相続税でそれぞれの役割を見る

〇司法書士:不動産の名義変更、抵当権の抹消、遺産分割協議書、遺言執行、遺言書の作成、遺言書の検認及び相続放棄の手続(裁判所に提出する書類作成代行)、謄本収集、他。

〇税理士:相続税対策(生前贈与対策、遺産分割対策、納税資金対策)、相続税の申告、相続財産の評価(土地家屋調査士、不動産鑑定士との連携もある)、準確定申告、遺言書作成、謄本収集、税務調査立会、他。

〇行政書士:書類作成の専門家、遺言書の作成、遺産分割協議書の作成、遺留分減殺請求書の作成、謄本収集、不動産名義変更、他。

司法書士は、不動産の名義変更が主戦場、税理士は、相続税申告が独占業務、行政書士は、書類作成(特にお役所に提出する書類)の専門家です。専門とする領域の棲み分けは厳然とありますが、実務の流れの中では、重複する部分も多くあります。

こうした各士業の役割分担を踏まえて、それぞれどの位儲かっているのか、又は、それぞれの士業の将来性はどうなのか、を見ていきましょう。

司法書士、税理士、行政書士の年収は?

〇司法書士:平均年収は、700万円くらい、というデータがあります。かなり大雑把なデータです。1,000万円以上の収入のある人もいっぱいいますし、2~300万円の人もいます。

〇税理士:平均年収は、700万円前後くらい、というデータがあります。年間数千万円稼ぐ人もいれば、200万円以下の人もいます。

〇行政書士:平均年収は、520万円~600万円くらい、というデータがあります。飲食店の営業許可、土地使用の許可、相続税関連の手続業務がメインですが、収入の面において、他の司法書士、税理士より年収が少ない数字となっています。しかし、行政書士で年収が1,000万円超える人は、この分野でも同じようにたくさんいます。

行政書士は、業務の幅が広く、努力と工夫次第では、伸びる余地がいっぱいある分野です。収入が伴う活躍のフィールドが広い分野です。

行政書士だけでなく、士業は資格業務で、資格がないとできない分野の仕事をしています。

当然ですが、資格の上に胡坐をかいていてお金が入ってくるわけではありません。専業領域があるというだけですから、創意、工夫、努力の基本的なスタンスがなければ収入は伴いません。

上記の年収データはあくまで参考値ですが、少ない人とたくさんの収入の人との差が大きく出ています。

その原因の1つは、年収の多い人は独立開業型に属しており、年収の低い人は、ほとんど勤務型です。この2つの働く形態が一緒になって統計がされているため、このようなデータとなっているわけです。そのような意味では、この平均年収はあまり参考にならないかもしれません。

勤務型の士業の人達は、資格があっても、どこかの事務所に入所することから始まりますが、一様に初任給は20万円前後です。事務所のスタッフとして数十年勤務してようやく、年収700万円くらいになる人が多いでしょう。少なくともどんなに経験を積んでも年収1,000万を超えることは難しいかもしれません。

一方、独立開業型で、自分の事務所を持つ人は、どの士業でも高額な年収を得ている人が多くなります。その代り、知恵と工夫と行動力で人の何倍も働かなくてはなりません。土日の休みもなく、残業が苦になる人は完全に不向きです。高収入を得ている人の働き方は、とにかく勤務時間が長く、努力が半端ではありません。

士業は、まだまだ働き方によってはチャンスの多い職種ですから、新規参入組も多く、ますます激戦を強いられます。

司法書士、税理士、行政書士の将来

現在、司法書士は全国に27,000人くらい、税理士は76,000人くらい、行政書士は43,000人くらい、と言われています。資格試験の難易度は、(公認会計士)-税理士、司法書士―(社労士)-行政書士の順で、受験合格倍率で見ると、司法書士が3.2%、行政書士が10%位で、税理士が15.8%となっています。合格率だけ見れば司法書士試験が最も難しいと言えますが。いずれも難関試験であることは間違いありません。

こうしたごく限られた合格者ですが、数字で合格者数を見ますと、司法書士で毎年700人くらい、税理士で6,900人くらい、行政書士で4,000人~5,000人くらいの人達が有資格者として世に出てきます。

実は、司法書士も税理士も行政書士も、既に過剰状態にあります。にもかかわらず、上記の合格者数が世に出てきますから、さらに一段とお客さんの奪い合いという競争が激化します。

少子高齢化が叫ばれて久しいです。人口は確実に減少傾向にあります。

さらにマイナンバー制導入により、各種の役所の手続もオンライン化で簡略化されるようになります。代書系企業と言われるこうした士業の事務所では、これからさらに淘汰の時代へと突入していくことになります。

まとめ

年収で見ますと、行政書士が他の士業より少ない傾向にありますが、創意工夫と努力で新機軸を打ち出しながら活発に営業活動している事務所は、どの士業でも、口では厳しくなったと言っていますが、繁忙して儲かっています。コンピューターによる会計ソフトが出始めた時、これから税理士の仕事は衰退していくだろうと言われていましたが、クラウド会計が主要になった現在、どうでしょうか税理士さんの数が減りましたか。減っていません。税理士さんの業務がより多角化して、業域が逆に広がっているのです。

世の中の状態の変化は上記のように、人口減少により事業所の数も減少しますから、益々士業の世界も競争激化は避けられません。将来性ということになると、他の企業、業種と同様に明るさはありません。ただ、資格をとったが、サラリーマンとして生きていくか、独立開業型でいくか、は重要な決断です。

他の人より多くの収入を得たいのであればリスクを恐れず、果敢に独立開業の方針でいくべきです。まだまだ発展の余地が十分に認められる業界であり、挑戦意欲のある人だけが受け入れてくれる世界です。

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