今まで個人で事業を行っていた人が、法人に切り替えることを法人成りと言いますが、法人になった途端、社会保険は強制加入となり、たとえ社長1人の会社でも法人なら社会保険に加入しなくてはなりません。また起業、創業により最初から法人でスタートすれば社会保険料の支払いが即座に発生します。

では社会保険はいつから入らなければならないでしょうか。法律では社会保険への加入手続きは社会保険加入義務の事実発生から5日以内、とあります。事実発生とは加入条件の発生と言い換えられますが、この表現は非常に分かりにくいです。

もっと具体的に言いますと、事実発生から、とは会社の設立日のことです。会社設立日とは、法務局に会社の設立登記を申請した日のことです。申請書類を一式揃えて法務局に持ち込み、受理してもらった日のことです。

加入手続きは5日以内?

加入手続きは事実発生、つまり会社設立日から5日以内となっていますが、事実上無理です。

加入手続きの書類の中に法人登記簿謄本の添付があります。法人登記簿謄本は、申請書類を一式揃えて持ち込み受理してもらった日、つまり会社設立日から出来上がるまで通常1週間かかります。

既にこの段階で法律上の期限を超えています。

さらに法人として銀行との取引申請を行わなければなりません。この時法人登記簿謄本が必要です。あるいは法人として客先と新規に取引する場合も法人登記簿謄本が必要です。5日以内の加入手続きはとても無理です。

では、どうしたらいいでしょうか。

その時は、届出が遅れた旨の理由書を添付してください。5日を超えても事業主が不利益になることはありません。

しかし早く加入手続きしないと従業員が困るでしょう。健康保険証のない期間ができますから、最悪実費負担が請求されるかもしれません。法人化すれば社会保険加入は強制加入ですから、いづれにしても加入させられます。

加入手続きをしないで黙っているとどうなるか?

加入手続きをしないで黙って放置しておくと、いつまでも健康保険証がない状態が続きます。従業員がいれば、信頼関係が崩れますのでいいことは1つもありません。

いずれにしても早晩年金機構にバレますから、年金事務所の方から連絡があり、早期に被保険者として資格取得の届出をするよう依頼があります。

法律に基づいて粛々と手順を追って進められていきますから逃げようがありません。

最初は加入勧奨で自主的な加入を促します。

方法は文書、電話、事業所訪問などです。加入勧奨は民間委託となっています。

加入勧奨でも自主的に加入しない事業所に対しては加入指導を行います。年金事務所の職員より重点的に加入指導が行われます。それでも加入がされないと立ち入り検査認定による加入手続きへと進みます。

立ち入り検査が行われ、被保険者の資格有無の事実の確認が行われ職員の認定による加入手続きが行われます。

これには厚生年金保険法第100条及び同102条が適用され、正当の理由なく違反し、文書や物件の提出を拒んだり、質問に答えなかったり、検査を拒み、妨げ忌避した時は、6ヶ月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する、とあります。
出典 日本年金機構

まとめ

景気は上向き傾向というのに、中小企業の各事業所の中には資金繰りに困窮しているところが少なからずあります。

その中で社会保険料が毎月の支払な中で大きなウエイトを持っている事業所は資金繰りが大変で、社会保険料の滞納が増加し、小さな事業所では法人から個人事業所に転換したいと考えているところもあります。

税金は儲からないと課税されませんが、社会保険は関係ありません。赤字でも容赦なく徴収されます。現在もなお、社会保険料を払っていない中小企業は意外と多いのです。

最近年金事務所が社会保険への加入を積極的に呼びかけています。いまさら感もありますが、少子高齢化、人口減少の影響で人手不足が深刻です。社会保険の加入はしていないということになれば、さらに従業員募集は絶望的です。

事業主の方は、今後も間違いなくコスト上昇が考えられますから、抜本的な事業再構築を考えなくてはなりません。