消費税増税の次は証券増税か?

今やたらと証券増税の動きがあるようです。投資家にとっては当然無視できない増税論で、消費税が10%に増税されたばかりなのに、うんざりする論調だと危惧する人も多いです。その証券増税の概要と今後の見通しについて説明します。

増税の動き

2016年ごろから政府税制調査会が金融所得の税率を25%に引き上げるべきだ。という議論が出始めました。そして経済同友会も25%への増税を提言しています。実際に増税されると国税収入は1兆7000億円も増加する勘定になるようで、財務省も当然前向きです。

出典:2019年10月30日日本経済新聞 どうなる証券増税、甘利氏が描く税制に期待も

出典:2019年4月17日大和ネクスト銀行 株式投資の売却益や配当金への増税の検討、投資家への影響は?

増税賛成派、反対派の意見とは

増税の論議が加速するとともに増税賛成派、反対派の意見が出てきています。

増税賛成派は、経済同友会などですが、国税庁が発表している所得階層別の所得税負担率のグラフ(上記グラフ)によって議論が展開されています。

 

グラフを見ていただくと分かり易いですが、合計所得金額5,000万円~1億円の税負担率は28.5%、さらに所得が増えると税負担率が減少します。

超高所得者層は所得に占める株式譲渡益の割合が高く、その税率が20%と所得税の最高税率45%と比べて低いから逆転現象が起きます。不公平だからもっと上げてもいいのではないか、という意見です。

増税反対派は、同じ所得税負担率グラフを使って、証券増税は大衆増税だと主張しています。人数からみても超高額所得者はごく僅かで、大半は所得税負担率が10%(住民税を入れると20%)となっており合計所得金額800万円以下の層です。今でも既に所得水準に見合う株式譲渡益の税率は高いのに、それを25%に引き上げるのは株式投資そのものを罰しているようなものだ。という意見です。

出典:2019年10月30日日本経済新聞 どうなる証券増税、甘利氏が描く税制に期待も

株式譲渡益への税率現行20%から25%へ増税になる?口コミは?

口コミも増税への危惧について投稿されています。

例えば、

  • 取り易いところから取るという安易な税制が未だに続いている
  • 小口個人投資家まで税率25%では誰も株なんかやらない。
  • 税金を取る話ばかり。
  • 減税や規制廃止で負担減少させようとする意見は自民党の官僚主導型政治では無理でしょう。

庶民レベルでは積極的賛成の声はありません。今後議論が進んでいくことになれば各界からの意見も豊富になっていくでしょう。

増税論の背景には、最大規模に膨らんだ463兆円の日本企業の内部留保を成長投資に回すことを促す税制を視野にいれていること。そのシステムを考え始めているようです。

内部留保が溜り過ぎているという論調ですが、これには慎重論が色々あるようです。もう1つは先般実施された消費税10%に伴い軽減税率の実施も同時に行われました。その穴埋めとして6,000億円の財源が確保したいという。

その方法として証券増税により穴埋めしたい。という思惑です。そしさらに上記増税賛成論の意見にあるような高額所得者への増税論、つまり所得格差の是正という思惑です。

所得格差を是正するなら金融所得への税率引き上げが効果的という意見が主流の意見となっていく可能性があります。

出典: 2018日ヤフーニュース 株式の売却益への増税を検討?

どうなる証券増税、見通しは

現在のところ増税があるかないか、不明ですが政府の増税への足慣らしが進んでいるようにも感じられます。金融庁が考えている税制改定要項には、少額投資非課税制度(NISA)、つみたてNISAの恒常化や株式や債券の現物取引と先物取引との損益通算、上場株式の相続税評価額の柔軟化などが要望されています。

これらが証券増税とセットで進めることも検討されています。新しい産業として急成長しているロボアドバイザー投資に非課税枠を設定する案も出ています。

若年層に人気の投資手段ですからこれはこれで大歓迎です。証券増税の見通しはまだはっきり分かりませんが、政府税調の軸足は増税に移っていることは間違いありません。今後反対派の意見もかなり強くなってくると思われますから、しばらくは両派に分かれて論争が戦われることになります。

まとめ

株式など譲渡益課税については、日本は現行税率20%です。政府税調は他国の実勢もみながら検討していきたいと言っていますが、財務省の発表している情報では日本と同じ分離課税方式のフランスは30%又は総合課税17.2~62.296%の選択制、ドイツは既に26.375%です。

イギリスは10%と20%の段階的課税です。日本はどこの国を参考とするのでしょうか。いずれにしても所得格差是正の効果が最大限出るような方向性が必要です。