生命保険料は社会保険料と同じ保険料ですが、その全額が所得税の確定申告での所得控除額にはなりません。それは、社会保険料が国が国民に負担をしいたものであるから社会保障という意味で所得税を減らすという目的があります。

これに対して生命保険は個人の任意で加入できるものです。経済的な理由で生命保険に加入できない人もいることから公平性のためにその全額を控除しないという考えがあります。また同時に国民の老後の貯蓄を増やす一環として所得税を減らすという目的もあります。

1.所得税における個人年金保険と生命保険と介護医療保険のちがい

①個人年金保険
老後の生活のための貯蓄的な要素が大きい保険のことです。掛金が老後の年金となるということです。老後というのは一定の年齢に達したらということになります。それまでに死亡した場合は、死亡保険料として給付されます。このときは、生命保険金を給付されたという扱いになり、相続税の財産と成り、相続税が課税されます。一定の年齢に達したときに受け取った毎年のお金は年金収入として雑所得となります。新契約と旧契約があり、新契約では最高4万円、旧契約では最高5万円の控除が受けられます。

②生命保険
死亡保険、医療保険、介護保険、がん保険などが生命保険となります。生命保険料は所得控除の中で生命保険料控除の額になります。そして実際に被保険者が死亡したときは、保険料を被保険者が支払っていた場合は、保険金を受け取った人は、雑所得ではなく、被保険者の相続財産として相続税が課税されます。このとき個人年金保険が生命保険扱いになる場合があります。それは生命保険の要素がつよい個人年金保険の場合は、個人年金ではなく、生命保険料として所得控除の生命保険料控除が適用されます。新契約と旧契約があり、新契約だと最高4万円、旧契約だと最高5万円の控除が受けられます。

③介護医療保険
生命保険は死亡後の遺族のための保険、個人年金保険は老後の生活のための保険でした。平成24年から介護医療保険も加わりました。この保険は医療保険になります。医療費に備えた保険ということになります。

2.所得控除となる一般の生命保険料控除の適用をうけるためには、保険金の受取人は他人ではダメ

生命保険料控除に計上するためには、保険金受取人を納税者本人または親族としないといけません。親族は3親等以内の姻族または6親等以内の血族です。ですから愛人などを保険金受取人とした場合は生命保険料控除にはなりません。親族は同一生計でなくても構いません。

3.個人年金保険料として、生命保険料控除を計上するためには特約保険料はNG

個人年金保険を契約したとします。心配だからがん保険も特約でつけたとします。特約というのは主となる保険に付属でつけるものです。ですからこの場合は個人年金という老後の生活の資金のための貯蓄の要素と、がん保険という生命保険の要素を持った保険ということになります。

このとき、所得税では特約部分の生命保険の要素が強い保険料については、個人年金保険料とはせずに、生命保険料とします。申告書の生命保険料控除の欄は同じものの計算方法が違うということになります。個人年金保険料の対象保険料とできるのは、年金の受取人を納税者自身または配偶者だけとなります。子はNGです。

4.支払った保険料が多いほど控除される額が減る

支払った保険料が多いほど、控除される額も多いと思いませんか?ですが、所得税では支払った金額が多いということは、それだけ高い保険料を払えているということで、その人が税金を支払う力があるとされます。ですから、あえて控除額を増やさないのです。

4-1新契約と旧契約で計算の仕方がちがう

新契約と旧契約というのは保険の契約をした時期によって分けられます。計算式についての考え方を新契約を例にみていきましょう。

4-1-1新契約の場合

支払った保険料を2万以下から8万超えまでの段階にわけます。

①2万以下の場合:支払った保険料の全額が生命保険料控除の対象となります。これは社会保険料と同じく生活保障の点から全額を控除しています。

②2万円超から4万円以下:1万円+支払保険料総額の2分の1となります。つまり2万円に達するまでの部分が①により半額控除で1万円、2万を超え4万円までの部分については半額が社会保険料控除額となります。

③4万円超8万円以下:支払保険料総額の4分の1 + 2万円となります、つまり、2万円までは①より全額控除、2万超え4万までが②より2分の1控除、4万超8万までの金額についてはその4分の1が社会保険料控除額となります。

④8万超:4万円となります。つまり①により2万円までは全額控除。②により2万円から4万円までは2分の1の控除額。③により4万円から8万円部分については支払った保険料の4分の1の額が社会保険料控除額となります。つまり8万を超える場合は支払保険料をいくら支払っても、8万円を超える部分の額については控除額が0円ということになります。

5.契約者貸付金は支払った保険料としてカウントされます。

未払いの保険料は支払保険料としてカウントされません。ですが契約者貸付金制度を利用している場合、契約者は保険会社から借入金をして保険料を支払ったことになります。ですから未払いでないので支払保険料としてカウントされるのです。

6.剰余金の分配があったとき

個人年金保険などについて、剰余金の分配があったときはその剰余金の年間の分配額総額は、支払保険料から控除された額が、実際にしはらった保険料となります。いかがでしょうか?社会保険料とちがい、生命保険料控除は税金を支払う能力がある場合は、控除額もより小さくなるというシステムとなっています。

<国税庁>https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1140.htm