今回は所得税における合計所得金額と課税標準の合計額の違いについて、親族や控除対象扶養親族とともにみていきましょう。

1.所得税での控除対象扶養親族とは?

所得税には扶養控除というのがあります。扶養控除というのは所得を減らす要素となる人的控除部分のことです。生活している上でその人の状況によって控除額が違っています。このとき控除対象扶養親族であることという条件があります。扶養親族とともに見ていきましょう。扶養親族は民法上では配偶者と3親等内の姻族と6親等内の血族ということになっています。所得税では人的控除をする場合はこれらの人に加えて里子と養護受託老人も加えた人達を控除対象扶養親族として、人的控除をしています。

2.所得税の人的控除とは

所得税の人的控除とは

  1. 障害者控除
  2. 寡婦(寡夫)控除
  3. 勤労学生控除
  4. 配偶者控除
  5. 配偶者特別控除
  6. 扶養控除
  7. 基礎控除となります。

これらは所得税の税率を乗じる前の額を減らしてくれる要素となります。

3.親族とは?~範囲と具体例

3親等以内の姻族、6親等以内の血族ということになります。姻族というのは婚姻によってできていく関係のことです。配偶者の両親や兄弟やその子供達ということになります。また血族と姻族をカウントするときは一度親をカウントしてから兄弟に戻るということをします。ですから配偶者の兄弟はまず、配偶者の親が1親等、それから兄弟にもどり2親等ということです。

ですから3親等内の姻族というのは①配偶者の父母(1親等)→祖父母(2親等)→曾祖父母(3親等) ②父母(1親等)→配偶者の兄弟(2親等)→配偶者の兄弟の子供(3親等) ③配偶者の父母(1親等)→祖父母→配偶者の父母の兄弟(3親等) ④配偶者の父母→祖父母→曾祖父母の4種類ということになります。

4.血族とは?

血族の6親等はかなり広範囲になります。

①父母→祖父母→曾祖父母→高祖父母→高祖父母の父母→高祖父母の祖父母 これらは本人にとって父母以後すべて自分よりも世代が上です。このような血族を直系尊属といいます。

②子→孫→曾孫→玄孫→来孫→昆孫 これらは自分よりも世代が下ですから直系卑属といわれています。縦に広がるのが直系、横に広がるのが傍系です。

③父母→兄弟姉妹→姪甥→姪孫→曾姪孫→玄姪孫

このようにまだまだ様々なバージョンがあるもののこれくらいにしておきます。兄弟は2親等ではなく、まず親に行き、それから戻るということが基本です。傍系は直系尊属に一度渡ってから戻るということになります。

5.同一生計親族とは?

生計を一つにするということです。生計を一つにするというのは納税者に生活するうえで経済的負担をしてもらっている事です。その場合、生活をする上での経済的負担をしてもらっている人は、納税者と生計を一つにするといい、親族である場合には同一生計親族ということになります。

6.控除対象扶養親族とは?

所得控除では控除対象扶養親族であることという条件が、扶養控除にでてきます。扶養控除を受けるためには納税者は控除対象扶養親族と生活を一にしていないといけません。親族は3親等以内の姻族と6親等以内の血族でした。これらの人に加えて、里子と養護受託老人を加えます。これらの人との生活を一にすることに加えて年齢と所得についての制限もあります。年齢が16歳以上、合計所得金額が38万以下であること。これらをすべて満たした人が所得税の控除対象扶養親族にあたります。

7.合計所得金額と課税標準の合計額とのちがい

配偶者控除と配偶者特別控除や扶養控除では所得の条件として合計所得金額が38万円以下という条件があります。また寡婦(寡夫)控除については、子供の要件において、課税標準の合計額が38万以下である場合または合計所得金額が38万以下である子供がいる寡婦や寡夫は寡婦や寡夫控除の対象となるとあります。

どちらにも合計という単語があります。ですが微妙にちがっています。もし寡婦の子または寡夫の子が事業を営んでいる人だったとします。事業をしていく場合は年度によって利益が出る年もあればそうでない年もあります。もし損失が出た年はその損失は翌年以後に繰り越せるというシステムがあります。合計所得というのはこの損失の繰越控除額を控除する前の所得の額となります。この額が38万以下でないと対象とならないということです。

これに対して寡夫や寡婦控除における子供の条件の課税価格の合計額というのは、合計所得金額から損失の繰越控除を控除した後の金額ということなのです。ですから子供が損失の繰越控除をする場合のその子供のいる寡婦や寡夫は、所得税の確定申告をするときに寡婦控除と寡夫控除の適用を受けやすいようにしているということになります。

いかがでしょうか?社会保険料控除の一つである人的控除を適用することで課税標準を押えたいものですね。

<国税庁>https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1180.htm