平成27年1月1日から相続税の改正があり、基礎控除額が下がって、今まで課税対象とならなかった人も相続税を払わなくてはならない人が大幅に増加しました。20年ぶりの大改正です。

ポイントは基礎控除額が縮小され、課税対象者が増加したことです。相続税の計算は遺産額から基礎控除額を引いて計算します。

改正前

課税対象は、5,000万円+法定相続人の数×1,000万円

法定相続人 配偶者+子供2人ならば3人となる。

従って5,000万円+3人×1,000万円=8,000万円

8,000万円までは税金がかからない。

改正後

課税対象は、3,000万円+法定相続人の数×600万円

法定相続人が上記と同様3人ならば3,000万円+3人×600万円=4,800万円

4,800万円まで税金がかからない。超えると課税される。

このように大幅に課税範囲が広がりました。資産家のお家だけでなく、ごく一般的な家庭でも対象となりえます。

また、相続税の税率も改正となりました。

資産の受け取り後の金額が1億円以下までは変更ありませんが、2億円を超えると税率が上がります。今まで3億円以下は税率40%でしたが、45%に変更されました。

因みに、取得後の金額が1,000万円までは税率10%、3,000万円以上は15%、5,000万円以上は税率20%です。

やってはいけない相続税の対策

では、本題に入りたいと思います。

相続税は一般の人にとっては難しい税金です。安易に節税と思って行うと大きな痛手を負う場合がありますから、慎重に手際よく行う必要があります。

いくつかやってはいけない相続税対策を挙げておきます。

 1. 葬式が終わってもすぐに財産の処分を行わないこと。

故人の遺産額を早く確定したい、知りたいために葬式が終わって、すぐに遺品整理を行い財産の処分を行う人がいますが、これはNGです。

財産を処分すると相続の意志有りと見なされ、後日被相続人に借金があった場合、この借金も相続することになります。つまり相続放棄ができなくなる恐れがある、ということです。

相続する前に、故人の借金の有無(日本信用情報機構に開示請求を依頼する)、遺産財産の評価を行う(専門家に鑑定依頼する)ことが重要です。

2.相続のスケジュールを無視する(知らない)

・ 多額な借金があって相続を放棄する場合は3ヶ月以内。
・ 被相続人の死亡した日までの所得を税務署に4ヶ月以内に申告する。
・ 相続税の申告、納付は10ヶ月以内
となっています。知っておいてください。

3. アパート経営に手を出さない

アパート経営は相続税対策として有効です。相続税対策として土地にアパートを建てれば、家賃収入が得られ、貸付事業用宅地として課税評価額が大幅に減り、節税となる。というものです。

課税評価額が下がれば相続税の金額は下がります。節税ができ、なおかつ安定した収入も得られるため老後の資金の有効な運用策と言われています。

こうした謳い文句で、アパート経営が節税対策として多くの人が取り組んでいるわけです。これには前提となる条件があります。常に空室率が低く、安定した家賃が入ってくること、キャッシュフローに安全性が高いことなどです。

アパート建設資金に銀行融資ということになると、月々の返済資金は家賃に頼ることになります。

都市の1部を除いて、地方でなおかつ交通の便が悪いと、新築の内は入居率が100%でも、やがて徐々に空室が出るようになり、空室率が上がってきます。これが長期になると借入金の返済にも支障をきたすようになり、遂にはアパートを手放さざるを得ない状況に追い込まれる可能性があります。また売却しようにも、土地の上にアパートが建っていますから、土地、建物の評価額がかなり低くなる危険性があります。

従って余程の好条件の場所でないと、アパート経営は成り立たない、と考えるべきです。

参考:相続税対策の体験談2~アパート経営を始めたが入居率が不安に~

4.生前贈与はやり過ぎない

相続税対策をやり過ぎて、自身の老後の生活に支障をきたすのは本末転倒です。

・ 生前贈与の方法の1つとして毎年の贈与税の基礎控除110万円を活用する。
・ 子供や孫が住宅を購入する場合の住宅取得資金贈与を活用する。
・ 子供教育資金贈与

などがあります。これらには税金がかかりませんから、ついつい過度な贈与をしがちですが、必ずご自分の老後のライフプランと合わせた資金計画により生前贈与を行いたいものです。

参考:相続税対策の失敗例5選~典型的な注意点をチェック!~

5.相続税対策を相続税が専門でない税理士に依頼しない

相続税が専門でない税理士に依頼すると、節税どころか過大な税金を納めなければならない場合があります。相続税の手続は簡単ではありません。必ず専門の税理士に依頼してください。

相続の手続は1次相続(主人が亡くなって配偶者が相続―相続税は大幅に減額)、と2次相続(奥様が亡くなって子供が相続―相続税は高額)があり、この2次相続まで見据えた観点で相続手続きが行える税理士でないといけません。

また1次相続を行った後1年後くらいに税務調査が入る場合があります。これにも対応できる税理士でないといけません。

こうしたところをよく確認して税理士を選んでください。

参考:相続専門税理士を探す最適な方法

まとめ 相続税対策は相続専門の税理士に相談するのがおすすめです。

相続税対策は安易に行ってもいけないし、急いでもいけない、慎重に事を運ばねばなりませんが、それぞれ期限がありますから、段取りよく計画的に行わなくてはなりません。

相続税対策のNG事例は上記の他にもたくさんあります。一生のうちに何度もない相続税対策、間違いない、後で後悔しない相続を行うために、事前に学習しておくことは大事です。

特に課税対象評価額に相当する財産のあるご家庭では、当主、配偶者、子供、孫を含めた相続会議の開催をおすすめします。できればこの段階から相続税の専門税理士との相談が望ましいです。

相続税専門の税理士は税理士ドットコムで無料で探してもらうことができます。

あなたの現在の状況や税理士費用等の条件等を指定して、早めに相続税対策をしておきましょう。