長年にわたってお付き合いしてきた税理士を変更したい。その理由は色々ありますが、最も多い理由は、事業主とその税理士、その相性が合わなくなってくる場合です。

会社は年度を追うごとに成長したり、新規事業の追加をしたり、あるいは業容が低迷したり、変遷を繰り返していきます。経営環境もどんどん変わっていきます。

経営アドバイサーの1員として、会社内部でしっかりポジションを持っていた顧問税理士も時代の変化とともに前進していかなければならないのですが、親の代からお付き合いしているような年配の税理士は、こうした社会の変化に意外と無頓着な先生が多いようです。

こうなると事業主との意識の差が歴然と表面化するようになり、事業主は、その税理士を変更したいと思うようになるわけです。こうした場合の税理士の変更はかなり難しいです。会社の歴史や業容の移り変わりをつぶさに知っていますし、一面会社の役員のような存在ですから、簡単ではありません。

一般的なNG税理士、気楽に相談できない、高齢になってきて対応が悪くなった、高額な顧問料を取る、試算表などの提出が毎月遅い。といった状況がある税理士なら顧問契約を解除します、と言えばその段階で簡単に変更可能です。

参考:税理士を変更する基準 ~こんな兆候が見られたらNG税理士~

しがらみのある税理士変更は大変

先代社長が公私にわたって付き合いのあった税理士を変更することは、こうしたしがらみがあって簡単ではありません。

契約解除の通知をすれば当然、どうして、と問い詰められるでしょう。長い付き合いをしてきたのに何故だ。替わったばかりの事業主は返事に窮するかもしれませんが、これから先の会社の運営では今の税理士では、とても対応できないし、年齢差もあって、相性が第一合わない。かなり悩むと思いますが、ここは毅然とした態度で、新時代に向けて税理士も私に合う税理士に替えたい、とはっきり言う必要があります。

また小手先ですが、親戚に税理士になった人がいるから、応援したい。私の協力者から若い税理士を紹介された。友人の税理士と新しい事業の展開を考えている。など他にも色々ありますが、ここは角を立てることなく穏便な契約解除の申し渡しをしなくてはなりません。

税理士との契約解除は新しい税理士が決まってから 税理士移行手順

税理士との契約解除はいつでもできますし、法律的な違反行為でもありません。自由です。

しかし、今の税理士から新しい税理士に移行する手順は慎重を要します。

1、 今の税理士との契約解除は、事前に新しい税理士が決まってからにしましょう。今の税理士との契約を解除してから新しい税理士を決めようとすると、税理士が決まるまで時間がかかった場合は、会計業務に空白期間が生じる恐れがあります。企業は日々連続していますから、絶対に会計業務も連続していなくてはなりません。こうした時期に税務調査などが入ったら最悪です。

2、 新しい税理士との契約は、依頼する業務の内容を明確に決めておきましょう。会計の流れをよく分析して、何を契約対象にするか、はっきりしなくてはなりません。伝票類のパソコン入力は自社で行うのか、試算表まで自社で行うのか、税理士のコンサルタント業務は月に1回か、3ヶ月に1回か、その他オプション業務は何か、など具体的にしておきましょう。昔の税理士の顧問契約はかなり大雑把のものが多いです。

3、 今の税理士の顧問契約の契約書を確認しましょう。中には契約解除は3ヶ月前と記載されていて、そうでない契約解除は違約金が発生する場合があります。そして書類などの保管契約項目がある場合もあり、財務諸表の帰属が明記してある場合もあります。

4、 契約解除後速やかに、会社が預けてある、請求書、領収書、各種通帳、給与関係書類、仕訳帳、総勘定元帳、試算表、申告書などは返却してもらうこと。扶養控除申告書の書類を含めて必ず返却を求めてください。最悪、総勘定元帳、申告書だけは返却してもらわないと、新しい税理士の手間がかなりかかります。ほとんどの会計事務所ではコンピューター化が進んでいますからデータを送信してもらってください。

一番いい方法は、なるべく早く新しい税理士を決めて、会計書類、データなどを計画的に返却してもらうことです。新しい税理士と相談しながら行っていくといいでしょう。但し決して契約解除が分からないようにしなければなりません。

5、 変更の時期はいつでもよいですが、会社の事情によっては、例えば節税対策を今期は集中的にやりたいという意向がある場合は、決算月より半年前くらいに税理士変更を行い、新しい税理士の下で税務申告を行う方法。あるいは決算を終えてから税理士を変更するなどの方法があります。会社の事情を優先して、変更時期を決めるようにしましょう。

まとめ

人柄がよく、税理会計の知識に優れ、年度で替わる税務体系についても熟知しているような税理士は多くはありませんが事業の内容が時代とともに変化していくと、それについていけない税理士もいます。

税理士は会社の財布を握っていますから、もうぼつぼつ辞めて欲しい、とは言いにくいですが、相性のいい優秀な税理士と新しい経営に挑戦していくという気概でもって、きちんと今の税理士に契約解除を伝えましょう。税理士交代も新しい事業へのステップです。

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