所得税法には損益通算というものがあります。損益通算とは、10種類の所得のうち、損失が生じた場合は、その損失は他の所得で儲けがある場合、その儲けを減らす要素として働くことができるというものです。他の所得を減らすこととできるのは損失は次の4種類だけになります。

(1) 不動産所得

(2) 事業所得

(3) 譲渡所得

(4) 山林所得

どうして10種類のうちの他の6種類は損益通算の対象となる損失にならないのでしょうか?それではみていきましょう。

利子所得が損益通算の対象とならない理由

利子所得は収入金額がそのまま所得になります。つまりその収入を得るための投資となるような支出がいらないからです。ですから必要経費が0になります。その結果損失がでるということはありません。

給与所得、退職所得が損益通算の対象とならない理由

給与や退職金は社会保険料などがその収入を減らす要素になっています。このとき、社会保険料というのは国民の義務であり、給与そのものを得るための投資という訳ではありません。ですから、これらによってマイナスが生じたとしても、そのマイナスは給与からでたマイナスではないということになるので、損益通算の対象となる損失にはならないのです。

一時所得が損益通算の対象とならない理由

一時所得というのは宝くじやクイズの懸賞金など、その性格が趣味、娯楽性がつよいものです。ですから、損益通算の対象にはならないということになります。

雑所得が損益通算の対象とならない理由

雑所得は趣味による所得も入っています。ですから一時所得と同様に娯楽性のつよいものは損益通算の対象にはならないということになります。

損益通算で大事なのは、損失となる金額と損失によって減らされる所得

損益通算の対象となる損失は10種類のうち4種類の所得からでた損失だけだということがわかりました。これと同様に、損失によって減らされることができる儲けという所得部分についても実はすべての所得が減らされることができるという訳ではないのです。損失となる金額について、損益通算の適用可能となる損失とそうでない損失があったように、損益通算で損失によって減らされることができる所得においても損失によって減らされることができる所得とそうでない所得があるのです。

租税特別措置法にかかわる所得は損益通算で減らされる所得にはならない

所得税の所得には10種類の所得がありました。この中でさらに細かく分けられ、そのうちの一つに、租税特別措置法が適用される所得というものがあります。

●租税特別措置法が適用される所得

・土地建物を譲渡した場合の所得:このことを長期譲渡所得、短期譲渡所得と呼びます。

・株式等を譲渡した場合の譲渡益という所得:譲渡所得に含まれる所得になります。このことを株式等にかかわる譲渡所得と呼びます。

・上場株式等にかかわる配当所得の金額:配当所得に含まれる所得になります。

・先物取引に係る雑所得等の金額:雑所得に含まれる所得になります。

・山林所得の金額:10種類の所得のうちのひとつです。

・退職所得:10種類の所得のうちのひとつです。

これらの租税特別措置法の所得は、他の所得よりも税率などで優遇されています。ですから、損益通算は適用されないということになります。損益通算は租税特別措置法の所得以外の所得が損失によって減らされる所得となるということになります。

いかがでしょうか?損益通算で大事なのは減らす損失と、減らされる所得の分類です。それをおさえれば損益通算はクリアです。

<国税庁>https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/2250.htm