シェアリングエコノミー(シェアエコ)の市場が急拡大を続けています。
政府はこの市場の拡大を受けて税制面での問題点を洗い出し新たな対策を行おうとしています。
個人対個人が、ものやサービスをやり取りするシェアエコ、市場の急拡大で課税を強化しようとするものです。個人対個人の取引が主体となっているため、それぞれの人の収入を把握するのが難しく、その仲介業者に取引情報の情報を義務化させて、課税を促進させようとするのが政府の考え方です。2018年度以後の税制改正に反映したい、としています。
そもそもシェアエコとは何か、空き部屋や空き家など、目に見えるものから、料理やDIYの代行など目に見えないものまで、個人が保有している遊休資産の貸出を、インターネットを介して仲介するサービス又はサービス会社のことです。
その代表的な業態は、例えばメリカリ、民泊、タクシーなどです。
メルカリとは、個人が使っていた洋服などをネットに出品して売買する、使用者は個人間で取引して、業者はそれを仲介する仕組みとなっていて、メルカリはその業者にあたります。
まだ発展途上にあることから、トラブルが多く、買った商品が届かない、商品が不良品、偽物だった、売上金が届かない、などがあります。
民泊は、エアーアンドビーに代表される業態です。
エアーアンドビー(Airbnb Airbedandbreakfast.com)とは、宿泊施設、民宿を貸し出す人向けのウエブサイトのことです。
本社はサンフランシスコにあり、既に世界192ヶ国、33,000の都市で80万人以上の宿を提供しています。その宿泊施設は、エアベッド、共有スペース、1戸建ての住宅、アパート、個室、城、クルーザー、荘園、ツリーハウス、テント、個人所有の島など多岐にわたっています。
予約の手数料として仲介業者が借りる人から宿泊料金の6~12%と、施設を貸し出す人から3%の手数料が必要です。
2014年5月に日本法人のAirbnb Japanが設立されています。主に海外旅行者の使用が目立ちます。
タクシーの業態にもシェアエコが参入してきます。ウーバーといいます。
ウーバーとは、専用アプリを通じて、ハイヤーを予約、使用できるスマートフォン向のサービスのことです。スマホでタクシーが呼べるサービスです。
支払いは前もって登録したクレジットカード決済、使用する車はほとんど高級車。最低使用料金800円から、としています。
日本ではまだ許可されていません。
税強化と仲介業者の報告義務化
メルカリに関する課税強化と報告義務化
ネット上のプラットフォームで不用品などの個人間売買の仲介を行うメルカリですが、既にその取引額は年間1,200億円に達する勢いです。世界のシェアエコの市場規模が急拡大していることから、メルカリの成長はさらに一段と巨大な市場へと拡大していくでしょう。
こうした市場の拡大に伴う課税強化に政府が乗り出したわけです。
メルカリのような個人対個人(C2C)の取引に課税するのは、実務的には不可能です。
個人対個人で独自に商品をネット上で売買しているわけですから、税務当局には分かりようがありません。
しかし現実的には、個人双方に利益をもたらしており、現行の税制である年間20万円以上の所得に対しては確定申告の義務があるのですが、ほとんど守られていないと見ています。
しかし、仲介業者に個人間の取引情報を報告させれば、課税が可能となります。
この取引情報報告義務化は既に1部の業態で行われていますし、通販業者や証券会社、FX会社などでは、全ての取引記録の作成と保管が義務付けられています。
民泊に関する課税強化と報告義務化
Airbnd Japanのような民泊仲介業者による2015年度での経済効果が5,207億円に達したとしております。現状はゲストの93%が海外ユーザーで、その内54%がアジアのユーザーです。
標準的な宿の提供者の収入は年間約1,222,400円で、1,383,000人の訪日外国人旅行者を受け入れた、というデータがあります。
このシステムもメルカリと同様、宿のオーナーと旅行者との個人間取引が主体です。
税務当局は、このようなシェアエコのような新サービスを当初から税制の面では想定していませんでした。市場の急拡大を背景にその新しいルール作りに梶を取り始めました。
2016年6月に東京、大阪など一部に限っていた民泊を全国で解禁しました。いわゆる住宅宿泊事業法(民泊新法)と呼ばれる法律です。ここでは、現行の旅館業やホテル業及びその他の宿泊業者との関係が示されています。
民泊が、あくまでも個人間取引であるため、課税が難しい面がありますから、ここでも課税に向けた新しい課税制度、仲介業者を登録制にし、取引実態の報告義務化などの法整備が進められています。
課税強化によって個人や企業にどのような影響があるか?
上記のような状況にあるシェアエコですが、課税強化によってどのような影響があるのでしょうか。
市場の急拡大を受けて、現在政府税制調査会で税のあり方について検討中です。
2018年度には課税方法について具体的に現行制度に反映される見込みです。
例えば、メルカリの場合ですが、現行、個人対個人での取引ではありますが、誰と誰が取引したか、売買が行われたかは、手数料を徴収していますから、取引情報は全て記録されています。
この取引情報を税務当局に全て報告すること、という報告義務化が実施される見通しです。
これによって少なくとも課税の原データが税務当局に入るわけです。
しかし、データは入っても、どの取引に、誰に、どんな方法で課税するかは簡単ではありません。
線引きが非常に難しいためです。既に生活用品は課税の対象になっていませんから、どのような課税方法になるか、現時点では分りません。
いずれにしてもメルカリで取引した利益の合計が20万円を超えたら課税される、但しどのような線引きが行われるか分りませんが、生活用品に関連する取引に対する税は免除される、かもしれません。
マイナンバーによる本人確認が義務化される可能性もあります。
とにかく、現在、違法、無許可営業、脱税が横行している状況ですから、かなり明確な課税強化方法が示されるでしょう。
民泊も同じです。課税に関しては、宿泊税がどうなるか?まず間違いなく旅館やホテルなどと同等に課税されるでしょう。そのためには、民泊業者は宿泊情報を全て税務当局に報告しなければなりません。
しかし、これも税務当局は大変です。宿泊税ばかりではなく、固定資産税、消費税、所得税などにも関連してくるからです。
民泊は民泊新法によって、どこでも誰でも営業することができるようになりました。一方、まだ年間の売上高で1,000万円を超える所は少ないですが、やがて発表される課税方法には十分理解していないと、追加の税金(過少申告加算税、不納付加算税など)が徴収される恐れがあります。
まとめ
メルカリやAirbndのようなシェアエコの仲介業者の規模が急拡大しているため、その渦中にある個人対個人の取引が拡大し、そこから発生する利益も急拡大しています。
当然、所得が一定額以上になれば税の申告義務がありますが、申告されないケースも多いようです。従って課税の不公平感が増大しますから、問題が大きくならない前にしっかりした法整備が必要です。
やがては、年間1,000万円を超える取引に発展する個人も出てくるかもしれません。そうなれば消費税の納付業者となります。
税のことに関して、知らずに取引している人も多いかも知れませんので、なるべく早くその指針が示されることが必要です。