企業は、ヒト、モノ、カネの三要素で成り立っています。ヒトとは人材のこと、モノとは設備や資材のこと、カネとは資金のことです。

この中で、ヒトつまり人材に関する全ての業務を担当するのが人事、労務課の仕事です。

人材は企業にとって最も重要な資産です。その人材たる社員が働く意欲や能力を最大限発揮してもらえるようにバックアップし、環境を整える事が人事、労務課の仕事です。

人事、労務部門は、企業の大きさ、従業員数によって違いますが、総務部の仕事に含まれている場合や人事課として労務も兼ねている場合などがあります。

大企業ではより業務が細分化されて労務課、人事課とそれぞれが独立した部署になっている場合が多いです。いずれにしても人事と労務は共に人を対象とした業務ですから、一体的な運営が必要です。

人事、労務課の仕事とは

一般的に人事に関する業務とは、人材の採用から退職までの全ての業務、採用、教育、給与、人事評価、異動、昇格、適正配置、退職手続きなどがあり、社員1人1人を対象とした業務が中心です。

一方、労務の業務とは、社員の福利厚生や安全衛生、労働時間管理、有給休暇、産休、育児休暇などの管理、社会保険関係手続、労働組合対応など、社員全般を対象とした業務が中心です。

また、労務管理の仕事には、法律で定められた業務もあります。労働基準法、労働安全衛生法、健康保険法、労災保険法などです。

企業のコンプライアンス(法令順守)を果たす管理部門でもあります。社内への周知徹底を図らなければなりません。

ではもう少し詳しく人事、労務の実務を見ていきましょう。

人事の実務

・ 人材採用:新卒者、第二新卒者、中途採用のための募集要項の作成及び採用実務があります。基本的には、会社の経営方針に沿って、年次人員計画を立て、新規部門の人材確保や各部署の人員の過不足を調査して、不足する人員の数と必要とするスキルや経験度を打ち合わせます。高校や大学への求人も行い、就職説明会の開催や面接、採用業務を行い、中途採用に関してはハローワークや人材仲介業者との折衝も行います。

・ 教育:採用した人材は、基本的な職場教育を行います。経営方針の理解と徹底を図り、職域に必要な知識や心構えについて教育を行います。さら職能教育や管理職研修会、経営研究会などを適宜開催して、仕事に対するモチベーションの維持、専門分野の研鑽、管理者教育なども行います。

・ 人事評価、異動、昇格:人事権の行使につながる重要な仕事です。年度経営方針に基づいて各部署の人員配置及び適正人員数が決まります。これにより、社員の異動を行います。各部署の人事評価の実務は各部署の課長や部長又は担当役員が行い、このデータを人事課で調整して確定します。この時、社員の昇格又は降格を合わせて行います。人事評価は、給与の昇給にも反映させる場合が多いです。昇格によって待遇が変わりますから給与そのものを変更することになります。

・ 給与計算:給与計算は人事課で行っている会社が多いです。給与計算には経理的な知識も必要ですから経理課で行っている会社もあります。仕分けという経理の基礎が分っていないといけません。最近では給与計算ソフトがありますからかなり楽になりました。また、社員の勤怠情報のみ人事課で収集して、計算そのものは会計事務所に外注しているところも多いでしょう。年末調整の経理実務及び源泉徴収票の発行も含みます。

労務の実務

・ 各種保険の加入、変更の手続:社会保険関係(健康保険、厚生年金保険)、雇用保険、労災保険、介護保険などの加入、変更手続きが日常的に発生します。社員数の多い企業では専門の担当者がいます。保険料の計算、確定は給与との関係がありますから給与計算実務担当者との連携が必要です。社内に労働災害(通勤退勤時の交通事故や就業中の事故)が発生した時は直接の担当者となります。

・ 労働時間管理、勤怠管理:就業規則に従った管理を行います。就業規則の作成、変更、管理は労務課の仕事です。残業管理や不法労働に対する管理監督の当事者です。労働基準法、労働安全衛生法、労災保険法などは勉強しておく必要があります。一定の従業員数以上(ex 50人以上200人までは1人)では衛生管理者(国家資格)が必ず必要です。

・ 福利厚生:社員の健康管理、定期的集団健康診断、余暇活動、社宅管理、資格支援、社員旅行、保養所管理などの業務があります。

・ 労働組合:組合がある企業の場合は、労務課が担当窓口となります。

まとめ

人事、労務には様々な業務があります。それぞれに必要なスキルがあり、どちらかと言うと頭脳労働者です。

人事、労務に初めて配属された人は、非生産部門で裏方的な存在の部署であるから違和感を覚える人もいるかもしれません。会社にとって極めて重要な部署であることが分かるまでに少し時間がかかるかもしれません。

人事労務に配属されると、最初に指示される仕事は、定型業務の給与計算補助や社会保険関係の手続業務でしょう。これだけでも覚えるのにかなり時間がかかります。

人事、労務の仕事に合う人は、比較的コツコツと地道に目標を決めて努力する人でしょう。派手さはありませんから、バックスタッフとして誇りが持てる人でしょう。