孫は自分の子ども以上にかわいい宝物といいます。
かわいい孫のためなら、教育資金を負担したいというかたは多いでしょう。
通常、財産を贈与すると受け取った人に「贈与税」が課税されますが、「教育資金」として必要な金額であれば贈与税は一切かかりません。
これは意外と知られていない事実です。
また平成25年の税制改正で、1,500万円まで一括で贈与しても贈与税がかからない特例も創設されました。
制度をうまく利用すれば、教育資金の贈与は子や孫を喜ばせるだけでなく、実は相続税を節税することができるのです。
このページでは「教育資金の贈与」について、相続税対策に絡めて情報を発信していきます。
贈与税とは~贈与を受けた人が払う税金~
そもそも贈与税とは、1年間に受けた贈与の額が110万円以上の場合に贈与を受けた人が払わなければならない税金です。
贈与税の計算方法は、以下の速算表を利用し次の計算式で求めます。
贈与税の速算表 | |||
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基礎控除額 | 1人1年間に110万円 | ||
税額計算 | 110万円控除後の贈与財産額 | 税率 | 控除額 |
200万円以下 | 10% | ― | |
300万円以下 (400万円以下) | 15% | 10万円 (10万円) |
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400万円以下 (600万円以下) | 20% | 25万円 (30万円) |
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600万円以下 (1,000万円以下) | 30% | 65万円 (90万円) |
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1,000万円以下 (1,500万円以下) | 40% | 125万円 (190万円) |
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1,500万円以下 (3,000万円以下) | 45% | 175万円 (265万円) |
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3,500万円以下 (4,500万円以下) | 50% | 250万円 (415万円) |
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3,000万円超 (4,500万円超) | 55% | 400万円 (640万円) |
【例】1,000万円(基礎控除後890万円)の贈与を孫に行う場合の贈与税額
孫が20歳未満の場合
⇒(1,000万円 - 110 万円) × 40% - 125万円 = 231万円 と計算され、孫に231万円の贈与税が課されます。
孫が20歳以上の場合
⇒(1,000万円 - 110 万円) ×30% - 90万円 =177万円 と計算され、孫に177万円の贈与税が課されます。
教育資金の贈与は元々贈与税がかからない~贈与税の非課税制度~
上述したように、110万円を超える贈与には贈与税がかかりますが、贈与の内容が「教育費」に該当すれば贈与税は1円もかかりません。「教育費」に該当するためには以下の条件を満たす必要があります。
・父母または祖父母が行う贈与であること
・子または孫に対して行う贈与であること
・必要な都度必要な金額を贈与すること
・教育上必要となる費用であり、入学金、授業料、教材費、通学定期代、留学費、文具代、修学旅行費等であること
(教育は義務教育に限らない)
ポイントとなるのは「必要なとき」に「必要な金額」だけを贈与しなければならない点です。
授業料や入学金等の支払いが必要なときに資金を贈与しなければなりません。贈与する人が学校などに直接支払う方法で問題はありません。
孫が将来立派なお医者さんになるために、祖父母が高額な私立医科大学の入学金や授業料などを負担したとしても「教育費」とみなされ贈与税は一切かからないのです。
教育資金の一括贈与の特例~1,500万円までは非課税~
孫の受験や進学のたびに教育費を贈与できるのであれば、上述した通り「必要なとき」に「必要な金額」を無税で贈与できます。
ところが、特に高齢であったり病気がちである等、「必要なとき」にその都度贈与ができるか不安な方もございます。
