Freeeが敗訴

Freee株式会社が株式会社マネーフォワードを被告として提起した特許権侵害訴訟について、2017年7月17日東京地方裁判所において判決が下されました。

訴訟の内容は、Freeeは2016年10月21日に株式会社マネーフォワードが提供するMFクラウド会計が、Freeeの保有する会計処理装置、会計処理方法、及び会計処理プログラムに関する特許(特許第5503795号)を侵害しているとして、株式会社マネーフォワードに対して、特許権侵害を理由とした差止め請求訴訟を東京地方裁判所に提起していました。

判決は、2017年7月27日、東京地方裁判所がFreeeの請求を棄却しました。

特許の侵害は認められないという結論です。

この判決の結果を見て、Freeeが控訴するかどうか注目されていましたが、控訴期間の3017年8月10日までには控訴されませんでした。Freeeとマネーフォワードとの協議の結果、控訴しないという判断をしたため、マネーフォワード側の勝訴が確定しました。

これがこれまでの経緯です。

訴訟の争点の整理

問題となっている争点は、マネーフォワードが自社のクラウド会計ソフト「MFクラウド会計」に2016年8月から搭載し始めた「自動仕分け機能」がFreeeの持つ同様の自動仕分け機能の特許に侵害している、というものです。

自動仕分け機能とは:インターネットバンキングの取引履歴やクレジットカードの使用履歴など、インターネットからデータで取り込める情報をソフトに読み込ませて最適な勘定科目を選んで仕訳してくれる機能のことです。

クラウド会計ソフトは現在、Freee、マネーフォワード、弥生の3社が搭載しています。

Freeeの会計ソフト「Freee」の数ある特徴の中で会計情報を自動作成できるサービスがあります。

銀行やクレジットカードの取引履歴、Web明細から簡単に帳簿作成ができる、というものです。

取引明細をインターネット上で取り込み自動で決算書、総勘定元帳などの会計帳簿が作れる、経理に時間がかからない、というのがウリになっています。

銀行やクレジットカードから取り込んだ取引データを各勘定科目で仕訳する技術が必要です。

これが特許訴訟の対象となっています。

マネーフォワードのMFクラウド会計では、会計業務を楽にする自動化として

・ 明細データの自動取得:銀行口座、クレジットカード、POSレジ、通販などの取引データを自動取得する。

・ 明細データの自動仕分け:取引明細から推測して、勘定科目を自動仕訳する機能で勘定科目の入力時間が大幅に短縮できる。

・ レポートの自動作成:毎月の売り上げ状況や損益状況をリアルタイムで把握できる。

マネーフォワードのMFクラウド会計でも明細データから自動仕訳、つまり勘定科目の自動仕訳機能がソフトに搭載されています。

Freeeは、この自動仕訳機能を2013年3月から搭載しており、同特許は2014年3月に特許登録されています。

訴訟の争点は何?

Freee側:キーワードと勘定科目との対応付けを保持する「対応テーブル」と複数のキーワードの優先順位を決定する優先ルールで自動仕訳している。

MFクラウド側:機械学習を用いて2,000万件以上の実際の取引データを学習させ、アルゴリズム(問題を解決するための方法や手順のこと)を使っている。

つまり争点は、対応テーブル+優先ルール 対 機械学習 です。

従って、マネーフォワード側は、Freeeの特許には侵害していないと主張しました。

特許訴訟の場合に見るべきポイントに特許の請求範囲(請求項)があります。

Freeeの特許公報に書かれている特許の請求項には「対応テーブルを参照して」「優先キーワードを用いて」とあります。

マネーフォワードはこうした方法で自動仕訳はしていないので特許侵害はないと主張しました。

自動仕訳の方法そのものが全く異なるとしているわけです。

結局、Freee側の主張は退けられ、マネーフォワード側が勝訴しました。

但し、Freeeは、今回の争点は上記のポイントがメインではなく、その1つ手前の段階の自動仕訳をするか、しないか、自動仕訳そのものを争点としたが、裁判の途中で出された争点のため却下されました。Freeeは、機械学習に関する特許も既に取得していました。

にもかかわらず、当初の段階では主張しなかった、裁判の終盤で主張したため遅すぎて採用されませんでした。

まとめ

クラウド会計は、まだ普及度が数%の認知度が低い状況ですが、これから急速にシェアが拡大する有望な会計ソフトです。

当然大きな収益の柱となりうるソフトであるため、訴訟による普及スピードの遅延は両社にとって得策ではありません。自動仕訳機能の方法の根本的な違いがはっきりしたことを受け、両社が相談して、控訴は行わないことで決着しています。

技術革新のスピードは益々激しくなっていますから、停滞は大きな損失となります。しかし技術革新の過程において特許侵害訴訟はつきものです。新しい技術の開発とともに他社の特許抵触、侵害には常に注意を払わなければなりません。これは技術革新の両輪と言わざるをえません。

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