夜勤専従看護師への転職 〜業務内容は?給料は高い?正社員も可能?〜
「夜専の看護師しています。」
と、いう人に会った方もいるのではないでしょうか。
看護師の夜勤専従(夜専)は需要があるため常に募集もあり、高給で時間の自由もきくため昔から変わらず人気の働き方です。
では実際、「夜専で働くってどんな感じ?」、「どうやって夜専になるの?」など、気になる夜専看護師の実際についてお話ししたいと思います。
はじめまして。
現在都内の総合病院に正職員として勤務中の看護師です。
地方の看護大学を卒業後、新卒で上京。都内の大学病院に就職し、ICUに配属され3年間勤務。
その後、アメリカに留学してみたい!というミーハーな目標の元、晴れて3年で大学病院を退職。
退職後は都内の有料老人ホームと民間病院で夜勤専従看護師としてかけもち勤務。その後、憧れていた海外留学で1年間渡米。
帰国後は都内の病院に正職員として就職し現在に至ります。
夜勤専従となったきっかけ
私が夜勤専従看護師となったのは、短期間で留学資金を貯めたい!という理由からです。
副業やアルバイトを禁止している病院も世の中まだ多いと思います。
また夜勤の72時間ルール(全看護師の合計夜勤時間を、夜勤をする看護師の人数で割った時間が72時間以内にならないといけないという診療報酬のルール)から正職員は夜勤回数がある程度制限されており、なかなか常勤看護師の仕事だけで収入を増やすことは難しいのが現実です。
私がかつて働いていた大学病院も正職員は副業禁止だったので、ダブルワークをしている人はあまりいませんでした。
大学病院を退職した後、少しでも多く稼ぎたい!と思い、高給で自由にシフトを決めることができるという理由で夜勤バイトを探しました。
まずインターネットの看護師求人サイトから、夜勤専従看護師の募集を探し面接を受けました。(施設によっては求人サイトの面接のみで、派遣先には面接不要な場所もあります。)
病院の方は先方と直接非常勤雇用の契約を結び、ダブルワークで働いていた有料老人ホームは派遣会社からの紹介で単発の派遣社員として勤務しました。
そうして留学までの期間、夜勤専従看護師として働くことになりました。
夜勤専従看護師になるためには?
もちろん正看護師免許の保有が必須です。(准看護師免許で採用しくれる施設も中にはあるかも知れません。)
基本的に夜勤専従看護師に新卒からそのままなるのは難しいでしょう。また外来やクリニックなど日勤しか経験したことない人も難しいと思います。
少なくとも1年以上〜数年看護師として病棟での夜勤勤務を経験した後に、夜勤専従へ転向するパターンが一般的だと思います。転向する方法としては以下のいくつかの方法があります。
正職員のまま夜勤専従看護師になる方法
ひとつはそのまま常勤先の病院で、正職員の身分のまま日勤は行わず夜勤専従のスタッフとして働く方法。この方法は基本的には上司(師長)との相談になります。
しかし、常勤は委員会や病棟会、医療安全やラダー、研修などに参加したりと雑務も多いため、常勤のまま夜勤専従として働くことはなかなか難しいかもしれません。
休みの日に会議に出てきたり、夜勤明けで委員会活動をしたり、もしくは委員会業務や教育など一切の雑務を免除してもらうなど弊害も多く出てくるため、特に職場と上司の理解が必要です。
現在交代業務のある病院は夜勤の72時間ルール遵守のため、常勤看護師の中から毎月1〜2人ほどシフト上夜勤専従を設けています。常勤のまま年間のシフト上で夜勤専従として働く月を増やすというのも一つの手です。
または専従ではありませんが、夜勤回数の多い部署に異動するという方法もあります。
診療報酬の特定集中治療室管理料の問題でICUなどは夜勤も2:1の看護配置となっていて、ICU勤務の看護師は、一般病棟勤務の看護師より夜勤回数が多い傾向にあります。(一般病棟が平均4−5回の夜勤回数なら、ICUは5−6回が平均。多いときは7−8回もあり。)
転職するほどではなく夜勤専従に興味があれば、異動を考えてみるのもいいでしょう。
非常勤で夜勤専従看護師になる方法
もうひとつの方法は非常勤の夜勤専従看護師として新たに契約する、または勤務先で常勤から非常勤へ身分変更するというパターンです。現在ほとんどの夜勤専従看護師は主にこちらの雇用形態で働いていると思います。
