被相続人が亡くなられ、相続が発生し、相続人が相続財産を計算してみたら相続税がかかることが判明した。

相続人はこの段階でどうすればいいのか。

相続人が大雑把に相続すると思われる財産を概算で計算してみたら、相続税基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)よりオーバーしていた。

これが判った段階から、相続人の大変な格闘が始まります。大変な作業、手続きが待っています。

まず重要なポイントは、被相続人が亡くなられた日の翌日から10ヶ月以内に相続税額を確定し申告納税を完了しなければならないことです。

相続税を納付するまでに、実に多くの作業、手続きをこの10ヶ月の中で完了させなければならないのです。

相続税がかかることが判明!どうすればいいのか?その手続きは?

相続人がやるべき手続きと手順の概略を述べます。

① 被相続人の確定:被相続人の生まれた時から亡くなるまでの戸籍を全て取得する。この戸籍によって誰が相続人なのかを判断確定する。また、銀行の被相続人の預金を引き出すときに必要です。

② 遺言書有り無し確認:遺言書がない場合は、法定相続人(配偶者、子、父母、兄弟姉妹)に全額相続される。遺言書が有る場合は、指定相続となり、被相続人の遺言によって、相続人と相続分が決まる。この中に法定相続人が入っていない場合は、遺留分という相続分が保証される。

③ 相続財産の調査:被相続人名義の不動産、現金、貯預金、株式など、及びみなし財産と呼ばれている生命保険金を調査して相続財産を確定させる。遺言書がある場合は、記載されている財産の金額を調査して確定させる。

④ 相続放棄の手続:被相続人の借金などの負債も相続人は引き継ぐことになるので、借金が相続財産より多い場合は相続放棄ができる。但しこの手続きは、相続発から3ヶ月以内と定められています。(手続きは家庭裁判所)

⑤ 遺産分割協議書:遺言書通りに相続を行う時や、相続人同士で話がついている場合は必要ありません。しかし、銀行によって貯預金を下ろすときは手続きの方法や手続き書類がまちまちです。そして不動産の名義書き換えには遺産分割協議書が必要です。相続人の間で遺産分割の内容に疑義がある場合は、相続人同士で協議しなければなりません。最悪、裁判所の判定が必要なときもあります。

⑥ 相続財産の各種手続き
・ 土地、建物などの不動産所有権移転登記:法務局  提出書類――相続登記申請書、相続人全員の印鑑証明書、被相続人の戸籍除籍謄本、住民票の除票、相続人全員の戸籍謄本、固定資産評価証明書、遺産分割協議書
・ 貯預金名義変更:金融機関  提出書類――手続き書類、相続人全員の印鑑証明書、被相続人の改正原戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本、預金通帳、遺産分割協議書
・ 電話加入権、電気、ガス、水道、NHK受信者名義変更など
・ 被相続人の所得税納税(準確定申告):相続開始後4か月以内、被相続人の1月1日から亡くなられた期日までの確定申告を相続人代表が行う。
・ 相続税納税:10か月以内に税務署に納付  手続き書類――財産目録、遺産分割協議書、登記簿謄本、固定資産税評価証明書、地積測量図、その他
・ 医療費控除による税金還付手続き:必要書類――領収書

相続は誰に相談する?

相続財産についての相談は、税務署窓口でも受け付けています。

しかし方法論のみの説明で決断は自分でしなくてはなりません。

相続手続きは多くの書類を法律に沿って作りますから、司法書士や行政書士も相談相手として有効です。

しかし上記のように、かなり専門性の高い部分が多くありますので、相談は税理士であることが望ましいです。しかも税理士なら誰でもいいわけでなく、相続税専門の税理士でなければなりません。

相続税専門の税理士は、税理士ドットコムなどでネット上でも探せますが、金融機関や商工会議所などでも紹介してくれると思います。

相続税の税理士の探し方、選び方について

相続発生後に相続税の節税は可能か?

相続税の節税対策は基本的に、被相続人の生前に行うべきものです。相続が発生してからの節税対策は、少ないです。

しかし全くないわけではありませんから、税理士と相談しながら進めることになります。

〇相続税の特例を使う:被相続人と生活を共にしていた相続人が相続税を払うと生活基盤が困難となると判断される場合は、その居住していた土地について、そのまま居住または事業を行う事を条件に相続税が最大80%減額される、という特例を使う。例えば、被相続人と共に生活していなかった長男と同居していた長女の場合は、長女の方に大きな相続を取得することにした方が大きな節税となります。しかし明らかに長男には不利な相続となりますから、話し合いが必要です。

〇土地の分割で評価を下げる:土地の評価は、基本的に使用度の高い方が高くなるようになっています。1人で相続するより何人かで分筆して相続する方が土地の形状などにより、その土地の評価額が下がりますから、相続税が安くなります。

〇配偶者控除の税額軽減の特例を使う:配偶者には1億6千万円以下又は法定相続分までは無税という特例があります。これを有効に使う方法で、配偶者の税額軽減の特例枠まで相続財産を相続させます。すると相続税は全体的に大きく下がってきます。しかし、2次相続と言って、配偶者が被相続人になった場合は、それを相続する相続人に大きな負担がかかりますから、1次相続と2次相続の相続金額をどこで折り合いをつけるか綿密な計算が必要です。

まとめ

被相続人が亡くなられると相続が発生します。相続人は大きな精神的なダメージを受けている場合が多く、相続手続きへの取組をスタートさせるまでに時間がかかります。しかし法律は容赦がなく、相続が発生すると、そこから10ヶ月以内に相続税を確定させ納税完了しなければなりません。

しかも、上記のように、かなりの作業、手続きがあります。とても1人でできるような作業ではありません。相続税専門の税理士に依頼することが望ましいです。頼まれた税理士もかなり集中的に手続きを行っていかなければ10ヶ月以内での申告は難しいです。

さらに、相続人同士の相続財産分割協議での争いがあると、最悪です。納付期限を超える可能性が出てきて、余分な税金を払わなければならないかもしれません。

相続税の節税対策は、生前対策に大きな有利性があります。被相続人は、なるべく早くからの相続対策を考えるべきです。