法人の不動産投資事業の節税方法は個人のそれとは大きく異なります。不動産投資事業の規模が大きくなってくると個人から法人へと移行していく人が多いです。

しかし、この個人から法人への切り替えの時期がよく問題となります。一般的に家賃収入が年間1,000万円を超える時点がいいと言われていますが、明確な根拠はありません。家賃収入が増加しても各種の経費の増加が著しく、利益が出る状態ではない場合はそれどころではありません。

法人化のタイミングを考えるのに適した1つの基準があります。それは税率の差です。

個人が納める所得にかかる税金は所得税、法人が納める所得にかかる税金は法人税です。

名前が違うだけです。

個人は、所得税と住民税がかかり、合計の課税所得が900万円を超えると税率は約43%(900万円以下は33%)です。

法人は、法人税と住民税(均等割り約7万円)で800万円を超えると税率38%(800万円以下25%)です。

つまり、個人と法人の税率が逆転する段階が存在します。それは課税所得900万円です。課税所得が900万円を超えると個人の所得税+住民税の方が法人税より高くなります。従ってこの課税所得900万円が分岐点となります。重要な節税ポイントです。

但し、サラリーマン家主の場合は、既に給与所得があるので、給与所得プラス不動産所得となると、不動産所得が増加を始める段階で900万円を超えている場合があるでしょう、従って相当早くからつまり不動産投資事業を始める時から法人化への移行を行なう必要があります。

個人と法人ではそもそも何が違うか?(法人にすることによる節税方法)

上記のように個人の所得税の税率と法人の法人税の税率が異なっていることは分かっていただけたでしょうか。他にも多くの違いがあります。

損失が発生した時の繰越期間

個人の場合、不動産所得が赤字で他の所得を合算しても赤字の場合、その赤字額は3年間繰越できる。法人の場合は、赤字額は9年間繰越できる。とあります。

繰越できるということは、その赤字で次期に黒字を相殺できるということです。

売却益の税金

個人の場合、不動産を5年以内に売却した場合(短期)、所得税率30%+住民税9%で計39%,
5年を超えてから売却した時(長期)、所得税率15%+住民税5%で計20%です。
個人の場合は、売却益を他の所得と合算できません。
法人の場合は、売却益は他の所得と別計算とはならなくて合算となります。

このことから、短期で不動産を売却した時は、法人税の方が安く、長期(5年を超える)で売却した時は、個人の所得税率の方が安い、ということになります。

減価償却費

個人の場合は、減価償却は強制償却です。決められた計算方法で計算した年間の減価償却費はたとえ決算が赤字であっても全額経費として計上しなければなりません。

法人の場合は、決められた計算方法で計算した年間の減価償却費はその減価償却費の金額の範囲内で、経費にする金額を自由に決めることができます。年によって償却費の金額が変わってもよいことになっています。

保険料の扱い

個人の場合、いくら高い保険料を払っていても、生命保険料控除の上限額しか所得から控除されない。法人の場合は、必要な条件が充足していれば、保険料全額が控除されます。

生命保険料控除の限度額は120,000円です(契約時期により異なる)

経費

費用計上できる範囲が、個人の場合は、狭く非常に厳しいですが、法人の場合は、非常に広く、ほとんど経費として認められます。

不動産投資事業を法人化した時のメリット、節税方法

不動産投資事業を不動産管理会社のような法人化にすると、個人ではできない節税やメリットがあります。

〇人件費

個人の場合、青色事業専従者給与として配偶者に給料が払えます。但し他からも収入がある場合はできません。

〇所得の分散化

法人が不動産物件を所有すれば家賃収入が発生します。家族にその法人で発生した収益を役員報酬として支払いが可能です。所得の分散化により、税率が大幅に安くなります。家族みんなで法人会社の下で事業経営をすれば最大の節税対策となります。

〇青色申告特別控除

複式簿記により青色申告すれば、最大65万円、控除額10万円が所得から控除される。税金対策です。

〇消費税還付

消費税は土地にはかからず、建物には課税されます。しっかり事前に準備して還付申告すれば税金が還付されます。但し計算方法が非常に複雑で税理士に依頼すべき項目です。

大雑把に言いますと、年間の預かり消費税より支払消費税の方が多い場合、その差額が還付されるという税制です。大切な節税方法です。

〇その他

太陽光発電設備を取り付けるとグリーン特別減税や特別償却などがあり節税となります。

また、1000万円特別控除といって、平成21年、22年に購入した土地を取得してから5年を超えて売却した場合、1000万円の特別控除があります。この2年間で取得した土地であれば、売却した益金が出ても、その益金から1000万円を控除してくれるものです。

まとめ

このように、法人は個人と比べて多くの利点があり、節税の方法も多く、範囲も非常に広いです。

当然の話ですが、節税は発生した所得に対してかかる税金です。節税のための不動産投資はあり得ません。節税のためにわざわざ経費を多く計上して所得を少なくして税金を安くすることはナンセンスです。健全な商行為は毎年きちんと所定の利益を上げて、税金を納めることです。

そこで初めて、金融機関などから信頼を得て、再融資が可能となり、さらに事業が発展する図式ができあがるわけです。

個人からスタートした不動産投資事業であっても、できればなるべく早く法人化を目指した方が、大きな節税が得られることをご理解いただきたい。

また、不動産投資事業の法人化による節税の方法はたくさんあります。そして多岐にわたっていますから、できれば税理士から情報を得て、積極的に進めていくべきです。情報を知らないということが最も大きな不利益です。

参考サイト: 不動産投資の法人化のメリットとタイミング ~サラリーマンでも社長に?~