病院にもよるとは思いますが、一般的に非常勤の方がシフトの希望も通りやすいため自分でスケジュールを管理しやすいです。
大体前月の初めくらいまで先方にシフトの希望を提出し前月の中旬から下旬までにはシフトが確定するというしくみです。
ほとんど希望通りに働ける場所や空きがあれば希望が通る場所など、施設や個人の契約により様々かと思います。パワフルな人はうまくシフトを組み合わせて2施設以上で夜勤をかけもちしたり、夜勤専従として働きながら休みの日には別のアルバイトをしたりとダブルワークをしている看護師も多々います。
雇用先の病院や施設がダブルワークを容認しているというのが前提になりますが、自分で働く量を調整できるのが非常勤の夜勤専従看護師の大きなメリットの一つだと思います。
夜勤専従看護師は高給?給料について
一般的に高給のイメージが強い夜専看護師。
気になる夜勤専従看護師の給料は実際どれくらいなのでしょうか。
施設によりまちまちではありますが、やはり日勤に比べて高く設定されています。
一般的に東京都内の病院の場合1回の夜勤(準夜、深夜の合わせて16〜17時間勤務の場合)で3〜4万円が相場です。
アルバイトなどの非常勤の場合は、時給というよりは単純に実際の夜勤回数×1回あたりの給料と計算されることが多いです。(残業に関しては時給換算で残業手当としてつくことがほとんどです。)
有料老人ホーム等の施設の夜勤は病院の夜勤より少し低めで2万円後半から3万円前半くらいでしょう。条件のよい病院などは1夜勤4万5千円という高めに設定されているところもありますが、月に8回以上勤務することが条件など条件設定されているところもあるので注意が必要です。
また現在看護師の夜勤時間の見直しにより、変則2交代制の13時間夜勤などを導入している病院も一部あるため、そうした施設はまた金額が異なってくるため確認が必要です。
夜勤専従として働くと大体1施設でMAX月平均8〜10回程度の回数の夜勤をシフトに組まれるため、多いところでは月40万以上稼ぐことも可能です。(2016年の診療報酬改定の際に夜勤専従看護師の上限時間の144時間が撤廃されたことで、夜勤専従看護師の夜勤回数の上限がなくなりました。)
これに他のアルバイトも掛け持ちすると、一般的な日勤勤務よりもかなり稼げることになります。
常勤の夜勤専従の場合は、基本給に月の夜勤回数分の夜勤手当が加算された分が月給となります。夜勤手当も施設によりまちまちですが、仮に1夜勤1万円と計算すると夜勤専従看護師の場合は夜勤手当てだけで月給に8〜10万円加算される計算になります。給料面では日勤だけ行うよりも、かなり高給になりますね。
しかし…
3,4万と聞くと一見額面では高額に感じますが、実際の時給に換算してみましょう。
仮に1夜勤16:00〜翌9:00(休憩2時間)、一回3万円の場合。
拘束時間17時間、実働時間15時間で計算すると、時給にして2000円です。都内のクリニックなど、日勤帯でも時給2000円で募集している施設はあります。また常勤でも経験年数によっては標準月額報酬が時給あたり2000円超える看護師も多いでしょう。
そのため見方にもよりますが、重労働の夜勤の労働対価としては一概に「夜勤専従が高給だ」とは言いきれないと思います。
夜勤専従看護師の昇進は?
夜勤専従看護師の多くは非常勤として働いているため、管理職などへの昇進はなかなか難しいところだと思います。
常勤として夜勤専従を行っている場合も、委員会活動や各種研修、勉強会、会議に参加が難しいためなかなか評価されず、昇進に結びつかないのが現実です。
ラダーや新人教育、プリセプター活動、看護研究など、常勤者には日常のルーチンワーク以外の仕事も多く求められるため、夜勤専従だとなかなかこなすせず、ラダーの昇格も難しいところです。
昇給も同じく、非常勤として働く場合は雇用契約時に1回あたりの夜勤単価で契約することがほとんどのため、夜勤専従看護師に年次昇給などを設けている施設は少ないでしょう。
言い換えると、日々の看護業務以外の仕事をあまり好まない人にとっては、メリットと言えるでしょう。
夜勤専従看護師の実際の仕事内容は?
