企業の利益が伸びてくると、節税を理由に保険の勧誘が増えてきます。

節税のために保険に入るべきなのか、お悩みの経営者の方は多いかと思います。

ですが、法人保険にはいっても節税にはなりません。今回はその仕組みについて書きたいと思います。

法人保険が節税にならない理由

法人で保険に加入すると法人税の節税となります!

このキャッチフレーズで中小企業の多くの経営者が保険に加入した人が多いようです。

厳密に言えば生命保険に法人が加入すれば、その保険料全額が経費として認められ、課税されませんから、保険料分の法人税が減ります。

従って保険に加入した年度から会社の利益から保険料分が差し引かれた残額に対して法人税が課税されるため、保険料を支払う期間中は法人税が減ります。

確かに法人税は減っていますが、節税とは言いません。法人保険は節税効果がありません。

その仕組みを解説して見ます。

法人税の算定式から検証

法人税=会社の利益×法人税率という簡単な算出式があります。

この式にあてはめて法人税を算出します。

  • 資本金1億円以下の企業の法人税率は、利益400万円以下の場合は21.43%
  • 資本金1億円以下の企業の法人税率は、利益400万円をこえ800万円まででは23.41%
  • 資本金1億円以下の企業の法人税率は、利益800万円をこえた金額では33.58%
  • 資本金1億円以上の企業の法人税率は、利益400万円以下の場合は28.31%
  • 資本金1億円以上の企業の法人税率は、利益400万円をこえ800万円まででは29.03%
  • 資本金1億円以上の企業の法人税率は、利益800万円をこえた金額では29.74%

但しこれには事業税や住民税が含まれています。

会社の利益が小さくなれば法人税も小さくなります。

その方法は会社の収入である売上高が小さくなれば利益も小さくなります。

経費を大きく計上できれば利益が小さくなり法人税も小さくなります。この経費の一部として生命保険があり、加算できれば経費が増加して利益が圧縮され法人税も小さくなります。

法人が加入できる生命保険は、その全額が経費となる全損タイプと半分が経費となる半損タイプ、経費とならないタイプなどがあります。

全損と半損の保険は保険料が経費になりますから、上記のように経費の増加分が利益を圧縮する効果があり、結果法人税を減らすことになります。

例えば、3,000万円の利益が出た会社は資本金1億円以下であれば法人税率33.58%と最も高率です。

法人税は本来1,007.4万円課税されます。ここに法人保険1,000万円に加入すれば会社の利益は2,000万円となるので法人税は671.6万円で335.8万円減少します。

これは法人保険が損金(経費)として認められているからこのようになります。

法人保険は節税効果がない。課税の繰り延べになるだけ。

法人保険が満期になったり被保険者が亡くなられた時には、保険会社から高額の保険金が支払われます。

この保険金には多額の法人税が課せられることになっています。法人保険1,000万円の加入ですから、この段階でも同じ法人税率が採用され、まとめて課税されます。

せっかく、法人保険に加入して法人税を減額して長い間資金繰りなどで役に立ったのですが、保険の満期や被保険者の死亡などで、保険金が支払われることになり、決算利益と保険金が合算された利益に対して法人税が課せられます。

つまり、法人税は結局減っていないのです。支払いを先送りしただけです。これを課税の繰り延べといいます。

税金は少しも減っていません。節税とは税金そのものが減少することです。税金が減っていませんから節税とは言い難いです。法人保険は節税効果がないのです。

まとめ

法人保険を否定的な見地から解説いたしました。1部の情報誌では法人保険が節税対策として有効であることを述べていますが、それは違うのではないか、ということです。

法人保険そのものに節税効果がないことはお分かりいただけたと思います。

しかし実際の保険商品は保険料が損金扱いになることから、節税対策そのものとして情報が発信されています。

保険商品も全額損金タイプ、1/2損金タイプ、1/3損金タイプ、損金にならないタイプなど各種あり、色々な特典が加わっています。従って、法人保険の加入や選択は、企業経営上重要なポイントとなっており、それが人気と言えるでしょう。