仮想通貨の税金解説 ~損益通算ができないとは?今後認められるのか?~

毎年2~3月といえば確定申告の時期。今年は特に昨年の仮想通貨フィーバーで利益が出ている人が多く、確定申告が必要な人が増えそうです。

もし、申告が必要でありながら怠ると脱税とみなされ重加算税が課されることに……。

一方で他の所得と損益通算が可能なら多少納税額を減らせる可能性もあります。

そこで今回は、仮想通貨に関する確定申告の中で、損益通算について具体的に解説します。

国税庁による仮想通貨長者課税強化の動きに要注意

確定申告の時期を前に、国税庁が仮想通貨売買で多額の利益を得た人の課税を強化する方針を打ち出しました。

なにしろビットコインを例に取っても、2017年初頭の1Btc10万円台から12月には200万円台まで20倍以上の高騰を記録したのですから、多くの仮想通貨長者が出たのは間違いありません。

それらの人が税逃れをしないよう、国税庁が取引所の協力を得て取引記録を閲覧し、データベース化する方針です。

仮想通貨長者というほどの額ではなくても、ある程度の利益が出ている人には心配な動きではあります。

相場があってないような骨董品を売ったならいざしらず、仮想通貨は電子取引ですので、すべて履歴が残ってしまいます。必ず申告するようにしましょう。

申告する所得の種類ですが、仮想通貨取引を事業として行なっていない限り、利益はすべて「雑所得」となります。

給与所得者の場合は、給与以外の収入が合計で年間20万円以上であれば確定申告が必要になります。

この場合、合計でという点が問題で、仮想通貨の利益が18万円でも、オークションなどの利益が2万円以上あれば申告の対象となります。個別に20万円以上ではない点に注意が必要です。

仮想通貨の損益通算は可能か?

では、そもそも仮想通貨の損益通算は可能なのでしょうか。

上記したように仮想通貨の売買で得た利益は雑所得となりますので、残念ながら現状では損益通算はできないことになっています。NISA(少額投資非課税制度)口座内での損失を損益通算できないのと同じ理屈です。

大幅黒字の翌年赤字になったらどうなるのか?

さて、損益通算できない場合、一番心配なのが今年大幅黒字で所得税が発生し、翌年は赤字転落で税金が払えなくなるケースです。

詳しくシミュレーションしてみましょう。

【仮想通貨売買と納税シミュレーション】Aさんのケース
・2017年に1Btc50万円のビットコインを10単位購入。同年200万円になったところで天井圏と判断し、すべて売却。
(200万円×10)-(50万円×10)=1,500万円の利益。

・Aさんの2017年分の給与所得が500万円だったので、総所得は2,000万円。これに対する税率区分は40%で、控除額が276万6,000円となります。(2,000万円×0.4)-276万6,000円=523万4,000円。実に利益の約3分の1にあたる500万円以上を納税しなければなりません。

・そしてAさんはビットコイン相場が急落し、160万円になったところで再投資のチャンスと判断し、売却額のほとんどを注ぎ込み12単位1,920万円で購入。短期で200万円への反騰相場を期待しての買いでしたが、意に反して100万円に急落。

評価損を抱え、もったいなくて売るに売れず、3月の確定申告時に納税するお金が無い!という困った事態に。こんなことなら2,000万円で売った時点で500万円は別にとっておけば良かった……。

・このケースで納税するには2つの方法があります。1つは、ビットコインは反騰するのを待って継続保有し、他の預貯金を解約して納税する。もう一つは12単位の内5単位を500万円で売却して納税する。この2つですが、このような事態にならないように、納税する分の現金は確保しておくことが大事です。

参考までに税率区分と控除額は下記の通りです。売却した時点でご自分の給与所得と合計してシミュレーションしておくことをおすすめします。

【総合課税の税率区分】(カッコ内は控除額)
195万円以下 5%(0円)
195万円~330万円以下 10%(97,500円)
330万円~695万円以下 20%(427,500円)
695万円~900万円以下 23%(636,000円)
900万円~1,800万円以下 33%(1,536,000円)
1,800万円~4,000万円以下 40%(2,796,000円)
4,000万円以上 45%(4,796,000円)

仮想通貨決済時代の到来で、ビットコインは右肩上がりか?

不安になるような話ばかりしてきましたが、ここで良い話もしておきましょう。

まず、基本的に仮想通貨は資産価値がゼロになる心配はありません。株式と違い、倒産や上場廃止にはならないからです。

さらに、株式で直接商品を購入することはできませんが、仮想通貨は決済の手段として使える利便性があります。

家電量販店大手のビックカメラや、旅行代理店大手のH.I.Sがすでに決済の手段としてビットコインでの支払いに対応しています。

今後この流れは加速していくものと思われますが、小売店や代理店にしたところで需要の少ない通貨を扱ってもコストがかさむだけなので、ビットコインやイーサリアムなど人気のある銘柄に絞るはずです。

そう考えると、ビットコインの優位性は今後も変わらないでしょう。その時々では急落することがあっても、基本的には今後も右肩上がりの上昇を続ける可能性が高いといえます。

今後、損益通算が認められるケースはあるのか?

最後に、今は認められていない損益通算を、今後国税庁が認める可能性はあるのかを考えてみます。

他の投資商品と損益通算するには、仮想通貨の社会的地位が向上する必要があります。今は投機目的のイメージが強く、株式に比べればまだまだ市場規模でマイナーな存在でしかありません。

今後さらに取引が活発になり、国民の誰もが手軽に投資できるような体制が整えば、国税庁としても認めざるをえないことになるでしょう。

例えば、仮想通貨のETF(上場投資信託)などが商品化され、証券会社が扱うようになれば総合口座内で損益通算することは可能です。仮想通貨で利益が出ていても、株式投資が赤字なら納税額を減らすことができるわけです。

最近ではメガバンクの三菱UFJフィナンシャルグループが、仮想通貨のブロックチェーン技術を応用して送金コストを下げる戦略を発表して話題になりましたが、近い将来仮想通貨決済が中心になる時代は確実にやってきます。

今の仮想通貨フィーバーはそれを先取りした動きと考えることもできます。

以上見てきたように、納税対策さえしっかりしておけば、仮想通貨で多額の利益が出ても心配することはありません。上記記事を参考に、さらに仮想通貨投資の成績が向上することを期待します。

参考:想通貨の税金対策と仕組みを解説〜合法的な節税方法はあるのか?〜

※また、税理士に依頼することを検討されている方はこちら
仮想通貨専門の税理士は存在するのか?相談する費用とメリット、デメリットは?


⇒仮想通貨の税務相談はCoin tax