空気の届かない場所にもぐりこみます。

液体歯磨きでは洗い流しきれないような場所にまでもぐりこむので、いくら歯周病菌に効果的な成分が含まれていても、液体歯磨きだけで完全な殺菌は不可能です。

殺菌しきれなかった細菌が、液体歯磨きによるドライマウスで洗い流されなかった食べかすなどにくっつけば、一気に増殖します。そうなれば、歯肉炎が起こり、やがて歯周病になります。

液体歯磨きは口臭予防などにある程度の効果を期待できますが、あくまで表面の細菌を洗い流す程度のもの。歯と歯ぐきの奥に入り込んだ細菌などは、歯ブラシで歯垢ごとかき出さなくてはなりません。

そのため、液体歯磨きを使う際は、頼り過ぎず、セカンドアイテム程度に考えましょう。

歯周病予防に歯肉炎を治す方法まとめ

歯ぐきの腫れや出血は、軽いものであれば放置しがちです。しかし、あまりに放置しすぎて悪化させてしまうと、やがては歯を失う歯周病になる恐ろしいものです。

そのため、まだ治す余地のある歯肉炎のうちに対処し、治療しなければなりません。歯科医院で相談するのが最も効果的なのですが、現実は忙しくてなかなか歯医者に通えないものです。

そこで、自力で治す方法を日常生活に取り入れてみましょう。方法は簡単。正しい歯磨きをすることと、歯ぐきの血行を改善することです。

私も先日、歯科医院で「歯磨きでは歯ぐきとの境目を意識して行ってね。じゃないと歯周病になるからね」と言われました。

歯周病に「なる」ということは、今は歯周病がないってこと?と喜んでいたのですが、いつの間にか歯ぐきに炎症ができてしまいました。

なたまめ成分入りの歯磨き粉で意識してそこを重点的に歯磨きし続けていると改善されたので、歯肉炎のうちなら治療できるというのは事実です。少なくとも私は歯磨き(と歯ぐきマッサージ)だけで歯肉炎が治りました。

やわらかめの歯ブラシで歯と歯ぐきの間を磨くだけなので、誰にでもできる治療方法です。予防効果もあるので、歯ぐきが炎症していないという人もぜひ今日からはじめてみてください。

こういったコロコロ歯ブラシのような歯ぐきマッサージと歯磨きが同時にできるアイテムや、歯周病菌に効果的な歯磨き粉を使うのもおすすめです。自分にあった道具で毎日こつこつと歯肉炎の予防や治療を行いましょう。