病院に勤務していると様々でたくさんとの人との関わりを持ちますね。その中でも患者さんやその家族との関わりが看護師においては多いのではないのでしょうか?
時間外診療所ではありませんよ
救急外来の目的は急な病気や怪我をした場合において診断治療する場所です。私が勤務しているERは24時間365日稼働し、救急車や救急患者さんを受け入れています。
本当に急を要する容態なら一刻も早く受診していただきたいと思いますし救急車でもいいから受診していただきたいと思っています。
しかし、救急外来の本来の目的から大きく外れた受診の仕方をする患者さんが多く見受けられます。
例えば
- 昼間仕事をしていたから受診できなかった
- 明日受診予定だが病院が混んでいて待たされるから夜間に来た、
- 飲み薬だけでいいから出して欲しい
- タクシーはお金がかかるから救急車で来た
- 救急車で病院に来たのだから帰りも救急車で家に送っていって欲しい。
などなどまだ書ききれないほどたくさんありますがそんな患者さんが多いと本当に適切な医療を受けなければいけない方にそれができなくなってしまうのです。
ため息の救急外来
ERには初療室があります。トリアージで重症と判断された患者さんや救急搬送されてきた患者さんに対して素早く診断治療する部屋でどんなことに対しても対応できるお部屋があります。その初療室で心肺停止している患者さんの蘇生処置をしたり外傷の緊急処置をしているなど劇的なドラマみたいなことがある反面ため息の場面もかなり多いですよ。
診察室でもこんなことがありました。小児科の救急外来もやっているので問診票をみると風邪の症状が記載されていました。4歳の男の子が母親と診察室に入ってきましたがすごく元気そうで機嫌も良く片手に飲み物を持ち飲んでいました。医師が問診、診察をしていても重症感がありませんでした。
鼻水はでていましたが咳や熱はなく小児の診察室なのでキャラクターのおもちゃなどが置いてあり母親から問診をしているときは遊んでいるほど元気でした。
「鼻水がでていて明日遊園地に行きたいから薬を出してくれませんか?」と母親。「それなら暖かくして早く寝たほうが病院に来るよりはずっと体にいいですよ」と当直医。「それがめんどうだから病院に来ているんです」と母親。
このやり取りは深夜1時半の出来事です。
ERに勤務している看護師や医師は年に数回にわたり実際に救急車に乗って救急現場に赴く同乗実習があります。そこでのため息現場のお話です。
父親の身勝手な行動に唖然
また小児のお話ですが発熱という要請で救急車が要請先に向かいました。3歳の女のお子さんをお父さんが抱っこしていました。平日の午後2時頃のお話ですがすぐ要請者とわかり確認し5分ほどで接触ができました。
車内収容し熱やバイタルサインの測定、全身観察し問診も行いました。「4日前からの発熱で近医で風邪と診断されて薬を飲んでいるが熱が下がらないので救急車を呼びました」と父親。
熱は確かに38℃ありましたが機嫌も良くあやすと笑っていました。飲食もでき排尿も見られているとのことでした。熱と少し咳がありましたが呼吸が苦しいとか喘息のような咳ではありませんでした。
心配する親の気持ちはよくわかります。早速かかりつけ医に電話しましたが救急はやっていないと断られました。仕方がないので小児の救急を受け入れている少し大きな救急病院に受け入れを救急隊員が依頼したところ、すぐに連れてきてと返事をもらえたので搬送開始の準備をしたところ子供の父親が
「あそこの病院は少し遠いからやっぱり行きません」
と言い始めたのです。
一同目が丸くなり返す言葉が一瞬なく救急車の中の空気が凍りつきました。救急隊員が「お子さんのお熱がまだありますし受け入れてくれると先方の病院も準備をして待っていてくれているのでお子さんのためにも病院に行きましょう」となだめましたが静かに「あとでかかりつけの先生のところに行って相談しますからもう結構です」と子供の父親。
押し問答が30分くらい続いたでしょうか。要請者都合により搬送辞退と司令本部に一報入れてこの活動は終了しました。受け入れ先の病院に申し訳なさそうに断りの電話をしていた救急隊員の姿が忘れられませんでした。
このまま救急搬送していれば救急要請した意義はあったと思います。しかし搬送辞退となれば話は違います。もし近くで救急車が必要な方がいた場合すぐ近くに救急車がなく少し離れた消防署から救急車が向かうことになります。救急車が現場に到着することができる全国平均時間が5分以上かかっています。
一刻を争う方からの要請の場合、離れた消防署から現場に向かうと手遅れということが生じかねません。このお父さんはご存知だったのでしょうか?
でもため息ばかりでもありませんよ。「あの時はありがとう無事に退院できました」とわざわざERにご挨拶していただいたりお手紙をいただくときもあります。そんな患者さんたちの笑顔のためにこれからも頑張っていこうと思います。