株式市場の回復とともに増えてきたIPO。公開価格を上回る確率が高いことから、個人投資家の間では根強い人気が続いています。
ただし、人気の高い銘柄には申し込みが殺到して、なかなか当選できないのも事実。そこで今回は取引実績や株数に関係なく1人に1個公平に抽選権を与えられる「IPOの完全平等抽選方式」について詳しく解説します。
目次
IPO株はどの程度値上がりするのか?
初めてIPOに申し込む方にとって気になるのは、いったいどれくらいの確率で値上がりするのか?という点でしょう。
2016年度には年間92社が新規公開しましたが、その中で公開価格より初値が上回ったのは70銘柄。勝率にして76%です。おおむね年間5社に当選すれば4社で利益があがる計算です。
これだけの高い勝率であれば、当選する回数が多いほど安全性も高まることになります。問題は当選できるかどうかです。
新規公開株というと、お得意様に優先的に配分しているのではないか?というイメージを持つ方もおられるかもしれません。
実際にそのようなシステムをとっている証券会社もありますが、初めてIPOに申し込む方にも公平に抽選権が与えられる証券会社もあります。
では、まず抽選方式の種類から見てみましょう。
IPOの抽選方式にはどんな種類があるのか?
IPOの抽選方式には大きく分けて、2つのタイプがあります。
●資金力と実績がものをいうタイプ
機械による完全抽選ではあるが、条件が付く抽選方法です。
・申し込み株数比例方式
申し込み株数何株に対して1個という抽選方式で、株数を多く申し込むほど有利となります。いわゆる金持ち優遇タイプといわれるシステムで、ごく普通の個人投資家には向いていない抽選方法です。
・取引実績比例方式
口座を持つ証券会社での取引実績に比例して当選確率が上がるタイプの抽選方式。金持ち優遇タイプと似ていますが、こちらは過去に支払った手数料がものをいうので、いきなり大金を投じたからといって有利になるわけではありません。お得意様優遇タイプといわれる抽選方法です。
以上の抽選方法は、ある程度の資金力と実績が必要です。では、あまり資金が無い人でも、あるいは初めての人でも申し込める完全平等抽選方式の内容と、おすすめの証券会社をご紹介しましょう。
●誰でも公平にチャンスがあるタイプ
・完全平等抽選方式
申し込み株数や過去の実績に関係なく、1人に1個の抽選権が与えられるシステムで、完全抽選方式と呼ばれる、もっとも公平な抽選方法です。こちらも機械によって抽選を行ないます。
1人に1個ということは、最低単元である100株の申し込みでも当選のチャンスがあるので、公開価格が1,000円以下なら10万円の資金でチャレンジすることができます。
初めてIPOに申し込む方や、投資資金が少ない方であれば、この方式を扱っている証券会社に絞った方が良いでしょう。
IPOが完全平等抽選の証券会社は?