夜勤専従看護師といっても基本的に普通の夜勤と仕事は変わりません。病院であれば、病棟で勤務時間は受け持ち患者を持つでしょう。施設であっても、受け持ちを持つかあるいは受け持ちはなくても入所者の全体的な与薬や経管栄養や吸引などの医療行為を任されることが多いと思います。
実際の夜勤の勤務時間の一例として。
2交代勤務の場合
日勤8:30〜17:00、夜勤16:30〜9:00のような夜勤16時間制
日勤8:00〜20:00、夜勤20:00〜8:00の12時間制
3交代勤務
日勤8:00〜17:00、準夜16:30〜0:30、深夜0:00〜8:30の8時間制。
上記のいずれかの時間帯で働いている人がほとんどです。まだ16時間制の病院が多いと思いますが、12時間制の病院も徐々に増えてきています。
16時間制夜勤の場合食事休憩と仮眠時間で2−3時間の休憩、12時間制の場合は1−2時間、8時間制は1時間ほどの休憩時間が含まれます。
病院での夜勤の業務としては、検温、食事介助、与薬(内服)、点滴管理、吸引、排泄介助(トイレ介助、おむつ交換)、体位変換、血糖測定、注射、消灯後の巡視、手術患者のお迎え、検査のお迎え、翌日の手術や検査の準備、採血、記録、緊急入院の対応など多岐にわたります。
スケジュール(2交代16時間勤務の病棟看護師場合)の一例
準夜勤
16:30 申し送り、受け持ちに挨拶
17:00 血糖測定、点滴準備
18:00 配膳、食事介助
19:00 下膳、食後の配薬(交代で食事休憩)
20:00 検温、血糖測定、イブニングケア(口腔ケアなど)
21:00 消灯、眠前薬の配薬
22:00 ラウンド、吸引、体位変換(2時間おきに行っていく)
24:00 ラウンド、準夜勤の記録、深夜分の点滴準備
深夜勤
2:00 ラウンド(交代で仮眠休憩)、コスト作成
4:00 ラウンド、当日薬の準備、検査準備
6:00 起床、検温、手術、検査の準備
7:00 採血、血糖測定
8:00 朝食配膳、食後薬配薬、深夜分の記録
9:00 日勤へ申し送り
上記は簡単な一例ですが、これに緊急入院や緊急手術、急変などが入ってくるとスケジュール通りいかないことが多々あります。また病棟のその日の重症度によってもスケジュールが大きく変わってきます。
病棟での夜勤者は日勤の看護師より人数が少なく病床数にもよりますが、大体1病棟3−4人で勤務することが多いためより一人一人の責任が大きくなってきます。受け持ち人数も日勤より多く十何人も受け持つこともあるでしょう。(交代で仮眠休憩中は、更に引き継いで人数が増えます。)
病棟が落ち着いている時は患者さんも就寝しているため、ルーチンワークをこなせば交代で仮眠休憩も取れて日勤よりは体力的に楽かもしれません。
しかし、予想外の患者さんの急変や緊急入院、緊急手術や検査、ナースコールの大合唱など…荒れた夜勤にあたると、医師や看護師などスタッフ数も少ないため水を一滴も飲む暇もなく朝を迎えた…ということも。その辺りは運しだいとも言えます。
また非常勤や派遣の夜勤看護師の場合、人手不足のところも多くあるため教育期間や研修期間を設けていない施設もあります。初めて行った場所で、夜勤中すべて一人で行わないといけないという施設もあるので事前に確認しておくといいでしょう。
夜勤専従看護師はどんな人が働いているの?
