訪日外国人が4,000万人!

訪日外国人の増加が著しく増加しています。政府目標の年間2,000万人は2016年に到達し、目標を4,000万人に引き上げていますが、実行可能な範囲としています。

この訪日外国人の急増を受けて、旅館、ホテル業界も躍起になって受入数を増加させようと努力していますが、種々の規制を受ける旅館業にあっては、簡単なことではありません。

種々の規制とは、旅館の新築、改築、増築に関しては、旅館業法で定められた客室数や、客室床面積、公衆衛生設備、トイレ、入浴設備などの厳しい規制があることです。

今後益々宿泊部屋数の不足は深刻な状況へと転じていきます。

東京オリンピックに向けて訪日外国人が急増していることにより、宿泊施設の増強は急務です。

これに対応して宿泊施設を増やす目的で、民泊新法(住宅宿泊事業法)が生まれようとしています。

民泊新法は、旅館やホテルなど現行の旅館業法に基づいた宿泊施設ではなく、一般の住宅で宿泊事業を行うことができるようにする、新しい法律です。

しかし、そのまま民泊大歓迎で規制もなしで許可すると、現行の旅館やホテルは既得権益が守れません。

民泊が現行の旅館やホテル業界の利益を損なうことになります。競合関係は避けたい訳で共存共栄でなければならないわけです。

むしろ現在の旅館やホテルを補完する機能としての存在にしたい、という思惑があります。そのため民泊には年間営業日数180日以下などの規制が付加されています。

こうして民泊新法の成立は最終段階を迎え、2018年6月には施行スタートの予定です。

現行法で民泊を行う場合は2通りの選択肢があります。

〇旅館業の簡易宿泊所として許可を取る。

〇特区民泊――大阪府や東京都大田区に限定した特区民泊を活用した許可を取る。

そして、ここに民泊新法が加わりました。

民泊新法の概要

民泊新法は、住宅宿泊事業にかかわるものを3つに分けています。

① 住宅宿泊仲介業者:マッチングプラットフォーム運営会社(Airbnb、HomeAway、Airstairなど)のことで、観光庁の管轄で監督し事業者は届出、登録の義務があります。

② 住宅宿泊事業者(民泊ホスト):都道府県知事が監督し、事業者は届出だけで営業ができます。但し年間営業日数は180日以内限定です。

③ 住宅宿泊管理業者(民泊運営代行会社):国土交通大臣が監督し、業者が登録だけで行う事ができます。

民泊新法の特徴

①住宅地でも民泊が可能となった

民泊は、あくまで住宅という位置づけです。今までは宿泊制限として住宅地には作ることができませんでしたが、この新法では住宅での営業は可能としました。但し、この民泊の許可は各都道府県知事です。各自治体による独自の条例により規制が新たに加わったり、場合によっては営業自体が難しくなる場合があります。

②宿泊営業日数は180日以下

民泊新法の最大の特徴は年間の営業日数を180日以内としていることです。そして民泊を家主居住型と家主不在型に分けて、一定の要件(180日以内)の中で住宅を貸し出すことを認めることです。但し、年間宿泊限度を180日以内としていますが、自治体によっては、条件をさらに厳しくして、これよりさらに引き下げた宿泊限度数にする可能性もあります。家主居住型も家主不在型も都道府県知事への届出が義務付けられます。

家主不在型(投資民泊とも言う)については、住宅宿泊管理事業者への管理委託が必要で、その管理者は国土交通大臣への登録が義務付けられています。

③登録、届け出はインターネットだけでOK

民泊宿泊事業者(民泊ホスト)、住宅宿泊管理業者は所轄の自治体にインターネットから届出を行うだけで営業ができます。

④民泊は宿泊最低限度制限がない

特区民泊は、2泊3日以上という制限がありますが、民泊ホストにはそれがありません。

住宅専用地区での営業も合法的に可能となりましたが、宿泊限定数を超過するような行為があった場合は業務停止処分となりますので注意が必要です。

住宅宿泊事業者(民泊ホスト)が守るべきルール

地方自治体により異なりますから、十分に確認してから民泊の準備にかかってください。

  • 使用者名簿の作成、保管の義務
  • 使用者に対する注意事項の説明、玄関への掲示、苦情処理対応
  • 集合住宅の場合、管理規約に民泊禁止事項がないこと
  • 賃貸借の場合、賃貸借契約書に民泊禁止事項がないこと
  • 警察、税務署、自治体への情報提供を行うこと

などが、それぞれの自治体でルールがあり、これが優先します。

まとめ

民泊新法は、2017年6月1日衆議院で、6月9日参議院でそれぞれ可決成立し、2018年6月に施行スタートの予定です。いよいよ始まります。

民泊新法で、民泊仲介業者は堂々と営業ができるようになりました。従来は一般の住宅で宿泊事業を無届でやっていたと思われる民泊ホストがたくさんいました。

住民とのトラブルや違法行為も頻発していましたので、それらが減少すると思われるからです。今まではいわゆるグレーゾーンでの営業という位置づけでした。

民泊ホストには宿泊数180日以内の制限がかかりました。住宅地での営業も可能となっていますが、これはビジネスとしては大きな障害です。1年の半分が営業できないわけですから、収益を上げようと思うと簡単ではありません。

民泊を始めようと思うと最低限の投資が必要となります。しかしこの制限で投資効率は極めて悪いものとなります。従って民泊ホストがビジネスとして通年で営業する場合は、一段と工夫を加えないと、成り立っていかない恐れがあります。

既に、民泊+マンスルーマンションや民泊+ホームシェアなどが考えられています。

しかし1つの新しいビジネスではあります。また住宅宿泊管理業者(管理代行業者)も1つの新ビジネスです。

民泊新法が施行されれば、この他にも新しいビジネスが考案され、新しい市場ができると期待されています。

このように問題の多い民泊新法ですが実際に施行されますと、昔からの宿泊業界(旅館、ホテル)も変わらなくてはなりません。影響も大きいでしょう。

民泊に180日規制があるとは言え、全く新しい競合相手が出てくるわけです。地方や一部の観光地では、お客の争奪戦が起きるでしょうし、オリンピック以後では、宿泊施設の過剰となる地域が出てくる可能性もあります。

一方、民泊新法の施行を前にして、地方自治体の対応への影響も出ています。

自治体で独自のルールづくりが可能となっていますから、京都市では新ルールを作ると言っていますし、長野県軽井沢町では、民泊そのものを禁止する条例案が発表されています。新法施行にはしばらく見守る必要があります。