そのような、できるだけ早くまとまった教育資金を贈与しておきたいという方でも、一定の手続きを経れば平成25年に創設された「教育資金の一括贈与非課税制度」という特例を活用し、1,500万円までの教育資金を贈与税0円で一括贈与できます。
教育資金とは関係のない通常の贈与を1,500万円行えば、孫が20歳未満であれば381万円、20歳以上であれば366万円の贈与税がかかるので、それが非課税となるのはかなりお得な制度ということがわかります。
教育資金の一括贈与非課税制度の概要
子または孫が、父母または祖父母から将来の教育資金を前倒しで一括贈与を受けた場合、後々学校などに支払う費用であれば、1,500万円までの贈与は贈与税が非課税となります。(贈与は平成31年3月31日までに実施しなければなりません)
1,500万円のうち500万円までは塾や習い事など学校以外の費用であっても問題ありません。贈与をする人の年齢は問われませんが、贈与を受ける子や孫が30歳未満で資金を利用するものに限られます。
教育資金の一括贈与の方法~非課税とするために~
孫に対して1,500万円までの教育資金を非課税で贈与するためには、贈与を受ける側が金融機関等で専用の口座を開設し、贈与をする側も一定の手続きが必要となります。
以下に手続きを記載しますが、実際には金融機関等に足を運び「教育資金の一括贈与について」と言えば、あとは担当者が必要書類等すべて準備してくれ、税務署への届出も代行してくれます。
銀行を利用する場合
贈与を実施する父母や祖父母が銀行と「教育資金管理契約」を結び、子や孫名義の口座に資金を預け入れます。通常は各銀行でこの制度専用の口座を設けているので、そこに資金を預け入れることになります。
信託会社、信託銀行を利用する場合
贈与を実施する父母や祖父母が信託会社等と「教育資金管理契約」を結び、子や孫を受益者をする「信託」を設定します。通常は各信託会社にこの制度専用の金銭信託商品がありますので、そこに資金を預けることになります。
証券会社を利用する場合
贈与を実施する父母や祖父母が銀行と「教育資金管理契約」を結び、子や孫名義の証券口座に資金を預け入れ、子や孫がその口座にて有価証券を購入します。もしくは、父母や祖父母の証券口座から子や孫の証券口座へ有価証券の振り替えを行います。
教育資金を贈与することで相続税の節税ができる
贈与を実施すれば実施するほど祖父母の財産は減りますので、将来亡くなった時に課税される相続税額を減らすことにつながります。
教育資金であれば「必要なとき」に「必要な金額」を贈与するか、一定の手続きを実施して一括贈与を実施すれば、贈与税はかかりません。
つまり、教育資金を贈与することで贈与税を1円も支払うことなく祖父母世代から孫世代に財産が移動させることができ、相続税を大きく節税できるのです。
相続税の税率は財産額に応じて10%~55%となっておりますので、仮に税率が30%と仮定すると1,500万円の教育資金を贈与すれば1,500万円 × 30% = 450万円も節税となります。
通常、相続発生(死亡日)より前3年以内に行った贈与は、その贈与が「なかったもの」として相続税の計算がされます。つまり、死亡する3年以上前に生前贈与を行わなければ節税効果はありません。
ところが「教育資金の一括贈与で非課税の適用を受けた額(1,500万円まで)」にはその適用がなく、相続直前であっても相続税の節税効果があります。有効に利用しましょう。
まとめ~教育資金の贈与による相続税対策~
以上、教育資金の贈与の概要と、制度を利用した相続税対策について紹介しました。
あらためてポイントをまとめると、、
- 贈与税は本来贈与を受けた人が贈与を受けた額に応じて支払う税金
- ただし「必要なとき」に「必要な額」の教育資金の贈与であれば贈与税はゼロ
- 高齢や病気がちで、早めに一括して贈与しておきたい場合は特例を利用
- 特例を利用すれば1,500万円までの教育資金は一括贈与しても贈与税はゼロ
- 特例を利用するには金融機関等と契約する必要がある
- 教育資金を贈与することで効果的に相続税を節税できる
孫の教育資金を負担すれば、孫だけでなく孫の親である自分の子が一番喜ぶでしょう。
また将来相続税を負担するのは残された家族です。孫の教育資金を負担することで将来の相続税をも節税することができるのですから、教育資金の贈与は「家族が喜ぶ相続税対策」ということができます。
このサイトでは「できるだけ早くから相続税対策を実施する」ということを一つのテーマにしております。現時点で相続税対策を充分に実施されていない方にとって、少しでもお役に立てれば幸いです。