夜勤専従看護師は非常勤で働いている人が多いです。
特に短期間で貯金したい、シフトを自分で自由に決めたいと思う人が多く働いています。
常勤勤務より時間に自由がきくため様々な働き方をしている人がいて、バイタリティあふれるパワフルな人が多いのも夜勤専従看護師の特徴かもしれません。
給与アップのため夜勤を3施設かけもちしているという看護師。(休みは月に2,3日)。
日中に大学院や学校に通い夜間夜勤ナースとして働いてるという人。
旅行が趣味で、月の前半につめて夜勤を行い後半は1週間以上お休みして旅行に行く人。
手の離れた(けれどもお金のかかる)中学生くらいの子育て中で、昼は家で家事をして夜病院で働くというママさん看護師。
こどもは小さいけれど夫や両親などのサポート体制が整っていて、平日こどもの行事の参加や育児をして、あえて夜勤専従を選ぶママさん看護師。
海外留学やワーキングホリデーに行くため、渡航前に期間を決めて働いている人。
などなど、様々な理由から夜勤専従としての働き方を選択している人がいます。
常勤勤務を経てから転職するため、20代中盤〜40代くらいの、中堅からベテラン看護師が多いです。
夜勤専従で働いてみて実際に感じたこと、メリット
日勤ではなかなか難しかったダブルワークが可能になります。働いた分給料もアップするので、やりがいにつながります。
2交代勤務だと基本的に準夜、深夜翌日休みという3日で1クールという勤務になります。特にICUや急性期での勤務の場合患者さんの平均在院日数が短く、何日ぶりに出勤するとほとんど名前も顔も知らない患者さん…ということは多々ありました。
夜専は毎日日勤をしている人より、勤務時間内で得られる情報量が少なく、受け持ち患者さんの数も多いため勤務前の情報収集には時間がかかります。
初めての患者さんは名前と顔を覚えた頃に勤務終了するという繰り返しなので勤務前の情報収集は念入りに行う必要があります。人によっては1時間〜30分前に情報収集のため出勤する人もいました。
夜勤専従は日勤で働いているより休日が多く最初は嬉しく感じました。
しかし、数か月夜勤のみの生活を送っていると体内時計が完全に狂うため、便秘から始まりだんだん体の不調が起こってきました。夜勤中に2時間ほど仮眠(出来ない時もありますが)、夜勤明けでそのまま遊びにいってしまうと夜更かしして翌日昼まで寝てしまうという完全に昼夜逆転。夜勤を掛け持ちしている時は、夜勤明けで2〜3時間仮眠し、また夕方に夜勤に出かけその翌日の夜勤明けからそのまま夜中まで寝だめする、、、というもはや2日に1回しか寝ないという睡眠パターンのせいで、常に眠たく寝ても寝足りない時期もありました。
よくある話は、仮眠室で爆睡してしまい休憩時間終わってもなかなか帰ってこないというもの。
いつぞやは老人ホームの夜勤中、トイレに座ったまま少しウトウト。気づいたらナースコールが鳴っていて、飛び上がり慌てて部屋に行った…という失態もありました。
無理はせず患者さんの安全が一番ですね。
貯金を始めようと夜勤専従になったけど、次の日が夜勤入りだとついつい飲み会の誘惑に負けて飲みにいってしまい、飲み代が増えてしまった…なんてこともあり注意が必要です。
これから夜勤専従看護師を検討している方へ
まず大切なことは何よりも自身の体調管理です。
夜勤勤務者は発がん率も高まると言われており、うまく自分でコントロールしないと体の様々なところにひずみが出てきます。そのため、夜勤勤務後の睡眠パターンを整えることが大切だと思います。
ついつい無理をして夜更かししたり、寝だめしたりしがちですが、きちんと朝起きて活動することも体内時計をリセットするために必要なことです。
夜勤専従期間が長期化する場合は、定期的に間に長期休暇をとるなどしっかり休息する時間が必要です。また、定期的に検診を受けれるなど環境の整った職場に勤めるのも大切なことです。
夜勤で働くと必然的に患者さんの就寝時間帯が勤務時間の多くを占めます。患者さんとのコミュニケーションを図る時間や、清潔ケアをする時間はおのずと減ってしまいます。
また、看護診断や看護計画の立案、プランの見直しや、カンファレンスを行うのもほとんど日勤業務のため、患者さんについてアセスメントする機会や時間は減ってしまうと思います。
言葉を変えると、その分日勤で行っている記録や計画などの業務量は減りますが、経験が浅いとアセスメント力やカンファレンスの討論力などを培う機会が減ってしまうのは夜勤専従のデメリットでしょう。
夜勤はスタッフ一人あたりの責任が重くなる分、スキルアップには自身の努力が求められるでしょう。
夜勤専従になると非常勤として働くことになる方も多いと思います。非常勤の場合は有給休暇なども限られているため、体調を崩して休んだ場合給料に直結してしまうというリスクもあります。
また月々の手取りは高くても、ボーナスが支給されないことがほとんどです。給料だけを考えるなら目先の手取りだけにこだわらず、年収に換算してみたり常勤で退職金をもらう場合などを踏まえて計算したうえで、夜勤専従看護師として働くかどうかを決めることも大切だと思います。
しかし期間を決めてしっかりダブルワークで稼ぎたい人、プライベートな自由時間が欲しい人、常勤で業務以外の雑務に疲れてしまった人などには夜勤専従はおすすめの働き方です。
看護師だから出来る強みもあり、リスクを理解した上で働いてみたいという方は是非チャレンジしてみるのもいいでしょう!
