相続税申告の体験談3~銀行預金の名義変更の大変さ~

実際に相続税申告を経験された方の体験談を紹介させていただきます。

今回の体験談は、「他の人にはない何か特別な事例」ではありません。

それでも体験者は、お父様が亡くなられた後、相続手続きをやり切ることは心から大変だったと語っております。

相続は資産家だけに訪れるものではなく、誰にでもやってくるものです。

「税理士や司法書士に対して何をお願いすればいいのか?」という点で、必ず参考になると思います。

ぜひご一読ください。

父の死~冷相続のことを考える余裕などありませんでした~

私の父は7年前に脳梗塞で倒れ、以後寝たきりの状態が続いておりました。
父は介護施設に入居し、母は毎日面会に行くことが日課で、私や兄も仕事の合間を縫って面会に行っておりました。

そんな父が昨年の年末亡くなりました。

亡くなる数週間前からお医者さんには覚悟しておいて欲しいと伝えられておりましたので心の準備はできていたはずですが、やはり実際に「死」を目前にすると冷静でいられなくなる自分がいました。

この時点で、葬儀の手続きについては頭にありましたが、相続の手続きについてはとても考えられる状態ではありませんでした。

葬儀でヘトヘト

悲しみに暮れている暇もなく葬儀関係の手続きや相談が始まりました。

父は定年前より、会費を納めている葬儀屋さんがあり、葬儀はそこの会館で執り行うことは生前より決まっておりました。

しかし、葬儀会場だけが決まっているだけで、どこまでの親族に声をかけるのかということや、祭壇のランク等については決めておりません。父が亡くなって少し落ち着いた数時間後から式場の方も含めてお話が始まりました。

父は生前より人と交流するのが好きで明るい性格でしたので、家族葬のような小規模の式ではなく、できる限り親族関係やご近所さんも声をかけようという話になりました。そうと決まってからは早かったのですが、初めての経験ばかりでしたので常にバタバタしておりました。

葬儀が終わり、遠方から来ていただいた親族を空港まで送り届けた時にはもうヘトヘトでした。

相続の手続き~銀行口座の名義変更は自分でやることに~

葬儀後、はじめて家族で相続の話になりました。

といっても、父は知り合いに税理士さんがおりましたので、生前よりその税理士さんに対策等の相談をしていたようです。遺言についても公正証書により作成しており、母と私、そして兄がちょうど3分の1ずつくらいになるように記載されておりました。

相続税の申告については、その税理士さんにお任せすることとなり、自宅の登記関係についても、その税理士さんと提携している司法書士をご紹介いただけることとなりました。

名義変更等については素人でも簡単にできるものと考えていたのですが、司法書士さんいわく、不動産の名義変更(登記変更)はややこしいらしく、銀行口座の名義変更は比較的簡単とのことでした。

そこで、銀行口座の名義変更は私たちでも十分可能ということでしたので、報酬が少しでも安く抑えられるように、自分たちでやることにしました。

これが、大きな後悔を生むことになったのですが。。。

銀行巡り~名義変更には予想をはるかに超える手間がかかりました~

そこから私の銀行巡りが始まりました。父は都市銀行から地元の信用金庫まで全部で9つの金融機関に口座を持っていたようです。

必要書類等について、まったくわからなかったので、まず1番初めに家の近所にある信用金庫に相談に行きました。さすが地元密着だなと感じるほど丁寧に教えていただき、市役所等で必要書類を集めて数日後には、比較的スムーズに名義変更することができました。待ち時間も苦にならない程の時間でしたので、このペースでいけば1か月以内にはすべて完了できるつもりでした。

しかし、そう簡単にはいきませんでした。

金融機関の規模が大きくなるにつれて、待ち時間も増え、記載する書類の量も増えてきました。さらに、必要書類も各金融機関で少し異なる部分があり、書類不足も多々ありました。

銀行に行っては役所に引き返し、また銀行にいっては役所に引き返す。
そんなことを何回も繰り返しました。

都市銀行等にいたっては、本部の承認が必要だったりもするようで、書類がそろっていても数週間待つこともありました。

こんなに大変なのであれば、報酬を支払ってでも司法書士さんに依頼すればよかったと何度も思いましたが、今更そんなことを言っても仕方ないので我慢しました。

相続手続の完了

結局名義変更等の手続きが完了したのは、銀行巡りを始めて3か月たった頃です。経験がなかったので手間取ったということもありますが、ここまで大変だとは思っていませんでした。

ちょうど同じ頃、自宅の登記が完了したとの連絡があり、相続税の納付と申告についても終わり、相続関係の手続はすべて終了しました。

父が知り合いの税理士さんがいたにもかかわらず、こんなにもバタバタと手続きに追われることになるとは、正直思ってもいませんでした。

少しでも相続関係の手続きに慣れている方であれば問題ないのかもしれませんが、一般の方は基本的に初めての方が多いと思います。そんな方々は是非、専門家に頼まれた方が良いのではないかと個人的には感じました。

考察~体験談から相続税対策を考える~

いかがでしたでしょうか。

お父様が亡くなってから相続税の申告が完了するまで、常にバタバタと手続に追われている絵が浮かびますよね。。。
葬儀が終わり、頭の中が整理される間もなく銀行と役所巡りを繰り返すのは、精神的にも体力的にもキツいでしょう。

今回は、お父様が自分で相続対策を実施されていて、遺言も用意されていました。
もし、そのような準備をされていないご家族であれば、遺産分割協議などさらに骨が折れる作業が多くなります。

この体験談からは次のことが言えると思います。

  • 被相続人(亡くなった人)だけではなく、家族も事前に税理士とコンタクトをとっておくべき
  • どのような手続きが必要となるかを、ある程度は事前に把握しておくべき
  • 銀行口座の名義変更だけでも、数が多いとものすごく手間と時間がかかる
  • 税理士と司法書士の両方とやりとりするのは面倒
  • 税理士が窓口となって、全ての手続を依頼してしまうのがベスト

今回のケースでは、税理士と提携している司法書士を紹介してもらったようですが、税理士と司法書士両方にお願いするのは、考えただけでも面倒です。

相続専門の税理士であれば、通常提携している司法書士がいますので、税理士が窓口となり全て引き受けてくれるように依頼すべきといえます。(司法書士にまで会う必要はないでしょう)

また、家族が亡くなった時の精神状態ですので、自分でできることは自分でやろうと安易に判断せずに、出来る限り全てを専門家に任せてしまったほうが得策と考えられます。

以上、相続税がかかるか否かによらず、相続は誰にでも発生するものです。
自分が相続手続きに振り回せれないよう、準備するきっかけになったり少しでも参考になれば幸いです。