孫への教育資金非課税化 終了か継続か恒久化か?

2018年8月の日経新聞で表題のような教育資金贈与の非課税を恒久化しよう、という動きが文科省にあり、財務省に求める方針を決定した、とあります。

現在、教育資金の一括非課税という措置は2013年4月に制定されたもので時限立法であり、2018年度末に期限切れとなります。この制度は高齢者の金融資産を子供や孫に効率よく移すもので、全国で既に約19万人以上の契約があり、制度が続けば今後も増え続ける可能性が高いという予測によるものです。

この制度は、高齢者が自分の子や孫に教育資金として1500万円を上限として贈与する時、贈与税を非課税とするもので、教育資金に限定されています。

教育資金を高齢者から子や孫に直接渡すのではなく、高齢者が金融機関(銀行や信託銀行、一部の証券会社)と教育資金贈与信託契約を結び、専用の口座を設けてここに一括で預け入れます。

子や孫は契約された金融機関に領収書など明確に教育資金であることを証する書類を金融機関に提出すれば、子や孫が30歳になるまで、その都度支払いがされる。という制度です。

制度は継続の可能性あり

この特例制度が来年2019年3月末で終了となるのか、新たに期限を定めて継続となるのか、あるいは今文科省が財務省に対して求めているように恒久的な制度となるのか、現在のところ不明です。

金融庁は賛成しているようですので、期間限定、恒久化のどちらかで制度が引き継がれると予測されます。

誰にどんな影響があるのか

教育資金贈与の非課税措置は、かなり前からあって、現在の特例でなくても非課税です。

昔、大学に入るのに入学金や授業料を親や祖父からもらって、贈与税がかかりましたか?かかったという人を聞いたことがありません。

現在もこの制度があり、多くの人がお世話になっているわけです。

では何故、わざわざ同じような教育資金贈与の非課税措置という特例制度ができたのでしょうか。

現在ある非課税制度は、孫や子の生活費や教育費を孫や子が必要な都度、直接渡すものであって「都度贈与」といって贈与税はかかりません。

非課税になるのは同じですが、特例制度との違いは、「その都度、孫に渡す」と「1500万を限度とするお金を一括で金融機関に信託して孫に渡す」の違いだけです。

従って受け取る側の子や孫には何の影響もありません。黙って受け取ればいいです。

「一括で渡す」は祖父や祖母には影響が大きい

しかし、お金を渡す側の祖父や祖母は、判断が難しくなり、手続きも色々あることから影響が大きいです。

孫が必要とした時に渡す方がいいのか、自分の身体が弱ってきて相続のことを考えなくてはならない時、相続税節税対策として一括で金融機関に付託する方がいいのか、よく考えておかなければなりません。

都度、孫にお金を渡したが、孫が預金通帳を作って預金していたら、教育資金ではないため課税されます。

渡し方にも注意が必要ですから悩んでしまいます。

新制度を何故作った?

何故わざわざ同じような制度を新しくつくったのか。それは政府の思惑があるからです。

現在お年寄りが持つ金融資産は膨大な額にのぼっています。個人が持つ総資産の半分以上が高齢者です。相続税も、もらう対象者も高齢になっています。あまり消費に繋がらない。

従って高齢者の持つ資産を特例措置で若い世代に移行する手段として生前贈与を行い易くして、資産を移し、消費を促進させようとする魂胆です。これにより国内の消費が活発になり、経済が発展する、という考え方があるからです。

高齢者の持つ金融資産は財務省から徹底的に狙われているわけです。

高齢者には大きな影響が出ると思われますから。所有する金融資産をどうするか、当局の情報をしっかり得て適切に対応しなければなりません。

まとめ

現在の国の税制の中で、相続税や贈与税は、相続税は高く、贈与税は低く、という流れができつつあります。

2015年以降相続税の基礎控除額は大幅に下がりました。

今まで相続税の対象にならない人まで課税されるようになりました。

一方、贈与税は上記のように1500万円まで非課税となり、相続税節税に大きな影響を与えています。

狙いは1つ、高齢者の持つ高額な金融資産です。これがタンスにしまい込まれて、世の中の経済発展に寄与されない状態が長く続いているため政府が色々知恵を働かせて活用しようとしているわけです。

今後もこのような流れは続くと思われますから、政府の行う施策をしっかり見て、逆行しないようにハンドルを握っていなくてはなりません。

教育資金の非課税化もさらに拡大し、範囲も教育資金にとどまらず、結婚資金や出産資金、育児資金、新築資金などへの広がりが見られるでしょう。