勘違い多数!法定相続人の数とは~養子がいる場合は必読~

「法定相続人の数」は、相続税の額を計算する過程で必ず出てきます。

「法定相続人の数」がわからないと、自分には相続税が課税されるのかも、いくら課税されるのかもわかりません。

ところで、あなたは「法定相続人の数」を正確に理解できているでしょうか?

実はこの規定はかなり複雑で、特に相続の放棄があった場合や養子がいる場合は高い確率で勘違いされています。

このページを読めば、家族構成が複雑な方でも、自分や自分の家族が亡くなった場合の「法定相続人の数」がはっきりとわかるように紹介していきます。

愛人との子どもがいらっしゃる方でも役に立つよう少しマニアックな紹介もありますが、必要なところを是非ご一読ください。

法定相続人とは~「法定相続人の数」に誰が含まれるのか~

法定相続人とは、法律で定められた相続人のことをいい、「相続の放棄があった場合には、その放棄がなかったものとした場合における相続人」を意味します。

少し難しそうに思いますが、難しくはないですよ。

例えば被相続人(亡くなった人)の妻が「私は相続を放棄します」と言っても、「法定相続人」であることにはかわりないのです。

下の図のように、法定相続人の中にも第1順位から第3順位までが決まっており、家族構成によって誰が法定相続人になるかが変わってきます。

相続人の範囲5

法定相続人の基本的なルール
  • 配偶者(妻または夫)がいる場合は必ず法定相続人になる。
  • 第1順位である子ども(若しくは孫)がいる場合は、直系尊属(父母、祖父母等)や兄弟姉妹は法定相続人ではなく、子ども(若しくは孫)のみが法定相続人になる。
  • 第1順位である子ども(若しくは孫)がいない場合は、第2順位である直系尊属が法定相続人になる。
  • 第1順位である子ども(若しくは孫)も第2順位である直系尊属もいなければ、第3順位の兄弟姉妹が法定相続人になる。

「法定相続人の数」の基本的な例~いろいろな家族構成で確認~

被相続人(亡くなった方)の家族構成が次のような場合「法定相続人の数」はどうなるでしょうか。自分の家族構成にあてはめて正しく理解できているかを確認してみてください。

①配偶者と子ども2人がいる場合
⇒法定相続人の数=3人(配偶者と子ども2人全員が含まれます。)

②子ども2人と孫1人がいる場合
⇒法定相続人の数=2人(子ども2人のみ。孫は子どもがいない場合のみ、子どもの代わりとして含まれます。)

③配偶者と子ども2人と父親がいる場合
⇒法定相続人の数=3人(配偶者と子ども2人。子どもがいる場合は、第2順位である父親(直系尊属)は含まれません。)

④父親と弟がいる場合
⇒法定相続人の数=1人(父親のみ。親(直系尊属)がいる場合、第3順位である兄弟姉妹は含まれません。)

⑤配偶者と孫1人と弟がいる場合
⇒法定相続人の数=2人(配偶者と孫。子どもはいないが孫がいる場合、子どもと同様に扱います。)

⑥配偶者と弟がいる場合
⇒法定相続人の数=2人(配偶者と弟。子ども親(直系尊属もいない場合、第3順位である兄弟姉妹は法定相続人になります。)

「法定相続人の数」を適用する4つの規定

相続税法の中では、「法定相続人の数」を適用する規定は以下の4つです。

  1. 遺産に係る基礎控除・・・3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
  2. 生命保険金等の非課税限度額の計算・・・500万円 ×  法定相続人の数
  3. 退職手当金等の非課税限度額の計算・・・500万円 ×  法定相続人の数
  4. 相続税の総額・・・法定相続人の数に応じた相続分

①と④に関しては、相続税の計算上誰もが必要となるものです。

「法定相続人」の数が把握できて初めて「自分に相続税がかかるのか」そして「いくら相続税がかかるのか」の計算ができるのです。


いかがでしたでしょうか。
ここまでで、「法定相続人の数」の基本的な説明は終わりです。家族が亡くなった場合や自分が亡くなった場合の「法定相続人の数」が確認できたと思います。

家族構成が特別複雑ではないという方は、以下に進む必要はありません。
養子がいる方や愛人との子どもがいる場合等、これまでの説明では足りない方は、以下を読み進めてみてください。

「法定相続人の数」に算入できる養子の数の制限

家族に養子がいる方向けに「法定相続人の数に算入できる養子の数」を紹介します。

まず、養子は実子と同様、法定相続人になります。

ただし、養子の数を増やすだけ「法定相続人の数」を増やすことができれば、「遺産に係る基礎控除額」や「生命保険金の非課税限度額」を引き上げ、相続税から逃れることができてしまいます。

そこで「法定相続人の数」に算入される養子の数には制限が設けられております。

  • 被相続人に実子がいる場合  ⇒ 1人まで
  • 被相続人に実子がいない場合 ⇒ 2人まで

まとめると以下のようになります。

実子の有無養子の数(有無)算入する養子の数
実子有養子有
実子無養子1人
養子2人以上

実子として取扱うことができる者

法定相続人の数に算入される養子の数には制限があることを上で紹介しました。

しかし、例外的に次の3つは被相続人の実子とみなされ、いかなる場合にも法定相続人の数に算入されます。

(1)特別養子縁組により養子となった者
実子として扱うもの1

(2)被相続人の配偶者の実子で被相続人の養子となった者
実子として扱うもの3

(3)実子又は養子の代襲相続人(相続を放棄した者を含む)実子として扱うもの2

「法定相続人」と「法定相続人の数」~複雑な例と注意点~

以下に参考例を示しますので、実際に相続を受ける「相続人は誰か」「法定相続人は誰か」、相続税法上の「法定相続人の数は何人か」という観点で、自分の理解が正しいかを確認してみてください。

(1)実子が相続を放棄した例法定相続人の数1

(2)愛人との子供も、被相続人の実子です。
法定相続人の数2

(3)Dは実子として取扱われるため、養子は1人まで(A又はBのみ)が法定相続人の数に算入されます。
法定相続人の数3

(4)第2、第3順位には「法定相続人の数」の規定の適用はありません。
法定相続人の数4

まとめ~法定相続人の数を正確に理解しよう~

以上「法定相続人の数」について紹介させていただきました。

あらためてポイントをまとめると

  • 配偶者は必ず法定相続人に含まれる
  • 被相続人(亡くなった方)の親や兄弟は、家族構成によって法定相続人になるかが変わる
  • 養子は実子と同様、法定相続人に含まれる
  • ただし「法定相続人の数」に含まれる養子の数には制限がある
  • 被相続人(亡くなった方)と愛人との間の子どもは被相続人の実子である

いかがでしたでしょうか。中盤以降は、かなりマニアックな内容となってしまいましたが、愛人との子どもがいる方にも役に立つようなページにしました。(本当にいろいろな家族構成の方がいらっしゃいますからね。。笑)

読んでいただければ、自分の場合はどうか?自分の家族の場合はどうか?とあてはめて「法定相続人の数」が把握できたと思います。

「法定相続人の数」は相続税の計算に使用するため正確に把握することが必須です。生前から相続について考え、できるだけ早くから相続税のシミュレーションをしておくことが重要です。

以上、少しでも皆さまのお役に立てれば幸いです。

法定相続人がいくら財産を相続するのかについてはコチラ
⇒「誰がどのくらい遺産を相続するのか~5分でわかる相続人と相続分~」