では、すべての申し込み者に平等なチャンスがある、完全平等抽選方式をとっている証券会社は、どのような所があるのでしょうか。
【完全平等抽選方式100%採用のおもな証券会社】
岡三オンライン証券、カブドットコム証券、マネックス証券、GMOクリック証券、ライブスター証券
【一部完全平等抽選方式採用のおもな証券会社】
SMBC日興証券、立花証券、東海東京証券、大和証券、松井証券、むさし証券(2017年1月現在)
けっこう多いことがわかりますが、注意しなければいけないのは、証券会社によってネット配分と店頭配分の比率が違うことです。
例えば、マネックス証券はネット配分100%ですが、SMBC日興証券はネット配分10%、店頭配分90%です。インターネット取引のみを行なっている方であれば、マネックス証券の方が割当の多い分有利となります。
また、完全抽選方式の中でも、主幹事証券を務める証券会社であれば、割当株数自体が多いので副幹事証券の会社よりは当選確率は高くなるといって良いでしょう。
主幹事証券を務めることが多いのは、SMBC日興証券、大和証券等の大手証券会社です。
したがって、取引の主力をネット証券会社にしている方であっても、IPO申し込み目的に限れば大手にも口座を持っていることが必須といえます。
当選確率がアップする、複数口座の開設がおすすめ
NISA(少額投資非課税制度)の範囲(年間120万円)内での投資に限定している方の中には、口座は1つに絞った方が良いとお考えになる方もおられるでしょう。
通常の株取引の場合はそれで良いのですが、IPOに申し込みを希望されるのであれば話は別となります。
ほとんどの証券会社は口座開設の費用は無料なので、IPO申し込みを目的に複数の証券会社に口座を持つのも、当選確率アップのためには有効な方法です。
口座を開設したからといって、必ず株を買わなくてはいけないわけではないので、余計な投資資金はかかりません。むしろ、ログインすることによってホームページの全情報を閲覧できる分、お得です。
大手は手数料が高めなので、大手1社、ネット証券2~3社くらいの比率がバランス的には良いのではないでしょうか。
完全平等抽選方式は実績ではなく、あくまで運次第。当選するためには地道に申し込みを続けるしかありません。当選すれば過去のデータからも値上がりする確率が高いだけに、労力を掛ける価値はあるといえます。
では、大手とネット証券からそれぞれおすすめの証券会社をご紹介しましょう。
ネット証券なら配分率が有利なマネックス証券がおすすめ
まず、ネット証券から選ぶならマネックス証券がおすすめです。
その理由は、上記したようにネット配分100%だからです。店頭配分では取引実績の多い顧客に担当者が優先的に割り当てるため、「裁量配分」とも呼ばれています。
では他の証券会社とどの程度配分率が違うのでしょうか。
SMBC日興証券、東海東京証券(各10%)、大和証券15%、松井証券70%など。
松井証券の70%はまずまずとしても、その他の証券会社はほとんどが10%台のネット配分率でしかありません。店頭営業が中心であれば仕方がないともいえます。
これだけの差があると、資金が少ないネット派の投資家はマネックス証券をはじめとするネット証券会社での申し込みを中心にするしかありません。
マネックス証券をすすめるもう一つの理由は、下記のデータにも記載した通り、取り扱い銘柄数が多いところ。
カブドットコム証券もネット配分100%ですが、取り扱い銘柄数はマネックス証券の半分以下です。
つまり、マネックス証券は、ネット配分100%で、なおかつ取り扱い銘柄数も多い、バランスの良い証券会社といえるのです。
大手なら取り扱い銘柄数が多いSMBC日興証券
一方、大手に口座を持つならIPOに強いSMBC日興証券がおすすめです。
IPOの強さの目安となる取り扱い銘柄数が多いのが魅力。2016年度の取扱い銘柄数は72社で、同じ大手である大和証券の37社を大きく上回っています。取り扱い銘柄数が多ければ、それだけ申し込みのチャンスも多いことになり、当選の確率を高めることができます。
SMBC日興証券はその中でも主幹事証券を務めた数が多く、まさにIPO投資のための証券会社ともいえる圧倒的な実績を誇っています。
【2016年度おもな証券会社の取り扱い銘柄数】
SBI証券 76社
SMBC日興証券 72社
マネックス証券 46社
大和証券 37社
カブドットコム証券 20社
東海東京証券 15社
松井証券 11社
【2016年度おもな証券会社の主幹事証券銘柄数】
SMBC日興証券 24社
大和証券 12社
SBI証券 8社
東海東京証券 5社
カブドットコム証券、マネックス証券 0社
ネット証券でおすすめのマネックス証券は主幹事証券の実績はないので、やはりSMBC日興証券との併用で当選確率を高める作戦が最善と思われます。
以上を参考に、ぜひIPOに挑戦され、大きな成果を上げられることを期待しています。
米国のシリアへのミサイル攻撃や、北朝鮮との軍事的緊張の高まり、米ロ対立など外部要因による不安から、相場の膠着感が強まっています。このような局面こそIPO銘柄への投資で夢を追ってみるのも、株式投資の楽しみのひとつといえるでしょう。